11 / 12
11
しおりを挟む瞳の端に滲んだ涙を親指でそっとぬぐう。
「これがあなたがしていることです。いいですか?私だからこそなんとか理性を保っているものの……他の魔族なら我を忘れて襲い掛かられても可笑しくないのですよ?」
普通の吸血鬼ならば問題ない。
魅了が強く効きすぎるということは、力関係が勝っている証なのだから。
以前魔族たちがジェラルドのことを「魅了により支配下に置いているんじゃないか」などと噂していたが……そもそも実力のない者がより強者を支配下に置けるわけがないのである。
例えばディードリッヒならば、その瞬間に相手をねじ伏せ完全な支配下に置くか、手っ取り早く肉塊に変えるだろう。
だけど優しすぎるレイにはそれが出来ない。
眉を寄せて諭すジェラルドの言葉にレイは大きく目を見開いた。
「ま、さか……お前がやたらと自分の血を吸わせようとするのって……」
「他の野郎の血など吸わせたくないからに決まっているでしょう」
なんでわからない、とばかりに呆れた声でジェラルドは告げる。
「愛してます」
言葉と共に口づけを落とす。
丸く秀でた額へ、自分を見上げる瞳の眦へ、柔らかな頬へ、唇のすぐ横へ。
「どうしようもなくあなたが好きなのです。愛しています」
切なく見つめてくるアイスブルーの瞳は雄弁に “どうか、信じて” とそう訴えていた。
魅入られたようにその瞳を見上げながら、レイはきゅむっと唇を噛みしめ「知ってる」と呟いた。
乱暴に肩を掴み、ムリな体制で上半身を持ち上げる。
チュッと軽いリップ音を立てて唇を重ねた。
ほんの一瞬だけ重ねたそれを離し俯けば、大きな手に頬を包まれ顔を上げさせられる。
アイスブルーの瞳から逃れる様に身じろぐが……それよりも早く後頭部を掴まれた。
唇に感じる柔らかな感触。
それを感じた次の瞬間には熱い舌が無遠慮に咥内を暴れまわっていた。
その熱さと感触に怯むも後頭部に回った手が逃げ道をくれない。
上顎を舐められる未知の感覚に仰け反った背中も腰を支える手に阻まれ、ただただ体中を駆け巡る熱と震えに耐えることしかできない。
どのくらいそうしていただろう?
はぁはぁと荒い自らの呼吸音がいやに耳に響いた。
震える体は力が入らなくて、凭れ掛かるようにコテリと頭を預ける。
なにより……顔があげられない。
「……誘惑のプロフェッショナル、こわい……」
耳まで真っ赤なのを感じながら両手に顔を埋めたレイは呟いた。
悪魔こわい……。
全身の血液が逆流するような羞恥に震えつつ慄いた。
「あなたねぇ……」
頭上から振ってきた呆れたような声など知らない。
「まぁ、いいです。これ以上手を出したら本気で襲いそうですし」
「?!」
問題発言に目を剥けば、にっこりと綺麗な笑みを返された。
生まれたての小鹿のようなぎこちなさでぞりぞりとソファをお尻で這う。一瞬で距離を詰められた。
「今後はむやみに誰かの血を吸ってはいけませんよ?」
そう言ってジェラルドが先程咲かせた赤い痕を指でツツゥと撫でる。
「でないと…………嫉妬のあまり “お仕置き” してしまうかもしれません」
「し、しない!気をつける!!」
意味深に声を潜められた “お仕置き” の言葉に首振り人形のごとくコクコクと頷いた。
本能が全力で警報を告げていた。
素直に宣言するレイにジェラルドが「おや、残念」とわざとらしく呟く。
首筋をなぞる手つきが艶めかしくて僅かな電流でも流されたように背筋がゾクゾクする。
プルプルしながら悪魔の誘惑テクに慄くレイはその様がジェラルドの嗜虐心を刺激しているなど思いもしない。
要はどっちもどっち。
85
あなたにおすすめの小説
冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている
春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」
王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。
冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、
なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。
誰に対しても一切の温情を見せないその男が、
唯一リクにだけは、優しく微笑む――
その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。
孤児の少年が踏み入れたのは、
権謀術数渦巻く宰相の世界と、
その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。
これは、孤独なふたりが出会い、
やがて世界を変えていく、
静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。
死に戻り騎士は愛のために願う 〜10回だけの奇跡〜
湯川岳
BL
「一生苦しむがいい。その呪いは俺からのプレゼントだ」
幼い頃に出会った友から呪いを貰ってしまったユーリ。
時は流れ、シューベルト家次男のアルトを追って騎士団に入隊をし、副団長まで上り詰めたユーリ。
毎日アルトの世話をしていく内に心惹かれていく。
「キスしてみろよ。それでオレが嫌じゃなければ……考えてやってもいい」
ユーリはアルトに口付けをする。そして呪いがこの時を待っていたかのように発動してしまった。
意識が乗っ取られ、目を覚ませばそこにあったはずの幸せは鮮やかな赤で染まっていた。
その日を境に始まったのは、暗くて長い道のりだった。
※アルト編、ユーリ編。どちらから先に読まれても大丈夫です。
エンディング異なります。それもお楽しみ頂けたら幸いです。
※最後はハッピーエンド確定。4話までだいぶ暗めの話なので苦手な方はお気をつけ下さい。
※タイトル変えてみました。
旧:死に戻り騎士の願い
表紙素材:ぱくたそ
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
【完結】試練の塔最上階で待ち構えるの飽きたので下階に降りたら騎士見習いに惚れちゃいました
むらびっと
BL
塔のラスボスであるイミルは毎日自堕落な生活を送ることに飽き飽きしていた。暇つぶしに下階に降りてみるとそこには騎士見習いがいた。騎士見習いのナーシンに取り入るために奮闘するバトルコメディ。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
【連載版】魔王さまのヒミツ♡ ~バレたら即・下剋上?!クール魔王の素顔は泣き虫チキンな箱入り息子~
黒木 鳴
BL
歴代最年少で魔王の地位に就いたレイには隠し通さなければならない秘密がある。それは……「魔王もうやだぁぁぁ~~!!下剋上こわいよぉぉぉーーー!!!」その実態が泣き虫ポンコツ魔王だということ。バレれば即・下剋上を挑まれることは必至!なので先々代の魔王を父に持ち、悪魔公爵ジェラルドが膝を折ったという2枚看板を武器にクールな魔王を演じている。だけどその実力を疑う者たちも出てきて……?!果たしてレイの運命は……?!溺愛腹黒系悪魔×初心な小悪魔系吸血鬼。お茶目なパパんも大活躍!!短編「魔王さまのヒミツ♡」文字数の関係で削ったシーン・設定などを大幅加筆の連載版となります。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる