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第24回 騒めき

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 翌日、俺はレベル3のまま工事現場へと向かっていた。

【クエスト簡略化】スキルのおかげでいつでもレベルを上げられるとはいえ、それでも24時間の間に一度だけだ。

 これから襲撃、事故、ダンジョンに巻き込まれる等、何があってもおかしくないし、日付が変わる直前までは報酬の全回復を温存したかったんだ。

「――お、あんちゃん、おはよう!」

「玄さん、おはようございます」

 昨晩の悪夢のことが気懸りで足取りは重かったが、何事もなく現場へ到着することができた。まあよく考えたら、ダンジョン内じゃあるまいしスレイヤーが好き勝手できるとは思えない。

 ダンジョンスレイヤーの地位を下げるようなことをすれば、ほかのスレイヤーたちから挙って命を狙われるなんてこともありえそうだしな。

 それに、羽田はあの異常な性格からして敵も多そうだ。実際、コンビニダンジョンで邪魔者が来る前に少し演説するとか言ってたし、やつと同じくらい高いレベルのスレイヤーに狙われている可能性だってある。

 それから俺たちはツルハシを手にせっせと働くことに。変な夢を見たせいで寝不足気味だったものの、体力にステータスを1ポイント振っただけで全然疲れないので驚いた。こんなに変わるもんなのか……。

 やがて休憩時間がやってきたが、ほとんど疲れもなかったのでそのまま一日中働けると思えるくらいだった。とはいえ、単調な作業に飽きてきた頃だったから助かる。

 ん……なんか向こうのほうで、玄さんを含むおっちゃんたちが集まって盛り上がってるみたいだな。なんの話をしてるんだろう?

「あー、あんちゃんが来ちゃったよ」

「なんなんですか、玄さん、まるで俺が来ちゃいけなかったみたいな反応ですが」

「それがよお、ここから最寄りの学校がダンジョン菌にやられちまったみたいでなあ」

「ええっ……!?」

 それって、俺が高校生の頃に通ってた学校じゃないか。

「あそこは確かあんちゃんの母校だろ? しかもよ、スレイヤーに憧れてるっていうから、こんな話を聞かせちまったら行きやしないかって心配になるんだよ」

「なるほど……でも大丈夫ですよ。コンビニがダンジョン化したときは巻き込まれただけですし……」

「そうか、それならいいんだけどなあ」

「…………」

 そう言いつつも、俺は内心じゃダンジョン化した学校へ行きたいと思ってしまっていた。超レアスキルの【クエスト簡略化】があるとはいえ、まだ一般人の身だっていうのに。

 母校の生徒たちは気の毒だが、スレイヤーでもない限り、そこへ行けば命を落とすだけだ。コンビニダンジョンのときは運がよかっただけだと思ったほうがいい。そのときですら裏切られて植物状態になったんだからな。

 それに、あそこは黒坂も通っていたはず。人気スレイヤーっていうくらいだし、母校がダンジョン化されるなら間違いなく突入する。やつに遭遇したら殺される可能性が高いし、あまりにも危険だ。

 俺は何度もそう自分に言い聞かせてるんだが、どうにも落ち着かない。気が付けばソワソワしてしまうんだ。

 仕事が終わったらほんの少しだけ様子を見にいこうかな? それだけなら何も起こらないし……。



 夕方になって仕事が終わり、俺は学校付近へとやってきた。周囲は既に規制線が張られていて、野次馬か、巻き込まれた生徒の家族か、人だかりもできていてなんとも物々しい、張り詰めた空気が漂っている。

 こうなったら一般人は絶対に入れてもらえないはずだし、ホッとしている自分がいるのも確かだった。

 まだ一般人の体ではダンジョン攻略なんて難しいって前回の件で思い知らされたからな。たとえあのスキルがあっても。

 いい加減に諦めろよ、俺……ん、視界の片隅にウィンドウが出てきた。これは……周辺のマップだ。なんでこんなものが出てきたのかと思ったら、すぐに答えがわかった。

 学校の位置に黄色いマーカーが表示されていたからだ。そうか、これはつまり、俺のパーティーメンバーが学校にいるってことだ。

 一瞬黒坂かと思ったが、やつは俺を裏切って攻撃するためにパーティーを抜けてるわけだし、野球帽の藤賀か爺さんの風間しか考えられない。

 どっちなのかわからないが、なんで中にいるんだ? ただ巻き込まれただけなのか、あるいはなんらかの手段でスレイヤーになって突入したのか……。

 どっちにせよ、学校ダンジョンの中に入りたいっていう気持ちがさらに強くなったのも確かだった。

 もし巻き込まれたなら、スレイヤーであれ一般人であれ俺のスキルが助けになるかもしれないからだ。ダンジョン内には虐殺者の羽田や裏切者の黒坂と違って友好的なスレイヤーたちもいるだろうし、彼らが力を貸してくれることだってありうる。

 でも、ああやって規制線が張られたら一般人じゃどうあがいたって入れないし、指を咥えて様子を見守るしかなさそうだが、俺はどうしても諦めきれなかった。何かいい方法はないものか……。
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