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ルチーズの教え その2
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マリーナ前侯爵夫妻が我に返った時は、既に手遅れだった。
アーリオ夫妻とその息子は侯爵家で豪奢に散財し、執務は前侯爵夫妻と家令が手分けをして熟すことになる。しかもアーリオ夫妻が手伝うことは、一切なかった。
今回のことを知ったブリズ伯爵家と、娘が離縁され孫が傷つけられたラフレスシア伯爵家からは絶縁状が叩きつけられた。
アーリオ一家は、戻る場所をなくしたのだ。
それでもアーリオはマリーナ侯爵家を継げると暢気にしていたが、さすがに長く仕える家令のトムが前侯爵夫妻に訴えた。
「このままアーリオ様を後継者にすれば、この侯爵家は終わりを迎えます。ラフレスシア伯爵家に許しを乞うてルチーズ様を後継ぎに戻すか、親戚から優秀な者を養子とし継がせなければ、金銭的にも社会的にも存続は不可能です!」
それしか道は残されていないと、本当は気付いていた前侯爵夫妻。
伝統ある侯爵家の没落が、自分達のせいで現実となりそうで怖くて動けなかったのだ。
幸いなことに、まだアーリオ夫妻や孫を侯爵家の籍には入れていなかった。彼らはまだ男爵家のままである。
「分かって頂戴ね、アーリオ。このままでは侯爵家がなくなってしまうのよ。貴女達は今まで通りに暮らしていって」
「そんな! だって私達夫婦はブリズ伯爵家と縁を切られたの。働く場所がないのよ」
「それなら心配はいらないぞ。『ブリズ伯爵家の補佐をする能力があるのなら、是非力を借りたい』と求人していた商家に話をつけてきた。明日からピマンはそこに通うと良い。使用人用の住居も側にあるそうだ」
「平民の下で働けと言うのか? この俺に!」
その言葉を聞いた前侯爵であるセージは、声音に怒りを込めた。
「お前達がここに来てから、どれだけ散財したか分かっているのか? 何の権限も持たないお前達は労働の一つもせずに、我が家のツケ払いにして遊びまわりおって」
「だって私達がこの家を継ぐと思ったから、そのくらい良いかと思ったのよ」
「そうですよ、お義父さん。これから働きますから」
まだ状況が飲み込めていない二人は、弛く笑って言い訳していた。けれどその後にブリズ伯爵家だけではなく、社交界に力を持つラフレスシア伯爵家を敵にまわしたことを知り、漸く焦り出した。
「何で、ラフレスシア伯爵が? 私達に関係ないじゃない!」
「? クリーミーの生家は、ラフレスシア伯爵家だからよ。知らなかったの? どうして……」
「終わったぁ。俺達は貴族の世界に戻れないぞ」
「どうしてですか、お父様。どうして?」
これがアーリオとピマン、その息子アルガが困惑と悲しみと後悔を抱えながら、貴族社会から消えた瞬間だった。
さすがに前侯爵夫妻は僅かながらもアーリオ達に援助を続けていたが、すぐに代替えを望む声が高まり、ラフレスシア伯爵家が支持する侯爵の親戚筋の者が当主となった。
今前侯爵は領地の片隅で、静かに暮らしている。当然にアーリオ達への仕送りは終了したのだった。
パワブルによく似ている孫のルチーズに会うことも、一生ないだろう。
「どうしてこんなことになったのかしら? 私達は幸せになれるはずだったのに……」
「もう会えないのか? 可愛いルチーズに、あぁ」
アーリオの子であるアルガよりも、内孫のルチーズの方を愛していた前侯爵夫妻。生まれた時からずっと一緒なのだから、情も多分に移っていたのだ。
嘆いてもその気持ちは、もう誰にも伝わらない。
◇◇◇
その話をルチーズに悪い手本として、過去に聞いていたコロネは、今回の事態を重ねて思うのだ。
「まさかお祖父様は、この公爵家の解体をご希望なのでは? あの方は公爵の地位を退いても(経済的に)自立していますし、考え方も特殊ですわ。孫である私の父(祖父の息子)は限りなく死に近い行方不明、母は(たぶん男性と)出奔。その母は一応ミズーレン伯爵家の養女だけど、生家は田舎の男爵家でしかも実親の方達も既に亡くなっていると言うから、支援も期待できない不良物件。
勿論ミズーレン伯爵の支援は、期待できそうにないですし。私の出生もお母様の二股で、大変だったと聞いていたのです。本当、最悪ですわ。
これはもしかして、本当に……私を後継者から外したいのではないかしら」
やっと悲しみを乗り越えて父の状況を受け入れつつあったコロネだが、叔父の登場で頓珍漢な思考に陥っていた。
(クリム叔父様の方が、幾分かマシだと思われているのかも?)
やはりまだ、コロネは混乱していたのだろう。
けれど……。
侍女のアンナが心配する中、吹っ切れた彼女の笑顔で、何かが始まる予感がした。
アーリオ夫妻とその息子は侯爵家で豪奢に散財し、執務は前侯爵夫妻と家令が手分けをして熟すことになる。しかもアーリオ夫妻が手伝うことは、一切なかった。
今回のことを知ったブリズ伯爵家と、娘が離縁され孫が傷つけられたラフレスシア伯爵家からは絶縁状が叩きつけられた。
アーリオ一家は、戻る場所をなくしたのだ。
それでもアーリオはマリーナ侯爵家を継げると暢気にしていたが、さすがに長く仕える家令のトムが前侯爵夫妻に訴えた。
「このままアーリオ様を後継者にすれば、この侯爵家は終わりを迎えます。ラフレスシア伯爵家に許しを乞うてルチーズ様を後継ぎに戻すか、親戚から優秀な者を養子とし継がせなければ、金銭的にも社会的にも存続は不可能です!」
それしか道は残されていないと、本当は気付いていた前侯爵夫妻。
伝統ある侯爵家の没落が、自分達のせいで現実となりそうで怖くて動けなかったのだ。
幸いなことに、まだアーリオ夫妻や孫を侯爵家の籍には入れていなかった。彼らはまだ男爵家のままである。
「分かって頂戴ね、アーリオ。このままでは侯爵家がなくなってしまうのよ。貴女達は今まで通りに暮らしていって」
「そんな! だって私達夫婦はブリズ伯爵家と縁を切られたの。働く場所がないのよ」
「それなら心配はいらないぞ。『ブリズ伯爵家の補佐をする能力があるのなら、是非力を借りたい』と求人していた商家に話をつけてきた。明日からピマンはそこに通うと良い。使用人用の住居も側にあるそうだ」
「平民の下で働けと言うのか? この俺に!」
その言葉を聞いた前侯爵であるセージは、声音に怒りを込めた。
「お前達がここに来てから、どれだけ散財したか分かっているのか? 何の権限も持たないお前達は労働の一つもせずに、我が家のツケ払いにして遊びまわりおって」
「だって私達がこの家を継ぐと思ったから、そのくらい良いかと思ったのよ」
「そうですよ、お義父さん。これから働きますから」
まだ状況が飲み込めていない二人は、弛く笑って言い訳していた。けれどその後にブリズ伯爵家だけではなく、社交界に力を持つラフレスシア伯爵家を敵にまわしたことを知り、漸く焦り出した。
「何で、ラフレスシア伯爵が? 私達に関係ないじゃない!」
「? クリーミーの生家は、ラフレスシア伯爵家だからよ。知らなかったの? どうして……」
「終わったぁ。俺達は貴族の世界に戻れないぞ」
「どうしてですか、お父様。どうして?」
これがアーリオとピマン、その息子アルガが困惑と悲しみと後悔を抱えながら、貴族社会から消えた瞬間だった。
さすがに前侯爵夫妻は僅かながらもアーリオ達に援助を続けていたが、すぐに代替えを望む声が高まり、ラフレスシア伯爵家が支持する侯爵の親戚筋の者が当主となった。
今前侯爵は領地の片隅で、静かに暮らしている。当然にアーリオ達への仕送りは終了したのだった。
パワブルによく似ている孫のルチーズに会うことも、一生ないだろう。
「どうしてこんなことになったのかしら? 私達は幸せになれるはずだったのに……」
「もう会えないのか? 可愛いルチーズに、あぁ」
アーリオの子であるアルガよりも、内孫のルチーズの方を愛していた前侯爵夫妻。生まれた時からずっと一緒なのだから、情も多分に移っていたのだ。
嘆いてもその気持ちは、もう誰にも伝わらない。
◇◇◇
その話をルチーズに悪い手本として、過去に聞いていたコロネは、今回の事態を重ねて思うのだ。
「まさかお祖父様は、この公爵家の解体をご希望なのでは? あの方は公爵の地位を退いても(経済的に)自立していますし、考え方も特殊ですわ。孫である私の父(祖父の息子)は限りなく死に近い行方不明、母は(たぶん男性と)出奔。その母は一応ミズーレン伯爵家の養女だけど、生家は田舎の男爵家でしかも実親の方達も既に亡くなっていると言うから、支援も期待できない不良物件。
勿論ミズーレン伯爵の支援は、期待できそうにないですし。私の出生もお母様の二股で、大変だったと聞いていたのです。本当、最悪ですわ。
これはもしかして、本当に……私を後継者から外したいのではないかしら」
やっと悲しみを乗り越えて父の状況を受け入れつつあったコロネだが、叔父の登場で頓珍漢な思考に陥っていた。
(クリム叔父様の方が、幾分かマシだと思われているのかも?)
やはりまだ、コロネは混乱していたのだろう。
けれど……。
侍女のアンナが心配する中、吹っ切れた彼女の笑顔で、何かが始まる予感がした。
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