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しおりを挟む執務を終えた頃には窓から月の光が差し込んでいた。
ペンを置いたレイは無言で机を片付けるジェラルドの姿を盗み見る。
「ジ、ジェラルド……怒ってる……?」
午前中のあの一件から………あからさまではないけれど、ジェラルドは不機嫌そうだった。
上目づかいに窺ってくるレイに、はぁ……と溜息を吐いたジェラルドは手にした書類の束を机の端に置き、スタスタとソファへと歩み寄る。
「こちらに」
トントンと隣を示され、言われるがままレイはいそいそと移動した。
「ふぇっ?!」
程よく弾力のある生地に腰を下ろした途端…………何故か視界が反転した。
少し動けば鼻が触れ合いそうな距離で覗き込んでくるアイスブルーの瞳。
その瞳に射抜かれたように身動きができない。
「……無防備すぎるんですよ」
苦々しい声でジェラルドが呟く。
抗議を上げようとした声は、ふにっ……と唇を押す指に阻まれた。
唇をなぞる指先の動きはさらに妖しさを増し……咥内に侵入を果たして小さな舌を弄ぶ。
「……っう……」
ゾクゾクと小さく背筋が揺れる感覚に顔を真っ赤にしなんとか耐える。
叫ぼうにも下手に口を動かすと彼の指を噛んでしまいそうで声がだせない。
苦肉の策でレイが選んだ方法は…………。
ぎゅっと瞳を閉じることだった。
吸血鬼にとって魅了が十八番であるように、悪魔にとっても同じ。
誘惑は彼らの代名詞といっても過言じゃない。
故に、レイはあのままジェラルドの瞳を見続けていたら色々ヤバい……と判断したのだが……。
押し倒された状態で頬を色付けながら固く瞳を閉じるレイをジェラルドは半眼で見降ろした。
このまま襲ってしまおうか。
やけっぱちでそんなことを思う。……やらないが。
チラリと漏れてしまった本心をフルフルと小さく首を振って払い、左手をあげた。
悪戯ぐらいならいいでしょう。
そんな不穏な心の呟きのままに片手で器用にレイの首元を寛げる。実に見事な早業だった。
首筋に顔を埋め、頸動脈を探るように舌をペロリと這わせれば……「ひょあっ!」となんとも妙な悲鳴をあげたレイがギョッとして目を見開く。
「おや?瞳をあけて宜しいので?」
「いや、だってお前っ……!なにしてっ?!!」
必死に首元を手で覆う相手に「あなたがいつもしてることですが?」と返せばうっ……と言葉を詰まらせる。
その隙を狙って手を抑え込み、再びがら空きとなった首筋に顔を埋めてチュッと鋭く吸い上げる。
仕上げとばかりに赤い花をレロリと舐め上げ、「真っ赤ですね」と頬を包み込むようにして覗き込めば、ぷるんと美味しそうな唇があわあわ震えた。
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