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しおりを挟む玉座に座る主へと甲斐甲斐しく世話を焼く光景をその男は瞳を細めて見ていた。
片眼鏡をつけた美形の副官はその容姿に反し、性格と実力は正に上級悪魔そのものだ。
だが、あの魔王は………………。
「どう思う?イグナー」
問いかけられたどこか爬虫類の特徴を持つ痩せた男は、なにも答えず不気味な視線をただ玉座へと注いでいた。
「愚か者どもがなにか企んでいるようだ」
組んだ手の上に顎を乗せ、ディードリッヒは瞳を細める。
部屋の中に彼とジェラルドしか居ない今、瑠璃色の瞳に浮かぶ色は酷薄なまでに冷たい。
「厄介ですね」
ある意味予想通りの話題にジェラルドは片眼鏡を外し眉間を揉んだ。
前々から魔王であるレイの実力を疑う輩が居るのは感づいていた。
その筆頭が以前レイが口にしていたゼットという男。
オーガの統領でもあるゼットはとにかく好戦的だ。
そもそもが人型の鬼であるオーガという種族からして戦闘狂な気質があり、弱者が嫌いな彼らは頻繁に揉め事を起こす問題児集団でもある。
「どうやらレイの実力を疑っているようだね」
「……彼らはレイ様の実力を目にしていませんし」
はぁ、と大きくため息を吐いた。
戦闘が苦手なレイが表立つことはないし、そのことが一層疑惑を強めているのだろう。
「君があの子に尽くしているのも、実は敗れたからではなくその恋情故だという噂もあるくらいだ。……魅了により支配下に置いているんじゃないかって声なんかもね」
「…………」
「まぁなんにせよ不穏な動きに気を付けることにしよう」
「全く、なんだって私が下らない小競り合いの仲介など…………」
苛立たしそうにディードリッヒは顔を顰める。
「と、父さま。気をつけてね」
「勿論、私があんな雑魚どもに手こずるわけがないだろう?すぐに帰ってくるよ」
今日も温度差の激しい態度と表情を使い分けたディードリッヒはするりとレイの頬を撫でる。
「非常食は持ってる?」
「持ってる」
幼子に問いかけるようにすれば、レイは胸ポケットからガラス製の小瓶を取り出した。
カッティングの美しいアンプルの中身は赤い液体。
吸血を嫌がる息子に常に持たせているそれはディードリッヒ血だ。ほんの数滴ですごい効果を発揮するそれは正に非常食である。
「この子を守れ」
重く、絶対的な命令を孕んだ声にクロノスたちは胸に手を当て頭を垂れた。
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