Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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転生〜統治(仮題)

軍事会議

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全員が着席し、場が静まるのを待ってから説明を開始する。とは言っても、まずは捕虜や奴隷の所在を確認する必要がある。それを怠れば、みんな纏めてあの世行きにする自身があるのだ。

「侵攻ルートの前に、捕虜や奴隷について意見を聞いておきたいですね。もし何も無ければ、オレとカレンは真っ直ぐ進んで王都を滅ぼします。」
「斥候の情報では、捕虜は全て殺されている。そしてほとんどの奴隷は最前線に配備されているらしい。残りは・・・性奴隷だ。」

何処に行っても人は、欲望を満たす事しか考えない・・・か。しかし最前線にほとんどの奴隷を配備しているのなら、解放すれば向こうの戦線は崩壊するかもしれないな。

「ならば、奴隷を解放してしまえば簡単に切り崩せると?」
「いや、事はそう単純ではない。そもそも奴隷を解放するには主人を殺すか、解放させなければならん。仮に出来たとしても、戦線が崩壊する事は無いだろう。」

オットル女王の言ってる事がイマイチ理解出来ない。嫌々参加させられているなら、自由になれば投降すると思うのだが。

「どういう意味です?」
「相対する2国で厄介なのは、性奴隷の子供達なのだよ。彼等は物心つくと、自国の為に戦うよう徹底的に教育されるのだ。奴隷から解放されようと、染み付いた教育は生き続けるだろう。故に我が国は苦戦を強いられている。戦闘特化の亜人程、恐ろしい物は無い。」

奴隷であるのをいい事に、幼い頃から戦闘訓練に明け暮れる亜人・・・確かに脅威だろうな。普通なら。

しかし、捕虜は全て奴隷落ちか。解放する意味が無いとまでは言わないが、効果は薄いか。だからと言って、罪の無い者達まで殺す必要はない。

「それなら今日の内に奴隷から解放するとして、その後の行動は任せるとしましょうか。それより性奴隷の子供達というのは、戦えるような年齢なんですか?」
「両国の暗躍は数十年前から続いている。数を増して我が国を脅かす程の規模となったのは近年の事だ。2国に挟まれる形だったのも災いした。一方の対処をしている間に、もう一方が国民を攫うのだから。」

何とも頭の痛い話だ。これが1対1ならば、ここまで追い込まれる事にはならなかったのだろう。仮定の話をしても意味は無いが。それよりも、ネザーレアとフロストルの目的は何なのだろうか?

「そもそも、何故2国はグリーディアに攻め込むような真似をしているんです?」
「・・・その質問に答える前に、奴隷に関して頼みたい事がある。」
「何でしょう?」
「無理に奴隷達を助けようとしなくて構わない。むしろ・・・殺してやって欲しい。」
「「っ!?」」

オットル女王の言葉に、オレとカレンが言葉を失う。何処をどうしたらそういう結論になるのか、皆目検討がつかない。それ故、オレとカレンの表情も険しくなる。

「まぁ、そんな顔をしないで欲しい。実はな・・・我々は何度も奴隷となった者達を救出してきたのだ。だが誰1人例外無く・・・奴隷の首輪を外す前に、自ら命を断ってしまっている。それ程深く心に傷を負ってしまっているのだ。ならばせめて、これ以上苦しまぬように、お2人の手で楽にしてやって欲しい。この通りだ。」
「そういう事であれば、私が責任を持って解放してあげましょう。」
「カレン・・・わかった。ならオレも同様に請け負うとしよう。」

オットル女王が頭を下げ、カレンが了承したのでオレも同意する。オレだけが反対する意味も無いし、誰かの心を救ってやれる程、人生を修めてもいない。

ところで、グリーディアでは奴隷の首輪を取り外す術を編み出したのだろうか?先程から話を聞いている限り、外した事があるような口ぶりである。まぁ後で聞いてみよう。

「我々が不甲斐ないばかりにすまない。で、2国の狙いだったか?」
「えぇ。奴隷欲しさで攻め込んでいるとは思えないのですが・・・。」

様々な国から誘拐しているのだから、奴隷は確保出来ているはずである。奴隷というよりも、戦力を欲しているように思えてならない。

「皇帝陛下の様子だと、答えに思い至っているようだな。・・・2国の狙いはグリーディアの土地だよ。」
「土地ですか?それ程までに2国の領土は手狭になっていると?」
「いや、領土の問題ではない。2国は単純に住み難いのだ。」
「住み難い?」

大量の奴隷によって生活環境が一変した、程度の考えにしか至らなかった。オレの想像力の無さよ・・・。料理なら幾らでも思い浮かぶと言うのに。しかし、素直に聞いたお陰で話が進むのは早い。

「ネザーレアは灼熱の地、フロストルは極寒の地なのだ。詳しい理由はわかっていないがな。」
「おそらくは精霊の仕業でしょうね。」
「カレンは何か知ってるの?」

流石はカレン、伊達に長生きしてない。・・・本人には言えないが。と思ったらバレてたらしい。

「・・・ルークが失礼な事を考えていたのは置いておきましょう。ネザーレアとフロストルは、長きに渡りエルフ族を虐げ続けた罰を受けているのです。」
「罰って・・・精霊魔法か!」
「そうです。精霊と共に在るエルフ族の恨みは相当な物でしょう。エルフ族に代わって精霊達が、少しずつ自然環境を歪めていると思われます。」

流石は魔法の存在する世界。自然でさえ変化させてしまうのだから、精霊という存在は恐ろしい。しかし、それならばエルフによって元に戻す事も可能ではないだろうか?

「だったら、2国を滅ぼしてから精霊に頼めば、住み易い土地に変えられるって事?」
「・・・そう簡単にはいかないでしょうね。数え切れない程の者達が亡くなっているでしょうから、それだけでも相当です。加えて、数十年或いは数百年単位の変化。元に戻す為には、数百年から数千年の時間が必要だと思いますよ?」
「「「「「「「「「「そんなにですか!?」」」」」」」」」」

回りにいたグリーディアの者達が驚きに声を上げた。視界には入っていたが、その存在を忘れていたよ。だが、みんなの意見に賛成である。人海戦術で、一気に元に戻せそうなイメージなのだが・・・。

「強い恨みを抱いたまま亡くなっているのです。その想いは非常に強いはず。恨むよりも許す事の方が難しいのは、誰しも容易に想像出来るのではありませんか?」
「「「「「「「「「「・・・・・。」」」」」」」」」」

全員が沈黙してしまったが、それはつまり肯定を意味する。カレンの例えはわかり易い物だった。オレには無理だが、カレンであれば簡単に解決してしまえそうな気がする。しかし、それを告げないという事は、不干渉を貫くつもりなのか出来ないのか・・・。

「ともかく、状況は単純なようで助かりました。明日中には全て終わらせて帰る事が出来そうですね。」
「「「「「「「「「「明日!?」」」」」」」」」」
「えぇ。滅ぼすだけであれば難しい事はありません。そうですねぇ、折角ですから賭けをしましょうか、ルーク?」
「か、賭け?」

グリーディアの重臣達にはカレンの発言が信じられないようだったが、そんな事は無視して賭けを持ち掛けて来た。非常に嫌な予感がしてならないが、聞くしかないだろう。

「私とルーク、どちらが先に敵国を落とすか勝負しましょう!勝った方が1つ願いを聞くというのはどうです?」
「ちなみにカレンの願いは?」
「それは勿論、次回の新作スイーツを食す事です。」

カレンの顔は笑っているが、目は真剣そのもの。つまり、相当根に持っているという事だろう。ここで拒否しても、問題を先延ばしにするだけなのは目に見えている。オレが損をしている訳でもないし、カレンも充分に懲りた事だろう。

「はぁ、わかったよ。」
「ふふふ。そう言って頂けると思っておりました。やはり私の愛する旦那様ですね。」
「はいはい。ではオレとカレンが明朝、夜明けと共に真っ直ぐ2国の王都へ侵攻します。状況次第で変更するとは思いますが、基本は殲滅で。他に意見が無ければ、これで説明は終了と言う事で。」
「あ、あぁ。言いたい事は山ほどあるが、我々が口を挟むべきでは無いのだろうな。では、お2人に部屋を用意させるので、今日はゆっくり休んで欲しい。では皆の者、解散!」

調子の良いカレンは置いといて、要点を簡単に纏めるとオットル女王が解散を宣言する。色々と言いたい事はあるようだが、全て飲み込んでくれるらしい。時間を割かれる事が無くて何よりだ。


その後はオットル女王の計らいで、カレンと2人のんびりと過ごした。歓待の宴を用意すると言われたのだが、朝早いのと何も解決していないのを理由に遠慮させて貰った。英気を養う者達もいるのだが、オレは違う。前日の夜に酒を飲んでも、良い事は無いというのが持論である。飲み疲れるだけだと思うのだ。


そして明朝、夜明け前。オレとカレンは王都の入り口にいる。どのように攻め込むのかは、一切決めていない。お互いの好きなように攻め込むのが1番なのだ。

「オレはそろそろ行くけど、カレンはどうする?」
「そうですね・・・。私は日が昇ると同時に向かうとしましょう。」

王都から国境までは距離がある。日の出前に、そこまでは移動しておきたい。カレンとの移動速度を考えれば、それでも足りないのだ。全力の飛行でも、精々カレンの半分の移動速度と言った所だろうか。これ位のハンデは貰ってもいいだろう。

「それじゃあそろそろ、行くとしますか!」
「えぇ、それでは後ほど。」
「皇帝陛下!気を付けてくれ!!」
「ありがとうございます。では!」

カレンやオットル女王、そしてグリーディアの人達に見送られて風魔法を使用する。王城よりも100メートル程上空へ一気に飛び上がり、そこから全速力でネザーレアとの国境へと向かった。


「もう姿が見えなくなるとは・・・。ところで、カレン王妃殿下は向かわれないのか?」
「ルークは素直に敵の相手をするつもりなのでしょうが、私は違いますから。今回は本気を出させて頂きます。」
「そ、そうか・・・。」


この時のカレンの言葉の意味を、考えを理解出来ている者は1人もいなかった。当然だろう。一体誰が、あんな事を想像出来ると言うのだろうか・・・。
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