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しおりを挟む騒動が収まったのも束の間、ふと上空を見やった魔族が驚きの声をあげた。
ゴゴゴゴゴッ……そんな表現が相応しい勢いで飛んで来る黒い物体。
もとい凄まじい速度で近づいてくるのは漆黒のコウモリの羽を広げた美貌の吸血鬼・パパんことディードリッヒだった。
騒々しい最中、降り立った彼は羽もたたまぬままレイの前へと立った。
庇うように片腕を広げ周囲を睥睨しつつ、ジェラルドに問いかける。
「なにがあった?」
「……卿の不在を狙い、昨夜イグナーにより私への襲撃が。そして先程、不敬にもゼットがレイ様に挑みました。交戦中イグナーの精神干渉によりゼットが暴走、オーガ一族を巻き込み恐慌をきたしたところをレイ様が制圧なさいました」
軽く頭を下げジェラルドが簡潔に説明すれば、チッと返される舌打ち。
「毒、か」
「面目ありません」
「それで?レイの実力に君たちは納得したのかな?」
「はっ!」
視線を向けられたゼットが慌ただしくその場に平伏した。
「愚かにも魔王様のお力を疑ったこの度の不敬!誠に申し訳ありませんでした!!いかなる処分もお受け致します」
地面にオデコを擦り付けんばかりに勢いよく謝罪したゼットに次いで、ノロノロとイグナーも跪き頭を下げる。
「申し訳ございマセン。ドウかお許しを……」
謝罪する2人を前に親指を首の前でスライドさせ「殺っちゃう?」と目で語るディードリッヒと同意するように頷くジェラルド。
このまま彼らに任せていたら物騒な処分にしかならなそうで、レイは仕方なく前に出た。
「此度のこと、極刑も止むを得ぬが……貴様らを殺したところで後の処理が面倒だ」
必死に魔王モードを発動しなんとか言葉を紡ぐ。
「今一度機会をやろう。選べ、僕に忠誠を誓うか……」
「誓います!」
食い気味に叫ばれた。
いや、魔王の言葉遮っちゃダメだろ……。
そう脳内で突っ込む。
やがてやや遅れてイグナーも、胸に手を当て頭を垂れた。
「このイグナー、魔王陛下二絶対の忠誠を誓いマス」
次の瞬間には周囲の魔族たちから「魔王様万歳!!」と魔王コールが湧き上がり、レイは再び背中をビクッと揺らす。
轟く魔王コールにレイはもう涙目だ。
ほんの一瞬ジェラルドとディードリッヒは目で会話した。
おや、とさも今気づいた素振りでジェラルドがレイの襟元へと手を伸ばす。
「レイ様のお召し物が下賤な血で汚れています」
「それはいけないね。このような茶番に付き合わされてさぞお疲れだろう。ジェラルド、魔王様をお連れしろ」
「畏まりました」
そのまま流れるようにジェラルドがレイをエスコートして連れ去った。
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