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家族対面の前に※アユム視点
しおりを挟む俺は旅の疲れもあって、ぐっすり眠ってしまった。
昼前に、エイシオさんに頬にキスをされて起きる。
いつの間にか、ザピクロス様も一緒に寝てたんだな。
執事のロンさんが、俺を少し見ただけだったのに、立派な洋服を届けてくれて……。
メイドさんも数名訪ねてきたけど、エイシオさんが断って俺の髪を整えてくれた。
「こ……これから、エイシオさんの御家族と……そして、ラミリアさんと……対面するのか……」
時間にすると昼過ぎの三時。
こ、婚約者としての挨拶をする場面ではないけど、あまりに態度の悪すぎる……遅刻なんじゃ!?
「お、お、俺……すごく印象が悪いですよね」
「ん? 嵐のなか夜中に辿り着いたんだ。当然だよ。家族に時間を指定したのは僕だしね」
エイシオさんは、まさに貴族! のようなフリルがついたシャツに刺繍があしらった青いジャケットを着ている。
めちゃくちゃかっこいいよ。本物の王子様だ! あぁ素敵だな。
俺のはもっと地味なんだけど、嫌味じゃなくて俺の性格を理解してくれたうえで選んでくれたものだってわかる。
シャツも縦筋のが入ってる程度で焦げ茶色のタキシード。
こんな上質なもの、初めて着た。
これもドレス・バーコックさんのものなのかな?
「ロンの見立てが悔しいな……よく似合いすぎてて……キュートだ」
そう言って瞳や頬にキスされる。
鏡の前だと恥ずかしい。
そうやってイチャイチャしてたのに、僕の肩にエイシオさんが顔を埋める。
「どうか……僕を嫌わないでほしいんだ」
「エイシオさん? どうしてそんな事を……」
「家族に会わせるのは、僕も少し怖いんだ」
「あ……」
俺も、逆だったらそうかもしれない。
俺の家族は別に悪くない……でも、あそこに混ざるのは苦手だった。
それを好きな人に見られるのは、エイシオさんに見られたら……って考えた時に俺は異世界で良かった、とすら思ったんだ。
……同じかな?
「御家族に会っても、エイシオさんはエイシオさん。関係ないです」
「アユム……愛してるよ」
「エイシオさん、お、俺もです」
俺はすぐ『愛してる』って言えないんだよな……。でも気持ちは一緒です。
「アラ……ザピクロス様、どうぞこの部屋でお待ちください」
今日も間に挟まっていたザピクロス様は、しっかり朝ご飯も食べたけどお腹空いた~とうるさい。
「えーつまらんじゃろ~~」
「肉三昧フルコース、赤ワイン付きのアフタヌーンティーを用意しました」
「ズッキュン!! 我、ここにおる~~! トウモロコシつけてね」
「はいはい……」
……ザピクロス様。
お肉の前では、チョロいアライグマのようだ……。
「チョロアラ……」
エイシオさんのつぶやきが聞こえた。
そんなわけで俺達は御家族が待つ王の間へ……歩き……歩き……
ドンドン豪華になっていく廊下を歩き……歩き……。
城、広っ!!
会社か学校かってくらい広い!!
やっと絢爛豪華な王の間に着いた。
エイシオさんが、帰還したからと盛り上がりの鼓笛隊なんかはやめてくれ、と兎に角地味に!と言ってたけど……。
「エイシオ、戻りました」
玉座にはヒゲを生やした……エイシオさんがおじいさんになったような厳格なお父さんと、綺羅びやかにスーツとドレスを着たお兄さんやお母さんが怒りや微笑み、興味を抱いて一斉に俺達を見た。
……華麗なるロードリア家……。
俺はもう逃げたくなった。
ラミリアさんも、ドレス姿で確かにそこにいた。
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