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2章 村での生活
15話 ドリアドネさんの知るカイエンナッツ
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《それにしても……この子を見ていると、以前住んでいた里の守護樹だったカイエンナッツを思い出しますわ……》
「守護樹だったの!?」
ドリアドネさんは俺の言葉にうなずくと、守護樹のカイエンナッツについて話をしてくれた。
────
以前私達の住んでいた所には、中央に見上げても天辺が見えないほど大きなカイエンナッツがありましたわ。
そのカイエンナッツは私達に恵みを下さいましたの……それがカイエンナッツの木の実。
本来精霊である私達に実体はございませんわ。
ですがカイエンナッツが自ら落とした実から、その土地に強い力がもたらされ──
気が付けば私達は、身近にあった樹を依り代に体を持つことができたのですわ。
それまでは樹に宿る精霊として見守ることしかできなかった動物や植物を、直接守ることができる──
とても嬉しいことでしたわ。
動ける体を得た私達は、カイエンナッツに感謝の気持ちを込めて周辺の環境を整えましたの。
私達は生き物達の世話をしたり、付近のモンスターを追い払ったり……
カイエンナッツはお礼として、私達の命の源とも言える木の実を落としてくれる。
お互いに助け合って暮らしていたのですわ。
そしてカイエンナッツの周囲が里と言えるようになった頃、私達の感謝の気持ち故か、カイエンナッツはさらに巨大な樹となり、守護樹としての力を宿したのですわ。
私達は喜び、より一層お世話に力を入れてまいりましたが……平穏な日々は、長く続かなかったんですの。
カイエンナッツが守護樹になってまもなく、巨大な蜂のモンスターに襲撃されたのですわ。
守護樹はそのお力で、敵対するものの力を削ぎ、自身の姿も見えなくなっている……はずでしたのに、その蜂に限っては効果があまりなかったのですわ……
度重なる蜂の進攻で、守護樹を守ろうとした私達の数も減り……守護樹もあちこちに穴を空けられたりと段々と弱って……
最後に私が目にしたのは──
枯れ果てて……蜂の、巣窟に……されてしまった、守護樹のお姿でしたわ……
────
「まさか、そんなことになってしまったとは……」
思い出すのも辛いのか、涙を流しながら語るドリアドネさん。
以前話を聞いたときは、病気や老齢などで弱った所をモンスターに狙われたんだと思っていたけど……
その蜂は、カイエンナッツが元気な状態だからこそ狙ってきたような感じだな。
どんな蜂かは分からないが、その巣から新たな女王バチが生まれているとしたら……
……サイプレス村や他の村も襲われる可能性があるかもしれない……な。
《守護樹は枯れる前日……蜂の襲撃が落ち着いていた夜に私達に念話をしてきたのです……》
おっと、今はしっかり話を聞いておかないとな。
《『これより全ての実を落とす。各々で分配し、ここを立ち去って欲しい』──そんなことをおっしゃいました。でも、私達の親とも言える守護樹を見捨てるなんて考えられませんでしたわ……》
それはそうだろうな……だが、カイエンナッツとしても我が子のように守っていた存在が、モンスターにやられてしまうのを見るのも辛かったんだろう……
《『どうか、聞き入れて欲しい。皆、命を繋ぎ、この魔物の存在を広く伝えて欲しい。頼む、我が子達よ……』──その言葉を最後に念話が途絶え、大量の実が私達の前にそっと落ちてきました……》
……朽ち果てる寸前に、実に全ての力を込めてドリアドネさん達に託したのか。
念話が途絶えたのはこれ以上話すのが辛かったというのもあるだろうが、木の実にほとんどの力を込めたからでもあったのかもな。
《私達は木の実を分けあい、胸が張り裂けそうな思いのまま里を離れました……幸い、魔物は同じ方向からしか攻めてきていなかったので避難できましたが……》
同じ方向からしか攻めて来なかった……?
これは、先に被害を受けた樹があったのかもしれないな……
《里を離れた私達は散り散りになってさ迷い、環境の良さそうな場所を見つけては種を蒔いてみたのですが……一向に芽が出る気配はなく、その種子が命を徐々に失っていくのを見ていることしか、できませんでしたの……》
カイエンナッツの種子は採取から時間が経ってなければ、そんなに発芽させるのは難しくはなかったはずだが……
枯れる直前の樹からもらった種だったからとか?
もしくは、水気が足りてなかったとか?
……まさか、守護樹になったから発芽に特殊な条件が必要だった……とか?
聞いてみたいけど……今は我慢だ……!
《里を離れて半月ほど……身体に限界が近づいていた私は、この土地にたどり着いて根を差し込んだ時に力が湧いてくるような感覚を感じましたわ!》
例の光の魔力ってやつの影響かな?
生命に作用する効果のある魔力なんだろうか……?
《そこで私は希望を込めて最後の種を蒔きましたわ。すると、尽きかけていた種の命が強くなったように感じましたの!》
種子を土に埋めただけで、すぐにそう感じとれるとは……やはり光の魔力には、生命に対して増幅作用みたいなものがありそうだな。
《その後すぐに発芽したので、周囲を整地して光が当たりやすくしたのですが、なぜか育ちが非常に遅く……気が付けば花が咲き乱れる花畑になっていたのですわ》
何故に!? カイエンナッツは発芽してからかなり成長が早いはずだし、環境が悪かったとしたら花がそんなに咲くはずもない──
いや、もしかしたらこれはカイエンナッツ自身が望んでやったのかもしれない……
「守護樹だったの!?」
ドリアドネさんは俺の言葉にうなずくと、守護樹のカイエンナッツについて話をしてくれた。
────
以前私達の住んでいた所には、中央に見上げても天辺が見えないほど大きなカイエンナッツがありましたわ。
そのカイエンナッツは私達に恵みを下さいましたの……それがカイエンナッツの木の実。
本来精霊である私達に実体はございませんわ。
ですがカイエンナッツが自ら落とした実から、その土地に強い力がもたらされ──
気が付けば私達は、身近にあった樹を依り代に体を持つことができたのですわ。
それまでは樹に宿る精霊として見守ることしかできなかった動物や植物を、直接守ることができる──
とても嬉しいことでしたわ。
動ける体を得た私達は、カイエンナッツに感謝の気持ちを込めて周辺の環境を整えましたの。
私達は生き物達の世話をしたり、付近のモンスターを追い払ったり……
カイエンナッツはお礼として、私達の命の源とも言える木の実を落としてくれる。
お互いに助け合って暮らしていたのですわ。
そしてカイエンナッツの周囲が里と言えるようになった頃、私達の感謝の気持ち故か、カイエンナッツはさらに巨大な樹となり、守護樹としての力を宿したのですわ。
私達は喜び、より一層お世話に力を入れてまいりましたが……平穏な日々は、長く続かなかったんですの。
カイエンナッツが守護樹になってまもなく、巨大な蜂のモンスターに襲撃されたのですわ。
守護樹はそのお力で、敵対するものの力を削ぎ、自身の姿も見えなくなっている……はずでしたのに、その蜂に限っては効果があまりなかったのですわ……
度重なる蜂の進攻で、守護樹を守ろうとした私達の数も減り……守護樹もあちこちに穴を空けられたりと段々と弱って……
最後に私が目にしたのは──
枯れ果てて……蜂の、巣窟に……されてしまった、守護樹のお姿でしたわ……
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「まさか、そんなことになってしまったとは……」
思い出すのも辛いのか、涙を流しながら語るドリアドネさん。
以前話を聞いたときは、病気や老齢などで弱った所をモンスターに狙われたんだと思っていたけど……
その蜂は、カイエンナッツが元気な状態だからこそ狙ってきたような感じだな。
どんな蜂かは分からないが、その巣から新たな女王バチが生まれているとしたら……
……サイプレス村や他の村も襲われる可能性があるかもしれない……な。
《守護樹は枯れる前日……蜂の襲撃が落ち着いていた夜に私達に念話をしてきたのです……》
おっと、今はしっかり話を聞いておかないとな。
《『これより全ての実を落とす。各々で分配し、ここを立ち去って欲しい』──そんなことをおっしゃいました。でも、私達の親とも言える守護樹を見捨てるなんて考えられませんでしたわ……》
それはそうだろうな……だが、カイエンナッツとしても我が子のように守っていた存在が、モンスターにやられてしまうのを見るのも辛かったんだろう……
《『どうか、聞き入れて欲しい。皆、命を繋ぎ、この魔物の存在を広く伝えて欲しい。頼む、我が子達よ……』──その言葉を最後に念話が途絶え、大量の実が私達の前にそっと落ちてきました……》
……朽ち果てる寸前に、実に全ての力を込めてドリアドネさん達に託したのか。
念話が途絶えたのはこれ以上話すのが辛かったというのもあるだろうが、木の実にほとんどの力を込めたからでもあったのかもな。
《私達は木の実を分けあい、胸が張り裂けそうな思いのまま里を離れました……幸い、魔物は同じ方向からしか攻めてきていなかったので避難できましたが……》
同じ方向からしか攻めて来なかった……?
これは、先に被害を受けた樹があったのかもしれないな……
《里を離れた私達は散り散りになってさ迷い、環境の良さそうな場所を見つけては種を蒔いてみたのですが……一向に芽が出る気配はなく、その種子が命を徐々に失っていくのを見ていることしか、できませんでしたの……》
カイエンナッツの種子は採取から時間が経ってなければ、そんなに発芽させるのは難しくはなかったはずだが……
枯れる直前の樹からもらった種だったからとか?
もしくは、水気が足りてなかったとか?
……まさか、守護樹になったから発芽に特殊な条件が必要だった……とか?
聞いてみたいけど……今は我慢だ……!
《里を離れて半月ほど……身体に限界が近づいていた私は、この土地にたどり着いて根を差し込んだ時に力が湧いてくるような感覚を感じましたわ!》
例の光の魔力ってやつの影響かな?
生命に作用する効果のある魔力なんだろうか……?
《そこで私は希望を込めて最後の種を蒔きましたわ。すると、尽きかけていた種の命が強くなったように感じましたの!》
種子を土に埋めただけで、すぐにそう感じとれるとは……やはり光の魔力には、生命に対して増幅作用みたいなものがありそうだな。
《その後すぐに発芽したので、周囲を整地して光が当たりやすくしたのですが、なぜか育ちが非常に遅く……気が付けば花が咲き乱れる花畑になっていたのですわ》
何故に!? カイエンナッツは発芽してからかなり成長が早いはずだし、環境が悪かったとしたら花がそんなに咲くはずもない──
いや、もしかしたらこれはカイエンナッツ自身が望んでやったのかもしれない……
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