91 / 107
ラミリアと僕との会話※エイシオ視点
しおりを挟むアユムとラミリア……。
一体何を話しているのだろう?
「おくちが、さびしーーのっ」
「はいはい!」
うるさいアライグマの口に、キャラメルを放り込む。
こっそり様子を伺っていたが、ラミリアがアユムに抱きついたのかと思って、慌てて温室に入ってしまった。
そしてラミリアが僕に話し始める……。
「エイシオ……婚約の事なら大丈夫」
「え?」
「朝に婚約は破棄するって伝えてきたから」
「ラミリア……」
僕はラミリアの手をとって、温室にある木のソファに座らせた。
彼女はアユムから受け取ったハンカチで、涙を拭いている。
あぁ、強く美しい女神のような彼女が、すっかり小さく見える。
「……動揺する事があってつい、おば様に……バーバラ様に遠隔通話魔法で、泣きながら話をしてしまったの。私がエイシオに婚約破棄されたって伝えて……じゃあ城に来なさいと言われて……おばさまがどうにかなるって」
ラミリアくらいになると、遠隔通話術もできるものな。
「はぁ……母上の暴走か」
母上も、なんでも押し通せばどうにかなるという考えの女性だ。
自分が政略結婚でも父上と愛し合う仲になったものだから、結婚すればなんとかなる主義者なのは知ってたけど……。
「でも、私も甘えてしまったの。おじ様もご病気で弱ってるから孫を見せてあげてほしいと……発表してしまえば大丈夫って色々言われてるうちに……」
ラミリアの獣耳は、下がりっぱなし。
多分僕の耳も、下がりっぱなし。
はぁ……とお互いに、ため息をついた。
「ごめんなさい……まさか、あなた達が帰ってくると思ってなかったのもあって……ずるずると……」
「いや、僕も悪かったと思ってる。随分長い間、僕は君から逃げ回っていた。家も逃げればどうにかなると……思っていた」
逃げ回って……死んでもいいと……いや、死ぬつもりだった。
自分の無責任さが、招いた事だったんだ。
「婚約破棄をしてくれたんだね、ラミリア」
「えぇ……朝一番にバーコックの二人が来たけど結婚衣装の採寸だなんて、私にはできなかった……そのままバーバラ様のもとへ行ったの」
「そうか……僕達のところには、何も知らせはこなかったな。はぁ破天荒な母上のことだ。何か策でも考えているのか兄弟に聞きにでも行ったのか……とりあえず屋敷へ戻ろう」
「エイシオ……」
「うん?」
「……私は本心では、貴方を今でも愛している。ずっと……ずっと好きだったわ」
心が痛む。
あぁ、僕もアユムという愛しい人が現れなければ、母上の決めたこの縁談を受け入れていたかもしれない。
憎いわけじゃない、立派な女性だと尊敬している。
「ありがとう……ラミリア。君のような素晴らしい女性にそんな風に言ってもらえて光栄に思う。だけど……」
「えぇ、わかっている。アユムも優しい素晴らしい人ね」
「……あぁ素晴らしい人だ、世界一の僕の恋人だよ」
ごめんよラミリア……。
でもずっとすれ違っていた僕達二人の想いが、やっと通じ合った気がした。
「……私もアユムが好きになりそうよ」
「えっ!?」
「ふふ……友人としてね」
僕は早く母上の元へ行こうと、アユムとラミリアを馬に乗せた。
ザピクロス様は、ラミリアの胸の間に入り込もうとしてテンドルニオンの指輪からお仕置きをされる。
ふふ、たまには痛い目を見るがいい……と悪魔のエイシオがニヤリとしてしまった。
ぐちゃぐちゃの土を僕は歩き、馬を引いていると屋敷へ大急ぎで向かう馬車が見える。
「あの馬車は……?」
うちの紋章が入っている。
あれは一族……家族しか使えない紋章。
こんな時間に誰だ?
「誰かしら? そういえば朝の採寸、ランジェリーだけは注文したかったから頼んだけれど、とてつもなく下手くそだったのよ」
「え? シャンディさん達がですか?」
「えぇ。あんなに下手で本当にバーコックで修行しているのかしら?」
なんだか胸騒ぎがする。
僕は駆け足で馬を引き、屋敷へ戻った。
48
あなたにおすすめの小説
異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます
野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。
得た職は冒険者ギルドの職員だった。
金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。
マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。
夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。
以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。
【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。
篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。
2026/01/09 加筆修正終了
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい
夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが……
◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。
◆お友達の花々緒さんが、表紙絵描いて下さりました。可愛いニャリスと、悩ましげなラクロア様。
◆これもいつか続きを書きたいです、猫の日にちょっとだけ続きを書いたのだけど、また直して投稿します。
「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました
湖町はの
BL
バスの事故で亡くなった高校生、赤谷蓮。
蓮は自らの理想を詰め込んだ“追放もの“の自作小説『勇者パーティーから追放された俺はチートスキル【皇帝】で全てを手に入れる〜後悔してももう遅い〜』の世界に転生していた。
だが、蓮が転生したのは自分の名前を付けた“隠れチート主人公“グレンではなく、グレンを追放する“無能勇者“ベルンハルト。
しかもなぜかグレンがベルンハルトに執着していて……。
「好きです。命に変えても貴方を守ります。だから、これから先の未来も、ずっと貴方の傍にいさせて」
――オレが書いてたのはBLじゃないんですけど⁈
__________
追放ものチート主人公×当て馬勇者のラブコメ
一部暗いシーンがありますが基本的には頭ゆるゆる
(主人公たちの倫理観もけっこうゆるゆるです)
※R成分薄めです
__________
小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にも掲載中です
o,+:。☆.*・+。
お気に入り、ハート、エール、コメントとても嬉しいです\( ´ω` )/
ありがとうございます!!
BL大賞ありがとうございましたm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる