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ラミリアさんとのお話※アユム視点
しおりを挟む温室にラミリアさんが現れた。
「ラミリア……?」
「ラミリアさん」
ラミリアさん、すごく暗い。
ベールを被って、顔は青白く憔悴している様子だ。
あんなに自信たっぷりの美しい女性が……すごく小さく見える。
「は、話があるの」
そうだよね、ラミリアさんが一番よくわかってる。
エイシオさんとの婚約が嘘だって。
「まずアユムに話があるの」
「え? 俺?」
「アユムに?」
俺? ちょっとびっくりしちゃった。
「……僕がいては駄目なのか……?」
「……席を外してもらえたら、嬉しいわ……」
「わかった。温室の外で待とう」
え、緊張するな。
ど、どうしよう……。
エイシオさんは頷いて、ザピクロス様と一緒に出て行く。
外から見守ってくれているから、大丈夫だよね。
シーンとする温室。
あ、チョウチョが一匹寂しく飛んでいる。
ラミリアさんは、被っていたケープを外して顔を見せた。
モフモフのミミが出てきたけど、垂れ下がってる。
やっぱり顔は青白くて、目は腫れてる。
前回会った時から、すごく痩せたようだった。
「本当はエイシオにもいてもらわないと、駄目なんだと思うけど……」
「お、俺でよければ……いくらでも話を聞きますよ」
俺の言葉に、ラミリアさんは微笑んだ。
「貴方は本当に優しいわね……」
そして瞳から、涙が溢れる。
「一体……どうしたんですか?」
「うっ……うう」
「ラミリアさん……」
「……うっうっ……み、湖で、貴方を襲ったのは私なの……」
「え……」
ラミリアさんは両手で顔を覆った。
「貴方達を追っていたの。私……どうしても納得がいかないと思って……! 正反対の貴方達が、どうせうまくいくわけない! 嘘だって思って後を追っていたのよ」
そうだったのか……。
途中でエイシオさんが言ってた気配って、ラミリアさんか……。
「それなのに、貴方達二人は……本当に恋人同士のように幸せそうで……そして湖で、仲良く遊ぶ貴方達を見ていたら……心が真っ黒になっていったの」
見られていたなんて、思わなかった。
俺だって、もしも自分の好きな人があんな風に楽しくしているのを見たら……。
「貴方が一人でいる時に……私は……私は……」
両手で顔を覆っていても、涙が手のひらから落ちていく。
「気付いたら、矢を打っていた……」
そっか……あの攻撃をしたのは、ラミリアさんだったんだ……。
「私、自分が信じられなくて……怖くなって逃げてしまったの。自分の嫉妬で、人を傷つけようと殺そうとした事が恐ろしくて……!」
「……ラミリアさん……」
「ごめんなさい……アユム。私は許されない罪を犯したわ」
きっと誰よりも強く輝いて自信のあった彼女が、初めて感じた屈辱だったのだろう。
俺なんかがポッと現れなければエイシオさんは、ラミリアさんと結婚する未来だってあったのかもしれない。
それを、こんな地味で何もいいとこもない、俺なんかに奪われたら……。
人を傷つけることは許されない……でも……。
「大丈夫ですよ」
「アユム……」
「俺はなんにもされてませんよ。湖でのことなんか俺は知らないです」
「……アユム……矢が、あなたの力で燃えたけど……」
「ザピクロス様と波にさらわれかけた事はあったけど……アハハ」
俺は今日も着せられたスーツから、ハンカチを取り出して渡した。
「俺も……あれだけ前日に話をしていて、騙すような事をして……すみませんでした」
そう、俺だって不誠実だった。
何も言わずに逃げ出して、自分だけ幸せになって……。
俺だって、ラミリアさんを沢山傷つけたんだ。
人を真剣に好きになる事、そして愛される事なんかあり得ないと思ってたし人と向き合う事から逃げていた。
もしも今、エイシオさんに拒絶されて彼が他の人と好き合うのを目の前で見たら……俺も、ラミリアさんのようにどす黒い感情を抱くかもしれない。
「うう……アユム……私こそ、ごめんなさい。本当に本当に……もう二度とあんな過ちは犯さないわ……」
彼女はもう罰を十分に受けている、って俺は思った。
「ラミリアさん、あの湖でのことは……何もなかったけど、二人だけの秘密です」
「……アユム……アユム……あぁ、ありがとう……」
ラミリアさんがよろけて倒れそうになるのを支えたら、エイシオさんが温室に入ってきた。
これは二人だけの秘密にしよう。
きっと彼女はもう二度とあんな事はしない、俺は信じる。
それからラミリアさんがエイシオさんに婚約についての話を始めた。
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