異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ

文字の大きさ
90 / 107

ラミリアさんとのお話※アユム視点

しおりを挟む
 
 温室にラミリアさんが現れた。

「ラミリア……?」

「ラミリアさん」

 ラミリアさん、すごく暗い。
 ベールを被って、顔は青白く憔悴している様子だ。
 あんなに自信たっぷりの美しい女性が……すごく小さく見える。

「は、話があるの」

 そうだよね、ラミリアさんが一番よくわかってる。
 エイシオさんとの婚約が嘘だって。

「まずアユムに話があるの」

「え? 俺?」

「アユムに?」

 俺? ちょっとびっくりしちゃった。

「……僕がいては駄目なのか……?」

「……席を外してもらえたら、嬉しいわ……」

「わかった。温室の外で待とう」

 え、緊張するな。
 ど、どうしよう……。
 エイシオさんは頷いて、ザピクロス様と一緒に出て行く。
 外から見守ってくれているから、大丈夫だよね。

 シーンとする温室。
 あ、チョウチョが一匹寂しく飛んでいる。

 ラミリアさんは、被っていたケープを外して顔を見せた。

 モフモフのミミが出てきたけど、垂れ下がってる。

 やっぱり顔は青白くて、目は腫れてる。
 前回会った時から、すごく痩せたようだった。
 
「本当はエイシオにもいてもらわないと、駄目なんだと思うけど……」

「お、俺でよければ……いくらでも話を聞きますよ」

 俺の言葉に、ラミリアさんは微笑んだ。

「貴方は本当に優しいわね……」

 そして瞳から、涙が溢れる。

「一体……どうしたんですか?」

「うっ……うう」

「ラミリアさん……」

「……うっうっ……み、湖で、貴方を襲ったのは私なの……」

「え……」

 ラミリアさんは両手で顔を覆った。

「貴方達を追っていたの。私……どうしても納得がいかないと思って……! 正反対の貴方達が、どうせうまくいくわけない! 嘘だって思って後を追っていたのよ」

 そうだったのか……。
 途中でエイシオさんが言ってた気配って、ラミリアさんか……。

「それなのに、貴方達二人は……本当に恋人同士のように幸せそうで……そして湖で、仲良く遊ぶ貴方達を見ていたら……心が真っ黒になっていったの」

 見られていたなんて、思わなかった。
 俺だって、もしも自分の好きな人があんな風に楽しくしているのを見たら……。

「貴方が一人でいる時に……私は……私は……」

 両手で顔を覆っていても、涙が手のひらから落ちていく。

「気付いたら、矢を打っていた……」

 そっか……あの攻撃をしたのは、ラミリアさんだったんだ……。

「私、自分が信じられなくて……怖くなって逃げてしまったの。自分の嫉妬で、人を傷つけようと殺そうとした事が恐ろしくて……!」

「……ラミリアさん……」

「ごめんなさい……アユム。私は許されない罪を犯したわ」

 きっと誰よりも強く輝いて自信のあった彼女が、初めて感じた屈辱だったのだろう。

 俺なんかがポッと現れなければエイシオさんは、ラミリアさんと結婚する未来だってあったのかもしれない。

 それを、こんな地味で何もいいとこもない、俺なんかに奪われたら……。
 人を傷つけることは許されない……でも……。

「大丈夫ですよ」

「アユム……」

「俺はなんにもされてませんよ。湖でのことなんか俺は知らないです」

「……アユム……矢が、あなたの力で燃えたけど……」

「ザピクロス様と波にさらわれかけた事はあったけど……アハハ」

 俺は今日も着せられたスーツから、ハンカチを取り出して渡した。

「俺も……あれだけ前日に話をしていて、騙すような事をして……すみませんでした」

 そう、俺だって不誠実だった。

 何も言わずに逃げ出して、自分だけ幸せになって……。

 俺だって、ラミリアさんを沢山傷つけたんだ。

 人を真剣に好きになる事、そして愛される事なんかあり得ないと思ってたし人と向き合う事から逃げていた。

 もしも今、エイシオさんに拒絶されて彼が他の人と好き合うのを目の前で見たら……俺も、ラミリアさんのようにどす黒い感情を抱くかもしれない。

「うう……アユム……私こそ、ごめんなさい。本当に本当に……もう二度とあんな過ちは犯さないわ……」

 彼女はもう罰を十分に受けている、って俺は思った。

「ラミリアさん、あの湖でのことは……何もなかったけど、二人だけの秘密です」

「……アユム……アユム……あぁ、ありがとう……」

 ラミリアさんがよろけて倒れそうになるのを支えたら、エイシオさんが温室に入ってきた。

 これは二人だけの秘密にしよう。
 きっと彼女はもう二度とあんな事はしない、俺は信じる。

 それからラミリアさんがエイシオさんに婚約についての話を始めた。

 
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

【8話完結】勇者の「便利な恋人」を辞めます。~世界を救うより、自分の幸せを守ることにしました~

キノア9g
BL
「君は便利だ」と笑った勇者を捨てたら、彼は全てを失い、私は伝説の魔導師へ。 あらすじ 勇者パーティーの万能魔術師・エリアスには、秘密があった。 それは、勇者ガウルの恋人でありながら、家事・雑用・魔力供給係として「便利な道具」のように扱われていること。 「お前は後ろで魔法撃ってるだけで楽だよな」 「俺のコンディション管理がお前の役目だろ?」 無神経な言葉と、徹夜で装備を直し自らの生命力を削って結界を維持する日々に疲れ果てたエリアスは、ある日ついに愛想を尽かして書き置きを残す。 『辞めます』 エリアスが去った翌日から、勇者パーティーは地獄に落ちた。 不味い飯、腐るアイテム、機能しない防御。 一方、エリアスは隣国の公爵に見初められ、国宝級の魔導師として華麗に転身し、正当な評価と敬意を与えられていた。 これは、自分の価値に気づいた受けが幸せになり、全てを失った攻めがプライドも聖剣も捨てて「狂犬」のような執着を見せるまでの、再構築の物語。 【勇者×魔導師/クズ勇者の転落劇】 ※攻めへのざまぁ要素(曇らせ)がメインの作品です。 ※糖度低め/精神的充足度高め ※最後の最後に、攻めは受けの忠実な「番犬」になります。 全8話。

処理中です...