Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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フォレスタニア調査隊

対面

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転移を封印されたダンジョンから戻って来たのは、潜入した翌日の事。本当はすぐにでも戻る事が出来たが、念の為に様子を見る事にした。・・・本当の所は、ダンジョンに入る機会の無い学園組の希望である。わかり易く説明すると、キャンプ気分だった。

幾ら入り口付近とは言っても、最高難易度のダンジョンである。危険が無い訳ではないのだが、すぐに認識を改めた。どう考えても過剰戦力だったのだ。


元々カレンがその気になれば、単独で攻略可能なのだ。綺麗好きが災いし、ダンジョンを敬遠しているにすぎない。そこにオレを始めとして、実力は未知数だが確実に格上のヴィクトリアがいる。遅れて合流したヴァニラとシルフィの戦力も加味すれば、世界を滅ぼす事すら可能だろう。さらには格下となるが、ティナ達や竜王といった戦力も控えている。むしろ危険なのは自分達の方だろう。


何はともあれ、無事に城へと帰って来た嫁達はすぐに地球の人間達と対面した。オレが一緒に顔を出さなかったのは、余計な揉め事を避ける為。転生してから15年が経過しているが、顔見知りがいないとも限らない。全くの別人となっているので気付かれる恐れはないだろうが、何事にも絶対は無い。

あとはスフィアから指摘を受けた。皇帝がホイホイ顔を出すものではないらしい。相手の方も謁見なんて経験は無いだろうからね。


その日の夜に嫁さん達から話を聞き、翌朝いよいよご対面となった。謁見の間という話も出たのだが、堅苦しいのは好きじゃないのでお断りした。この世界の作法を知らない者達が相手だし、不敬罪だと騒がれても困る。シルフィ達が保護を申し出ている手前、勝手に罰する訳にもいかないのだから。


「それにしても、会うのは朝食の後でも良かったんじゃない?」
「折角ですから、彼女達も朝食に同席させようと思ったのです。ですが、食事の席でいきなり対面では可哀想でしょう?」
「あ~、それもそうだな。」

オレは今、地球からのお客さん達を待たせている部屋に向かっている。同動するのはお馴染みのスフィアさん。スフィアが言うように、初対面の偉い人と同席じゃメシの味なんてわからないだろう。一応気遣ってくれているようだ。


夜聞いた話では、若い女性達との事だった。それはオレにとって朗報である。前世では幼児の友達なんていなかったのだから、確実に見知らぬ人物である。これがマダムだったら、オレの心は乱れまくっていた事だろう。だが一方で問題もあった。どうやら言葉が通じないらしい。

言語理解とか言うスキル?は有名だったと思うが、この世界にそんな都合の良い物は無い。勉強あるのみだ。どうやって会話していたのか気になったのだが、シルフィとヴァニラは地球の言語も理解出来るのだとか。すんません、都合の良い物は多少ならあるようです。


2人に通訳して貰い、何とかお互いの事情を理解し合ったようだ。ここで問題となるのが、オレの立ち位置。日本語と英語、あとはドイツ語とフランス語なら会話が可能だ。かと言って会話が成立した瞬間に面倒な事になる。何を言っているのかわからないフリをする必要があるだろう。

しかしオレにそんな演技を求められても困る。嘘が吐けない性格なのだ。自分、不器用ですから。・・・・・すみません、私嘘を吐きました。本当は呼吸をするように嘘が吐ける。だが確実にバレるだろう。嫁さん達曰く、顔に出るそうだ。嘘を吐けるのと、嘘が上手いのは違う。


そういった事情から、対処はオレに一任された。何が起きても、オレが責任を持って対応する事を約束させられた。いや、これは正確じゃない。ハッキリ言おう。丸投げされたのだ。みんなの気持ちはわかる。誰だってコントロール出来ない相手の行動まで、責任なんて取らされたくないのだ。誰の事かって?そんなの決まってる・・・オレの事だよ。


今こそ一皮剥ける時である。思った事を口にするお調子者を卒業し、無口でダンディなおじさまへと進化するのだ。


「・・・・・出来るかぁ!」
「何です?藪から棒に。」
「い、いや・・・寡黙なナイスミドルを目指そうと思ったんだけどさ?」
「寝言は寝て言う物ですよ。」
「くっ!」

悔しいが事実なので何も言い返せない。今だって思わず「藪からスティック」って言い掛けたし。性格ってよりも年なんだろうな。精神年齢で言えば約60歳だし。

ん?そう考えると、ウチの嫁さん達って随分若いよな。あ、いや・・・年齢の話はダメだ。口にしなくても察知される時があるのに、我慢出来なくて言っちまうんだ。考えるのもマズイ。


そんな風にどうでもいい事に思考を割いていると、スフィアが無情な宣告をして来た。

「もう着きましたけど、どうするのか決まったのですか?」
「もう!?」
「はぁ・・・。これでもゆっくり歩いて来たのですよ?」

確かにスフィアにしてはのんびりだった気がする。まぁ、時間に追われているスフィアの場合、普段の移動速度が速歩きなんだけどな。

「出来る限り口を開かないようにするよ。」
「ふふふっ。期待していますね。」

スフィアめ、心にも無い事を。けど、誰だってそう思うよな。くそ~!見てろよ!!今からオレは海の底で物言わぬ貝のようになってやる!



スフィアに先導されて室内に入ると、並んで座るティナ、ナディア、ルビア、フィーナ、カレンの姿が目に入る。テーブルを挟んだ対面には、シルフィとヴァニラに挟まれる形で3人の女性が座っていた。

2組が見渡せる位置に案内されて着席し、とりあえず顔を拝む事にしたのだが・・・

「・・・は?」
「どうかしましたか?」
「い、いや、何でもないよ。」
「そうですか?・・・まぁいいでしょう。」

明らかに納得していない様子のスフィア。それもそのはず。必死に隠しているつもりだが、今のオレは酷く動揺している。だからこそ、話の腰を折ってでも正直に言っておくべきだろう。

「少しだけいいかな?」
「何ですか?」
「あの中に顔見知りがいる。だから下手に話を振らないでね?」
「「「「「はぁ!?」」」」」

オレの言葉に声を上げたのは嫁さん達。珍しくティナまで驚いているようだ。ありがたや~。オレだって驚いてるんだから当然だろうな。

「詳しい事は後で説明するよ。それよりシルフィ、ヴァニラ。進めて貰えるかな?」
「わかった。ヴァニラ、許す。」
「わ、私ですか!?」
「ヴァニラは他にいない。」

いや、そういう意味じゃないだろ。とツッコミをいれそうになったが、思った以上に優秀だったのか普通に進行し始めた。普通はもっと抵抗するものなんだけどな。

「それでは今回お連れした方々の紹介から。この世界ですと・・・ミスズ・ツキシロさん、ユイ・イシハラさん、リン・ハヤサカさんです。」
「初めまして、月城美鈴です。」
「石原唯と言います。」
「は、早坂凛・・・です。」

おぉ!確かに地球の言語、というか日本語だ。全員日本人ってのが気になるが、その辺は追々調べるとして。まずはこの3人の紹介から。


紹介された順に行くと、まずは月城美鈴さん。いきなりだが、彼女がオレの顔見知り。オレが務めていたホテルを毎週のように利用してくれたお得意様。最も人気のある女優さん、との事だった。

実はテレビや雑誌を見る時間が無かったので、イマイチ良くわからない。そんなオレを見兼ねて、ホテルの従業員達が態々教えに来てくれたのは懐かしい思い出である。

最後にあった時とほぼ変わらないのは、やはり職業のせいなのだろうか?確か最後に会った時は30歳手前だったと思う。


次が石原唯さん。ヴァニラがみんなに通訳している間に説明するが、随分と綺麗な声だと思ったら有名な声優さんらしい。残念ながらオレの記憶には無い。テレビを観なかったのだから当然だな。

見た感じ、20代前半だろうか?容姿も美しいが、声優さんは見た目もいいのか?


最後が早坂凛さん。着ている服でわかったが、あれは都内の有名高校の制服だったはず。分厚い眼鏡を掛けているのはわかるが、前髪で顔がほとんど見えない。影のある感じから察するに、いじめられていそうな印象を受ける。いや、見た目で判断するのは良くないな。


なんて想像を働かせていると、隣のスフィアが話し掛けて来た。

「何か質問はありますか?」
「うん?そうだな・・・まずは3人の希望を聞いておくか。ヴァニラ、頼むよ。」
「・・・わかりました。」

異世界召喚にまつわる事情を知りたいのだが、それは彼女達が落ち着いてからにしよう。ヴァニラが何か言いたそうだが、多分自分で聞けよって事だろう。当然却下である。

「みなさんは、これからどうしたいですか?と皇帝陛下がおっしゃっています。」
「どうって言われても・・・」
「出来る事も無いですよね?」
「ど、奴隷ですか!?」

確かに魔力が無いんじゃ、普通の仕事は無理だろうな。何の仕事をするにしても。火や水は必要だろう。それには魔法か魔道具を使う。魔道具は魔石が燃料なのだが、電池のように都合良くは出来ていない。起動する為には、極々微量の魔力を使わなければならない。

電池に似ているが、所詮は石だ。プラスやマイナスなんて物は無いのだから、スイッチを付けた所で動くはずもない。


それより凛さん、いや、凛ちゃん。そういう発言はやめて欲しい。確かにみなさん見目麗しい容姿をしていらっしゃるが、この世界では奴隷としての需要も無いだろう。あ、性奴隷としてなら需要はあるだろうな。だけどそれは絶対に選んではいけないし、選ばせるつもりもない。

ヴァニラの通訳に対してそう答えると、全員がホッとした表情を浮かべた。


しかし問題は山積みだ。彼女達を置いておくのは構わないが、一生このままという訳にもいかない。どうしたものかとスフィアに視線を向けると、彼女は険しい表情で首を横に振った。この問題に関しては、あまり回答を急ぐべきではないだろう。


とにかくこのまま黙っていても答えは出ない。まずは朝食を済ませてしまおうと考え、全員を食堂へと向かわせた。・・・カッコよく言ったが、本当はティナの機嫌が悪そうだったからです。食べ物の恨みは恐ろしいのだ。
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