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第八章(終章) それでも、私は
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その後、八割本気で『大丈夫』、二割根性で乗りきって、何とか掃討戦にも加わった。明らかに稼働の悪くなっていただろう私に、部長達が何も言わずにいてくれたのは救いだった。
結局、百に近い数の幽鬼を倒しきったところで、チサと秀、あとはまだ力の残っていた一部の方々の尽力により、あの巨大な門は完全に封じられ、跡形もなく消え去った。さすがに後始末はお任せしたけれど、家にたどり着いた時には、精神的に完全に力尽きてしまっていた。
それでも一晩ぐっすり眠れば、翌日にはまた何とか動けるようになるもので。一週間休んでしまっているため、これ以上休むわけにもいかないからとこれまた根性で大学に行った。
全ての講義を終えた後、まだ少しのしんどさを感じながらも、後は帰るだけ。さっさと帰ってベッドでゴロゴロしたいとぼやきながら、チサと校門へ向かっていたのだが、チサが突然立ち止まる。視線の先には、何やら小さな人だかり。人の間からチラチラ見える姿にはとても見覚えがある。
「来叶と美歌と、あともう一人?誰だろ?」
何やら揉めているらしい様子に、激しいデジャブを感じた。
「明莉!」
「…」
しかも、今度は速攻、来叶に見つかってしまうというおまけつき。
「明莉!お前と話がしたいんだよ!俺の話を聞いてくれ!」
美歌達を置いてこちらに近寄ってくる来叶。直ぐに後を追ってきた女の子、美歌ではないもう一人に思いっきり睨まれた。
「誰?この女?」
不愉快さを隠す気は全く無さそうな彼女には見覚えがあった。以前、カフェテリアの前で会った、「来叶に関わるな」と言っていたキラキラ女子―
「何よ。来叶、あんた、こんな女にまで手ぇ出してたの?」
「…」
どうやら、こちらのことを全く覚えていないらしいキラキラ女子に、もう一回、上から下までジロジロ見られるはめになった。
「信じらんない、本当、どんだけの女に手ぇ出してんのよ、あんた。最っ低」
「違う!明莉はそんなんじゃ!」
「違わないでしょ!じゃ、何?あんたにとっては、そっちの女が本命で、私らはただの遊びだったって言うわけ?」
再び睨まれるが、痴話喧嘩に巻き込まれるような立ち位置になった覚えはない。それよりも、気になるのは、
「あの、美歌は何で此処に?」
「…」
虚ろな視線がこちらを向いたが、返事はない。
「その女は私が呼んだの。SNSでまだ来叶に繋がってる女の中から見つけただけだけど、一応、来叶の被害者っぽかったから」
「あー、なるほど」
黙ったままの美歌の代わりにキラキラ女子が答えてくれたけど。
え?でもそれで態々此処まで出てきたの?知らない人の呼び出しに応えて?
「…美歌?」
「…」
さっきから一言も口を聞いていない美歌に声をかけるが、やはり返事はない。パッと見は昔の彼女のまま、服にもメイクにも違和感は感じない。少し痩せた気もするけれど、それでも美少女のままの美歌に、何だか不安を煽られる。
「とにかく、あんたが本命だか何だか知らないけど、一言言っておくから。この男は、この美歌って女と付き合ってる間に、私ともう一人、テニサーの女にも手、出してんの」
「えー」
まあ、うん、自分に関係ないこととはいえ、さすがにドン引いた。
「知らなかったでしょ?だから、教えてあげてるわけ。こいつ、そんなことしてんのが学部でもサークルでもバレて、今、誰にも相手されてないから」
もう一度、上から下まで眺められた。
「だから、あんたみたいなのに手ぇ出してるだけ。勘違いしないほうがいいって忠告してあげてんの」
「…えーっと、お姉さんは、来叶のことが未だ好きなの?だから、牽制?」
「はーっ!?んなわけないでしょ!?あんた、人の話聞いてた!?」
「聞いたよ。けど、何で態々そんなこと言いに来るのかなーって思って」
正直、面倒なことしないで欲しいし。
「っ!?それは!」
「まあいいや。話は聞いたよ。でも、私がどうするかはもう結論出してる。それは私と来叶の問題で、あなたに何かを『忠告』してもらう必要はない」
前にも、同じことを言ったんだけどな。全く覚えられていなかったから、無かったことになっているのか。
「あんた!?」
分かりやすく怒りに顔を紅潮させたキラキラ女子が、何かを言いかけて、だけど、次の瞬間、驚いたように周囲を見回した。
うん、どうやら、ようやく気づいてくれたらしい―
さっきから周囲には少なくない数の見物人がいて、徐々に人数が増えてきている。何なら、カメラ回してる人までいる始末。
「っ!」
「あ、行っちゃった」
結局、最後は何も言わずに背を向けてしまった彼女。逃げ出すように走っていく彼女にカメラを向けてる人もいて、悪趣味だなぁと思ってしまった。
「…明莉」
「来叶、何も言わないで。聞きたくないし、私はもう、来叶に伝えたよね?それが全部だから」
「っ!?」
「美歌、一人で来たの?なんか、えと、大丈夫?元気無さそうだけど、駅まで一緒に」
「…」
「あ、ちょ、本当に大丈夫ー?気を付けて帰ってよー」
話の途中で背を向けてしまった美歌。最後まで、一言も発することの無かった彼女の様子が気にかかることは、確かなんだけど。
「後で、メールでもしてみるかー」
「…」
隣でボソリと呟いたチサの声が、「お人好し」と言った気がした。
ギャラリーを避けながら、チサと二人で歩き出す。また、何か噂になってしまうのかもしれない。そのことを考えると、逆に、朝から感じていた精神的疲労感が薄まった気もしてきたので、結果オーライということにしておこう。
「…明莉!」
「…」
「俺は!お前を諦めないから!俺には、お前しか!」
「…」
ちょっとだけ、振り返る。
浮気がバレて周囲に疎まれ、彼女とは別れてしまった。元が人見知りだから、新しい友達を作るのにも苦労しているのかも。経緯はどうあれ、来叶が、今、本気で私にすがっているのは間違いないんだろう。例え、それが一時のことだとしても。
なのに―
ずっと大好きだった来叶、今の私は凪いだ心のまま、そんな彼を見ることが出来てしまう。
その後、八割本気で『大丈夫』、二割根性で乗りきって、何とか掃討戦にも加わった。明らかに稼働の悪くなっていただろう私に、部長達が何も言わずにいてくれたのは救いだった。
結局、百に近い数の幽鬼を倒しきったところで、チサと秀、あとはまだ力の残っていた一部の方々の尽力により、あの巨大な門は完全に封じられ、跡形もなく消え去った。さすがに後始末はお任せしたけれど、家にたどり着いた時には、精神的に完全に力尽きてしまっていた。
それでも一晩ぐっすり眠れば、翌日にはまた何とか動けるようになるもので。一週間休んでしまっているため、これ以上休むわけにもいかないからとこれまた根性で大学に行った。
全ての講義を終えた後、まだ少しのしんどさを感じながらも、後は帰るだけ。さっさと帰ってベッドでゴロゴロしたいとぼやきながら、チサと校門へ向かっていたのだが、チサが突然立ち止まる。視線の先には、何やら小さな人だかり。人の間からチラチラ見える姿にはとても見覚えがある。
「来叶と美歌と、あともう一人?誰だろ?」
何やら揉めているらしい様子に、激しいデジャブを感じた。
「明莉!」
「…」
しかも、今度は速攻、来叶に見つかってしまうというおまけつき。
「明莉!お前と話がしたいんだよ!俺の話を聞いてくれ!」
美歌達を置いてこちらに近寄ってくる来叶。直ぐに後を追ってきた女の子、美歌ではないもう一人に思いっきり睨まれた。
「誰?この女?」
不愉快さを隠す気は全く無さそうな彼女には見覚えがあった。以前、カフェテリアの前で会った、「来叶に関わるな」と言っていたキラキラ女子―
「何よ。来叶、あんた、こんな女にまで手ぇ出してたの?」
「…」
どうやら、こちらのことを全く覚えていないらしいキラキラ女子に、もう一回、上から下までジロジロ見られるはめになった。
「信じらんない、本当、どんだけの女に手ぇ出してんのよ、あんた。最っ低」
「違う!明莉はそんなんじゃ!」
「違わないでしょ!じゃ、何?あんたにとっては、そっちの女が本命で、私らはただの遊びだったって言うわけ?」
再び睨まれるが、痴話喧嘩に巻き込まれるような立ち位置になった覚えはない。それよりも、気になるのは、
「あの、美歌は何で此処に?」
「…」
虚ろな視線がこちらを向いたが、返事はない。
「その女は私が呼んだの。SNSでまだ来叶に繋がってる女の中から見つけただけだけど、一応、来叶の被害者っぽかったから」
「あー、なるほど」
黙ったままの美歌の代わりにキラキラ女子が答えてくれたけど。
え?でもそれで態々此処まで出てきたの?知らない人の呼び出しに応えて?
「…美歌?」
「…」
さっきから一言も口を聞いていない美歌に声をかけるが、やはり返事はない。パッと見は昔の彼女のまま、服にもメイクにも違和感は感じない。少し痩せた気もするけれど、それでも美少女のままの美歌に、何だか不安を煽られる。
「とにかく、あんたが本命だか何だか知らないけど、一言言っておくから。この男は、この美歌って女と付き合ってる間に、私ともう一人、テニサーの女にも手、出してんの」
「えー」
まあ、うん、自分に関係ないこととはいえ、さすがにドン引いた。
「知らなかったでしょ?だから、教えてあげてるわけ。こいつ、そんなことしてんのが学部でもサークルでもバレて、今、誰にも相手されてないから」
もう一度、上から下まで眺められた。
「だから、あんたみたいなのに手ぇ出してるだけ。勘違いしないほうがいいって忠告してあげてんの」
「…えーっと、お姉さんは、来叶のことが未だ好きなの?だから、牽制?」
「はーっ!?んなわけないでしょ!?あんた、人の話聞いてた!?」
「聞いたよ。けど、何で態々そんなこと言いに来るのかなーって思って」
正直、面倒なことしないで欲しいし。
「っ!?それは!」
「まあいいや。話は聞いたよ。でも、私がどうするかはもう結論出してる。それは私と来叶の問題で、あなたに何かを『忠告』してもらう必要はない」
前にも、同じことを言ったんだけどな。全く覚えられていなかったから、無かったことになっているのか。
「あんた!?」
分かりやすく怒りに顔を紅潮させたキラキラ女子が、何かを言いかけて、だけど、次の瞬間、驚いたように周囲を見回した。
うん、どうやら、ようやく気づいてくれたらしい―
さっきから周囲には少なくない数の見物人がいて、徐々に人数が増えてきている。何なら、カメラ回してる人までいる始末。
「っ!」
「あ、行っちゃった」
結局、最後は何も言わずに背を向けてしまった彼女。逃げ出すように走っていく彼女にカメラを向けてる人もいて、悪趣味だなぁと思ってしまった。
「…明莉」
「来叶、何も言わないで。聞きたくないし、私はもう、来叶に伝えたよね?それが全部だから」
「っ!?」
「美歌、一人で来たの?なんか、えと、大丈夫?元気無さそうだけど、駅まで一緒に」
「…」
「あ、ちょ、本当に大丈夫ー?気を付けて帰ってよー」
話の途中で背を向けてしまった美歌。最後まで、一言も発することの無かった彼女の様子が気にかかることは、確かなんだけど。
「後で、メールでもしてみるかー」
「…」
隣でボソリと呟いたチサの声が、「お人好し」と言った気がした。
ギャラリーを避けながら、チサと二人で歩き出す。また、何か噂になってしまうのかもしれない。そのことを考えると、逆に、朝から感じていた精神的疲労感が薄まった気もしてきたので、結果オーライということにしておこう。
「…明莉!」
「…」
「俺は!お前を諦めないから!俺には、お前しか!」
「…」
ちょっとだけ、振り返る。
浮気がバレて周囲に疎まれ、彼女とは別れてしまった。元が人見知りだから、新しい友達を作るのにも苦労しているのかも。経緯はどうあれ、来叶が、今、本気で私にすがっているのは間違いないんだろう。例え、それが一時のことだとしても。
なのに―
ずっと大好きだった来叶、今の私は凪いだ心のまま、そんな彼を見ることが出来てしまう。
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