異世界から帰ってきたら、大好きだった幼馴染みのことがそんなに好きではなくなっていた

リコピン

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第四章 夏合宿で開いた門

5.

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5.

無事に南風なんぷう荘までたどり着き、改めて『気配探知』を使ったチサが、反応した。

「居た」

「…どっち?」

花守さんと部長の二人か、それとも『ナニか』か―

「…花守」

「良かったー」

チサの言葉に、知らず詰めていた息を吐く。

「…それと、少し離れた場所に部長とよくわからない気配。多分、交戦中」

「オーマイッガッ!」

部長、戦っているのか!得たいの知れないナニかと!

「こっち」

「うー!」

見たくない!見たくないけど、ここまで来てスルーも出来ない。さっきの、花守さんの余裕の無い顔も気になる。

駆け出したチサを追って、南風荘の裏手へとまわる。生い茂る草地に突っ込んでいく小さな背中を見失わないように山道を進んだ。

草を掻き分けながら暫く進むと、突然立ち止まったチサ。

「見つけた、あそこ」

指差す先には、背の高い草の影に身を隠すように屈む花守さんの姿。その視線の先には、チラチラと動くナニかが見える。

「隠れてるのかな?」 

「恐らく。花守と合流する」

進行方向を花守さんの方へと向けたチサ。その後を追えば、こちらの気配に気づいたのだろう、花守さんがすごい勢いで振り向いた。その顔に浮かんでいるのは驚愕。

明莉あかりちゃん!何で!?」

「チサが行くって言うから。あと、花守さん達のことが心配だったから」

「それは…」

―嬉しい?それとも、迷惑?

まあ、歓迎されてはいないようだけれど、来てしまったものは仕方ない。例え迷惑だとしても、諦めて貰おう。

「…部長は?」

チサの声に、改めて先程の花守さんの視線の先を確かめる。近づいた分、はっきりととらえられるようになった、部長らしき姿。だけど―

「何あれ?ふざけてるの?ポリシー?」

何故か、頭にふっさふさのケモ耳フードを被った部長が、白いモヤのようなものの前で踊っていた。

「あれは…」

「空間、時空の歪みのようなもの。それが暴れてる。部長はそれを押さえつけようとしてる」

チサの解説に、花守さんの目が大きく見開かれる。

「チサさん!?見えるの?」

「写真でコツを掴んだ。見える」

「…すごい」

信じられないと呟く花守さんは真剣そのもので、自分がおかした部長への非礼に気づく。

「あー、じゃあ、ふざけてるわけじゃないのか。ごめんなさい。あ、でもアレは?あの頭に被ってるやつ。アレはふざけて、」

「多分、マジックアイテムに近い道具。封印が解けてるけど、あれは部長がいつも腰に着けてるしっぽ」

「え!?アレ、部長のしっぽ!え!?でもあれ、しっぽじゃなくて耳になってるよ!?」

何だその不思議変化は!?

「…あれは悠司の家に伝わる『法具』と言われる物で、悠司はあれを使って『門』を閉じようとしてるんだ」

「『門』??」

「…そう、こちらの世界と、僕らが『幽界ゆうかい』と呼んでいる世界を繋ぐ『門』」

「!?」

こちらの世界と、別の世界?それではまるで―

思わずチサを振り向いた。冷静なままの顔。恐ろしいくらいに真剣な眼差しが、花守さんを見据えている。

「…門が開くとどうなる?」

「『幽鬼ゆうき』という幽界の生物が、界を渡ってこちらの世界に顕現してしまう」

「危ないやつ?」

雰囲気的に『良くないモノ』ってのはわかるけど、その『幽鬼』にどれほどの危険があるのか。

「人を喰らうモノ、人の生を吸いとるモノ。様々だけれど、人に仇なす存在であることは間違いない」

「…部長、大丈夫なの?」

「門自体が大きいのと、見つけた時点で既にかなり開いてしまっていたから、悠司一人では厳しいかもしれない」

「花守は、なぜ加勢しない?」

チサの言葉に、花守さんの肩がはっきりと揺れた。

「…残念ながら、僕には門に干渉する力も、幽鬼を倒す力も無いんだ」

「応援は居ないの?部長と花守さんだけで戦ってるわけじゃないんでしょ?」

「一応、呼んではいるんだけどね。来てくれるかは…」

―何だよ、そのつらそうな顔は

いつもと全然違う花守さんの苦しそうな顔。いつも、あんなに穏やかに笑う人が。味方にそんな顔させるやつらは仲間じゃない、と私は思うよ?

「…チサ、私、加勢してくる」




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