魔王さまのヒミツ♡

黒木  鳴

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瞳の端に滲んだ涙を親指でそっとぬぐう。

「これがあなたがしていることです。いいですか?私だからこそなんとか理性を保っているものの……他の魔族なら我を忘れて襲い掛かられても可笑しくないのですよ?」

普通の吸血鬼ならば問題ない。

魅了が強く効きすぎるということは、力関係が勝っている証なのだから。
以前魔族たちがジェラルドのことを「魅了により支配下に置いているんじゃないか」などと噂していたが……そもそも実力のない者がより強者を支配下に置けるわけがないのである。

例えばディードリッヒならば、その瞬間に相手をねじ伏せ完全な支配下に置くか、手っ取り早く肉塊に変えるだろう。

だけど優しすぎるレイにはそれが出来ない。

眉を寄せて諭すジェラルドの言葉にレイは大きく目を見開いた。

「ま、さか……お前がやたらと自分の血を吸わせようとするのって……」

「他の野郎の血など吸わせたくないからに決まっているでしょう」

なんでわからない、とばかりに呆れた声でジェラルドは告げる。

「愛してます」

言葉と共に口づけを落とす。

丸く秀でた額へ、自分を見上げる瞳の眦へ、柔らかな頬へ、唇のすぐ横へ。

「どうしようもなくあなたが好きなのです。愛しています」

切なく見つめてくるアイスブルーの瞳は雄弁に “どうか、信じて” とそう訴えていた。

魅入られたようにその瞳を見上げながら、レイはきゅむっと唇を噛みしめ「知ってる」と呟いた。

乱暴に肩を掴み、ムリな体制で上半身を持ち上げる。
チュッと軽いリップ音を立てて唇を重ねた。

ほんの一瞬だけ重ねたそれを離し俯けば、大きな手に頬を包まれ顔を上げさせられる。
アイスブルーの瞳から逃れる様に身じろぐが……それよりも早く後頭部を掴まれた。

唇に感じる柔らかな感触。

それを感じた次の瞬間には熱い舌が無遠慮に咥内を暴れまわっていた。

その熱さと感触に怯むも後頭部に回った手が逃げ道をくれない。
上顎を舐められる未知の感覚に仰け反った背中も腰を支える手に阻まれ、ただただ体中を駆け巡る熱と震えに耐えることしかできない。

どのくらいそうしていただろう?

はぁはぁと荒い自らの呼吸音がいやに耳に響いた。
震える体は力が入らなくて、凭れ掛かるようにコテリと頭を預ける。
なにより……顔があげられない。

「……誘惑のプロフェッショナル、こわい……」

耳まで真っ赤なのを感じながら両手に顔を埋めたレイは呟いた。

悪魔こわい……。

全身の血液が逆流するような羞恥に震えつつ慄いた。

「あなたねぇ……」

頭上から振ってきた呆れたような声など知らない。

「まぁ、いいです。これ以上手を出したら本気で襲いそうですし」

「?!」

問題発言に目を剥けば、にっこりと綺麗な笑みを返された。

生まれたての小鹿のようなぎこちなさでぞりぞりとソファをお尻で這う。一瞬で距離を詰められた。

「今後はむやみに誰かの血を吸ってはいけませんよ?」

そう言ってジェラルドが先程咲かせた赤い痕を指でツツゥと撫でる。

「でないと…………嫉妬のあまり “お仕置き” してしまうかもしれません」

「し、しない!気をつける!!」

意味深に声を潜められた “お仕置き” の言葉に首振り人形のごとくコクコクと頷いた。
本能が全力で警報を告げていた。

素直に宣言するレイにジェラルドが「おや、残念」とわざとらしく呟く。
首筋をなぞる手つきが艶めかしくて僅かな電流でも流されたように背筋がゾクゾクする。

プルプルしながら悪魔の誘惑テクに慄くレイはその様がジェラルドの嗜虐心を刺激しているなど思いもしない。
要はどっちもどっち。
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