異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ

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久しぶりの家族※エイシオ視点

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 アユムを連れて、玉座の間の扉が開かれた。
 この国での王政は、もう終わったのだ。
 ロードリア家は領主ではあるが、王ではない。
 でも過去の王政時代のロードリア王、その頃のままの玉座。
 豪華絢爛で、歴史が渦巻く変わらぬ威厳の間。

 僕は斜め後ろにアユムを隠すようにして、頭を下げたまま『帰宅いたしました。お久しぶりです、父上』と言った。
 
「エイシオ」

 険しい顔の父上。
 何を怒鳴られるだろうか。

「……よく、帰った」

 細い声。
 僕が顔をあげると、随分痩せた父の顔に衝撃を受けた。

「父上……お身体の具合は」

「まぁ……歳には勝てん。村の危機の報告、ご苦労だった。すぐに救援を向かわせた事で村人全員を救うことができた」

 豪雨で通りすぎ、門番に伝えた村だ。
 皆が無事でよかった……。

「いえ、僕は報告だけです」

「いや、高台への避難を指示したのはお前だと聞いた。さすがエイシオ。我が息子だ」

「……父上、お褒め頂き光栄です」

「おかえりなさい、エイシオさん。ますます良い男に磨きがかかったわね」

「母上、お久しぶりでございます」

 相変わらず変わらない母上だ。
 もうそれなりの年齢だけど、このなかで一番派手な赤いドレスを着て大きな羽根と花の頭飾りを付けて……ザ・貴婦人。
 お元気そうでよかった。
 隣には下を向いたままのラミリアが、扇子で顔を隠して立っている。
 まぁ……顔向けはできないよな。

「実は道中で偶然に、ドレス・バーコックの者と会いまして」

「えぇ~! 聞いたわよ。まさに運命だったわねぇ」

「母上、ラミリアとのけっこ……」

「あなた! 場所を移動してティータイムを楽しみながらお話しましょうよ。せっかくの一家団欒なのよ」

 人の話を聞かないのも、相変わらず。

「一家団欒ではありませんよ、客人がいるようだ」

「フレイグルス兄さん」

 厳格な兄。
 幼い頃から頭脳明晰で規律に厳しい。地味目な上品なスーツだ。
 武芸は得意ではないので、身長は高いがスラリとした印象だ。
 ますます眉間のシワが濃くなったな。
 まだ僕を憎んでいるのか……。
 
「あ、あの、おれ……僕はお邪魔でしたら失礼いたします」

 後ろでアユムが言う。

「何を言う、お客人。気にすることはない、是非我らロードリア一族とお茶をどうぞ」

 フレイグルス兄さんの隣で笑うのは、ウルシュ兄さん。
 今日も軽薄そうな、笑みを浮かべている。
 輝く金髪の長髪はリボンで結ばれ、甘いマスク。スーツはピンク色に紫のグラデーション、ブーツは高いヒール。
 奇抜なスタイルはいつものこと。
 父上の横に立っていたウルシュ兄さんは、階段を降りて僕達の前に来た。

「異国の方かな? 私はウルシュ・ロードリア。二番目のお兄さんだよ」

「ウルシュ兄さん……! 彼に失礼ですよ」

「そうかい?」

「わ、私はアユムと申します……は、はじめまして」

 アユムがアユムの国でいう『おじぎ』をした。

「ほう、ミステリアスでセクシーな黒髪に、黒曜石のような瞳、桃色の唇。お嬢さんかと思ったらキュートな男性とはね」

 この兄は危険だ!
 僕がアユムを背後に隠すと、ウルシュ兄さんは舌なめずりをする。
 何を考えているんだ。
 僕のアユムに色目を使うつもりか……?

「ほほほ……異国の客人のお話も聞きたいですわ、さぁロン、お茶会の場へ皆を案内して!」

 母上が手を叩くと、家来達が一斉に動き出す。

 すると、父上の元に車椅子が用意された。
 獅子の紋章が掘られた一級品。

 だけど、もう歩くこともままならないのか、と僕はショックを受けた。

 
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