園芸店店長、ゲーム世界で生産にハマる!

緑牙

文字の大きさ
61 / 143
2章 村での生活

14話 混乱するリョウ

しおりを挟む
 目が覚めた俺は、思いっきり混乱していた。

 何故なら──


「ここは……森? あれ……俺、樹の上に居たはず……!?」


 そう……ついさっきまでカイエンナッツ樹の上から降りれなくて困っていたはずだが、気付いたらカイエンナッツの樹を背にして地面に座っていたからだ。

 一瞬樹の上にいたのが夢かと思ったが、ゲームの中で夢を見るというのは聞いたことがない。

 状況が把握できず、きょろきょろと辺りを見回していると、少し離れた所にいるドリアドネさんとブレンが視界に入った

 ブレンはドリアドネさんの肩に乗ってお互い向き合っているので、恐らく念話でもしているのだろう。

 と、俺が起きたことにドリアドネさんが気付き、ブレンも気付いたのかこちらに飛んできた。


《リョウさん、気がついたんですね!》

「ん? 気がついた? 俺は気を失ってたのか?」

《そうですよ! と言っても、ほんの数分ですけど》


 数分だけ気を失ってた? なぜだ?

 それに、俺が気を失ってたのにブレンがあまり心配して無さそうなのが珍しい。

 いつもは口うるさいくらいなのに……?

 色々と違和感があって俺が考え込んでいると、ドリアドネさんがこちらに歩いて来て──

 その姿を見て、唐突に頭に痛みが走る。


「……うぐっ!?」

《リョウさん!? 大丈夫ですか!?》


 ブレンの心配する声が聞こえたが、俺はそれどころではなかった。

 頭痛と共に色々と思い出したからだ。


 あまりに大きくなってしまったカイエンナッツの樹から降りる方法がなくて困っていたところに、ブレンとドリアドネさんが来てくれて。

 ドリアドネさんが抱えて下ろしてくれると言ってくれたが、それは恥ずかしいと断って。

 ふと気付いたらドリアドネさんの根が俺のほうに伸びてきて、この根はなんなのか聞いて。

 そうだ……確かあの根が触れた瞬間からの記憶がない……!?


 近付いてきたドリアドネさんからほとんど無意識に後ずさると、ドリアドネさんはとても悲しそうな顔をした。


「ドリアドネさん……さっき樹の上で俺に何をしました?」

《わ、私は……》
《待ってリョウさん! ドリアドネさんにお願いしたのは私なんです!》

「……え……?」


 いったいどういうことだ……?


《ドリアドネさんから抱えて降りる提案をした時、リョウさんが嫌がってましたよね?》

「あ~……うん、確かに」

《あの時、既にリョウさんの疲労が限界だと分かっていたので、ドリアドネさんと相談したんです──》


────


「それはちょっと……ほら、いい年の大人が抱えられるなんて恥ずかしいと言うか……」


 その言葉を聞いて、私は正直呆れました。

 ずっと樹にしがみついていて体力の限界が近いのに、恥ずかしいとか言ってる場合ですか!? ……という感じです。

 だから、すぐにドリアドネさんに念話で無理やりでも抱えて下ろしちゃってください! ってお願いしたんです。

 でも、ドリアドネさんは無理やり抱えて嫌われるのが怖いと言うので、なにかいい方法がないか相談しました。

 それで思い付いたのは、リョウさんが気付かないように抱えて下ろすことでした。

 ドリアドネさんの根には対象の相手の意識を混濁させる力あると聞いたので、こっそりとそれを使ってもらおうとしたんです。

 ですが直前でリョウさんが根に気付いてしまって……

 慌てたドリアドネさんが少し力加減を間違えて、完全に意識を奪ってしまったんですよね。

 すぐにドリアドネさんが根でリョウさんを捕まえてくれたけど、危うく落ちてしまうところでした。

 そのまま下までリョウさんを下ろして、樹に寄りかかるようにさせたのが数分前だったのです──


────


 ブレンの説明を聞いた俺は、思わず頭を抱えた。

  まさかブレンがやらせたことだったとは……道理で俺が気を失っていても心配してないわけだ。

 ……と言うか、俺ゲームの中で意識失いすぎだろ……

 これって、現実に悪影響出たりしないだろうな……?


《あの……本当に、ごめんなさい……ですの……》

「ん?」


 ふと気付くと、少し離れたところからドリアドネさんが謝ってきた。

 その表情は、今にも消えてしまいたいと思っているように見えるほど暗かった。


「いや、ドリアドネさんが悪い訳じゃないよ。ブレンが頼んだことだし、俺が変に恥ずかしがっていたのがいけないんだからさ」
《ですが、リョウさんの意識を無理矢理に──》


 俺は思い詰めた顔をしているドリアドネさんに早足で近付くと、ドリアドネさんの両肩に手を置いた。


「ドリアドネさん」
《はっ、はい!?》


 両肩に手を置かれた事で驚いたドリアドネさんから、一歩離れて俺は口を開いた。


「下ろしてくれて、ありがとうございます。自力で降りることは不可能でしたから、本当に助かりました!」


 お礼の気持ちを伝えて、きっちり45度頭を下げる。

 こうでもしないと、俺の気持ちが伝わらないと思ったからだ。


《……頭を上げてください、リョウさん》


 その甲斐あってか、ドリアドネさんから返ってきた声は非常に落ちついたものだった。

 俺が頭を上げると、ドリアドネさんは仄かに微笑んでいた。


《こちらこそ、カイエンナッツをここまで立派にしてくださって、感謝しかございませんわ。本当にありがとうございます、リョウさん》


 ドリアドネさんはそう言うと、とても綺麗なお辞儀をした。

 そのお辞儀を受けて俺が思ったのは──


(さっきの俺と同じく45度のお辞儀なのに、ここまで差があるものなんだな……)


 などど見当違いな事だった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...