白い結婚だったはずなのに、少し糖度が高すぎる気がするのですが。~殿下が今更復縁を懇願してきましたが、もう遅いです~

水上

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第25話:誰よりも目立つ主役

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「……あら? ジュリアン様、なんだか影が動いて……」

 ミシェルが天井を見上げようとした、その時だった。

 激しい衝撃音と共に、シャンデリアの一部を構成する金属フレームが破断した。

 本体こそ落下しなかったものの、激しい揺れによって、固定されていた数十本の太い蝋燭が、受け皿から弾き飛ばされた。

 それはまるで、火のついた爆弾のように、真下のダンスフロアへと降り注いだ。

「きゃああああああ!!」

「火だ! 火が落ちてきたぞ!!」

 悲鳴が上がり、優雅な舞踏会は一瞬でパニックと化した。
 溶けた熱い蝋が貴族たちの頭や肩に降り注ぐ。

 そして、不幸なことに、最も多くの弾丸を浴びたのは、フロアの中央でポーズを決めていたミシェルだった。

「あつっ!? 熱いぃぃぃ!」

 ミシェルのドレスに、火のついた蝋燭が直撃した。

 彼女のドレスは、軽やかさを出すために可燃性の高い薄い布を何層にも重ねており、空気をたっぷりと含んでいる。

 それはまさに、理想的な着火剤だった。
 ピンク色のフリルが、一瞬でオレンジ色の炎に包まれる。

「いやぁぁぁ! 燃えてる! 私が燃えてるぅぅ!」

「ミ、ミシェル!?」

 ジュリアンは慌てて上着を脱ぎ、彼女に叩きつけて消火しようとしたが、パニックになったミシェルが暴れ回るため、火の粉が周囲に飛び散り、被害が拡大していく。

「水を! 誰か水を掛けろ!」

「シャンデリアが落ちてくるぞ! 逃げろ!」

 貴族たちは我先にと出口へ殺到し、大混乱となった。

 衛兵たちがバケツリレーで水を掛け、ようやく火は消し止められたが、会場は水浸しで、ミシェルの自慢のドレスは焦げたボロ雑巾のようになり、美しい金髪もチリチリに焼け焦げてしまっていた。

 数時間後。
 煤だらけになった大広間で、ジュリアンは呆然と天井を見上げていた。

 シャンデリアは奇跡的に首の皮一枚で繋がっていたが、今にも落ちそうなほど傾いている。

「どういうことだ……! 先週、点検させたばかりだろう!」

 ジュリアンは、呼び出された宮廷建築士の胸ぐらを掴んで怒鳴りつけた。

「も、申し訳ございません殿下! ボルトは規定のトルクで締め付けておりました! ですが、振動で……、まさかあんなに揺れるなんて……」

「言い訳をするな! 以前はもっと激しいダンスをしても、微動だにしなかったぞ!」

 建築士は震えながら、正直に告白した。

「そ、それが……、以前は、ボルトが絶対に緩まないように、特殊な青い液体が塗られておりました。それに、天井裏の金具には、弾力のある灰色の詰め物がびっしりと……」

「なんだそれは」

「我々も調査したのですが、既存の建材リストには存在しない物質でした。おそらく、ヴィオラ様が独自に調合された構造用制振材かと……」

 その言葉に、ジュリアンだけでなく、周りで聞いていた貴族たちも息を呑んだ。
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