魔王さまのヒミツ♡

黒木  鳴

文字の大きさ
5 / 12

しおりを挟む


急遽決まったディードリッヒの遠征。

時期的にゼットの関与を穿ったが……辺境で起きたミノタウロス族とケンタウロス族の争いは自然に勃発したものだった。

この遠征がゼットが仕組んだものでないとしても…………敵がこの機を狙ってくるのは確実だろう。
だからこそ数日間はレイが人前に出る必要がないよう調節したし、守りも強固に固めた。

充分に警戒していた………………筈、だった。



城の回廊を足早に歩いていたジェラルドは声をかけられるより早く振り返った。

「コンバンハ」

抑揚のない声が陰気に放たれる。
差し込む月の光に照らされたのは爬虫類の鱗を持つガリガリの男。

「イグナー」

ジェラルドがその名を呟いた瞬間、イグナーが腕を差し出す。

四方の闇から飛び出してきた影の攻撃をジェラルドは大きく後ろに飛んで避けた。

応戦している間、イグナーの詠唱には気づいていたが………攻撃の類ではなかったから目の前の敵を優先した。

その判断が過ちだとも知らずに。

耳鳴りのような甲高い音を立てて周囲を結界が取り囲む。
なんのつもりだ?と思ったところで不意に感じた違和感。

眩暈のようなそれに周囲に視線をやればほんの薄っすらと足元を白い靄のようなものが這い寄っていた。
倒れ伏した敵たちが喉を掻きむしり絶叫をあげる。

「毒かっ……!!」

張り巡らされた結界は密室を造り上げるためのもの。
強い毒にさえ耐性のあるイグナーは自らの配下たちをも巻き添えにして毒を散布したのだ。

瞬時に気づいたジェラルドは右手に魔力を込めて結界を力技で破壊し、暴風を巻き起こすと毒を散らした。

風が止む時にはイグナーは姿を消していた。

(やられた…………!)

内心で悪態をつきつつ、力の入らない体に鞭を打つ。
無様に壁に手を付きながらなんとか目的の部屋までたどり着いた時には半身が爛れたように青く変色していた。

「ジェラルド様?!」

扉を守っていた衛兵がその姿に驚きの声をあげる。

「レイ様はご無事、ですか?」

「は、特に異常は……」

異変がなかったことを告げつつも、別の者が室内に確認を取る。

「ジェラルド?!一体なにがっ……!!?」

「危険ですレイ様どうかお下がりください。誰かっ毒に詳しい者を!ララを呼べっ!!」

クロノスの手を振り払いレイはジェラルドへと駆け寄った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

あなたのいちばんすきなひと

名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。 ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。 有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。 俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。 実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。 そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。 また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。 自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は―― 隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。

死に戻り騎士は愛のために願う 〜10回だけの奇跡〜

湯川岳
BL
「一生苦しむがいい。その呪いは俺からのプレゼントだ」 幼い頃に出会った友から呪いを貰ってしまったユーリ。 時は流れ、シューベルト家次男のアルトを追って騎士団に入隊をし、副団長まで上り詰めたユーリ。 毎日アルトの世話をしていく内に心惹かれていく。 「キスしてみろよ。それでオレが嫌じゃなければ……考えてやってもいい」 ユーリはアルトに口付けをする。そして呪いがこの時を待っていたかのように発動してしまった。 意識が乗っ取られ、目を覚ませばそこにあったはずの幸せは鮮やかな赤で染まっていた。 その日を境に始まったのは、暗くて長い道のりだった。 ※アルト編、ユーリ編。どちらから先に読まれても大丈夫です。 エンディング異なります。それもお楽しみ頂けたら幸いです。 ※最後はハッピーエンド確定。4話までだいぶ暗めの話なので苦手な方はお気をつけ下さい。 ※タイトル変えてみました。 旧:死に戻り騎士の願い 表紙素材:ぱくたそ

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

【完結】試練の塔最上階で待ち構えるの飽きたので下階に降りたら騎士見習いに惚れちゃいました

むらびっと
BL
塔のラスボスであるイミルは毎日自堕落な生活を送ることに飽き飽きしていた。暇つぶしに下階に降りてみるとそこには騎士見習いがいた。騎士見習いのナーシンに取り入るために奮闘するバトルコメディ。

冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている

春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」 王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。 冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、 なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。 誰に対しても一切の温情を見せないその男が、 唯一リクにだけは、優しく微笑む―― その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。 孤児の少年が踏み入れたのは、 権謀術数渦巻く宰相の世界と、 その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。 これは、孤独なふたりが出会い、 やがて世界を変えていく、 静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。

【連載版】魔王さまのヒミツ♡ ~バレたら即・下剋上?!クール魔王の素顔は泣き虫チキンな箱入り息子~

黒木  鳴
BL
歴代最年少で魔王の地位に就いたレイには隠し通さなければならない秘密がある。それは……「魔王もうやだぁぁぁ~~!!下剋上こわいよぉぉぉーーー!!!」その実態が泣き虫ポンコツ魔王だということ。バレれば即・下剋上を挑まれることは必至!なので先々代の魔王を父に持ち、悪魔公爵ジェラルドが膝を折ったという2枚看板を武器にクールな魔王を演じている。だけどその実力を疑う者たちも出てきて……?!果たしてレイの運命は……?!溺愛腹黒系悪魔×初心な小悪魔系吸血鬼。お茶目なパパんも大活躍!!短編「魔王さまのヒミツ♡」文字数の関係で削ったシーン・設定などを大幅加筆の連載版となります。

処理中です...