異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ

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黒い沼・寂しい温室※エイシオ視点

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 今日は採寸をダニーとシャンディが各部屋にまわる、との事だった。
 毒事件があったので、毒見係と共に部屋でそれぞれ朝食を食べる。
 シェフはとりあえず、無罪放免になったらしい。

「うわぁ! 美味しいですね! さすが本物のシェフ……」

 アユムが嬉しそうに朝ご飯のオムレツを食べている。
 それからまたスーツを着て身支度。
 すぐに父上のところへ行こうかと思ったが、急に元気を取り戻して朝から仕事をびっちりいれていて会えないと言われてしまう。
 採寸も終わってからの夕方にお茶でも……との返事だ。

 仕方ない……。
 少しだけ晴れ間が見えたので、また部屋でアユムと過ごし昼食をとった後に庭に出てみた。

「長雨で、花もしおれてしまっているかな……温室へ行ってみようか」

「温室ですか」

「あぁ、側室のソフィア様が花がお好きでね。綺麗な花を育てている」

 僕は少しの距離だけど、長雨で道が悪いだろうとアユムを馬に乗せた。
 
 アライグマも、もちろん一緒に着いてくる……。
 少しは、二人きりにさせようっていう配慮はないのか。
 
 ……あるわけないよなぁ……。

「え、僕が前に乗るんですか」

「そうだよ」

 アユムを僕の前に座らせて抱きしめるように、馬を歩かせる。
 今まで、こうやって欲しいと女性に何度も言われた事があったけど……アユムと一緒だと最高に幸せを感じるな。
 
「温室は、どんな花が咲いているかな? ソフィア様がいらっしゃれば、説明もしてもらえただろうに」

「ソフィア様にもお会いできるといいですね」

「う~ん、三泊ほどしてくる予定らしいから……」

 それまでには誤解を解いて、ロードリア家から出ると自分の立場をはっきりさせて旅に戻りたいところだ。
 綺麗に整備された庭を抜けて、少し行くとソフィア様の温室がある。

「エイシオさん……あれは?」

 東の方角に、少し暗い林が見える。

「ん? あぁ……あそこは沼があってね。潰してしまいたいと代々思っているんだけど……そういえば、父上の呪いは沼の黒精霊って……」

 父上には呪いの話はしていないが、ハンドマッサージに嫉妬した僕にアユムが説明してくれたのだ。

「あの沼じゃな。とっつぁんの呪いのもとだ」

 ザピクロス様が、言う。

「えっあの沼の……」

「そうだったんですか」
 
 驚いた……。父上の呪いの根源が、まさかこの沼だっただなんて。
 確かに埋め立てようとすると不幸が起きるというので、仕方なくそのままにしている沼だ。

「ザピクロス様、どうにかなりませんか」

「……ならんよ。沼はただ、そこに沼としているだけじゃ。何百年も、そこにいる。それで何をどういう権利でどうにかしろと言う? 勇者よ……人のおごりも大概にしろ」

「ぐ……失礼」

 こういう時だけ神らしいことを!!
 悔っしいぃいいいいいいいい!!
 くっそぉ~~~~!!
 
「人間が干渉しなければ、いいだけじゃ。あそこで呪いを吐くようなやつがおったんじゃろ」

「エイシオさんのお父さんの事を……」

「……まぁ、父上のような権力をもてば誰かしらに恨まれても仕方はない……」

「そんな……」

 アユムはショックを受けている。
 昨日から人の悪意や殺意を見ているもんな。
 正直、僕は慣れてしまっている部分がある。

 馬の上で僕はアユムを強く抱き締めた。
 やはり、此処に長居はしない方がいい。
 アユムにもう人のドロドロした面を見せたくない。

 温室に着いたが、僕が屋敷にいた頃とは違い花は少なかった。

「季節の問題かな……」

「でも、綺麗ですよ」

「うん、そうだね」

 アユムが言っているのは、多分雑草の花。
 小さくて可憐だけど、昔は球根や種から育てた花が咲き誇っていたのに……。

 天気もまた曇ってきたし、肌寒い。
 もう帰るか……。
 そう思った時。女性の影が。

「あの……話があるの……」

 ラミリアが頭からベールをかぶり、暗い顔をして僕達の前に現れた。

 

 
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