異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ

文字の大きさ
88 / 107

夕飯のあとに※エイシオ視点

しおりを挟む
「ごめんねアユム、婚約破棄の話を何度もしようと思ってたんだけど……」

 僕は自室のベッドで、アユムを抱きしめる。
 
 我ながら情けない。
 アユムのおかげで、とても楽しい夕飯だった。

 僕にとって、両親とあんな近くで笑いながら食べるご飯なんて初めてで……。

 子どもの頃から威厳たっぷりの父だった。
 家族での夕飯は成績の話や、政治の話や、武芸の話をして、緊張しながら行儀よく食べて終わり。
 
 それが、みんなで鍋をつついて笑い合うなんて夢のようだった。

 言い訳の理由にはならないけど、あの両親の笑顔を曇らせるような話題ができなかった。

「俺に謝る必要なんてないですよ。部屋でしゃぶしゃぶなんかさせちゃって騒いでしまって俺の方こそすみませんでした」

「ものすごく楽しかったよ。感謝している。本当にありがとう」

 両親との食事に、こんな思い出ができるなんて思っていなかった。

 もう二度と、会わなくてもいいと思っていたのに……。
 僕は人生で失いかけていたものを、アユムに沢山プレゼントしてもらっている。

「明日には必ず、話をするよ」

「無理しないでくださいね」

「あぁ……大丈夫」

「う~~めっちゃ喰った喰った……げっぷげっぷ!」

 アライグマのげっぷ、ニンニクくっさ!

「ザピクロス様! やめてくださいよ! ……あっちのソファで寝てください」

「いやじゃも~ん、転移者殿~ぬくぬく」

 くそっ……またアユムの胸元に居座りやがったぁ……!
 さっさと、テンドルニオン様の神殿に行かないと……。

「明日は採寸なんですよね」
 
「我も、スーツ作って~~え?」

「ふふ、ザピクロス様がスーツ……可愛いですね」

「アライグマ用なんて作れないでしょう……。どうせなら、アユムと僕の結婚式のスーツを作ってほしいものだよ」

「ええっ」

「アユムは純白のスーツ……似合うだろうな」

 我ながらいい考えだ。
 薄いピンクなんかもいいかも。

「いやいや! 白なんて絶対無理ですよ! エイシオさんなら絶対似合うと思うけど」

「明日はアユムも採寸してもらおう。家は関係なく二人で注文しよう」

「ええ~」

「僕からのプレゼントだよ」

 可愛いアユム。
 僕の命を、エイシオ・ロードリアの命を狙ってる者よ。
 僕はもうロードリア家のエイシオではなく、アユムを愛する一人の男で生きていきたいんだ。
 それをわかってほしい。


 
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。  2026/01/09 加筆修正終了

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます

野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。 得た職は冒険者ギルドの職員だった。 金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。 マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。 夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。 以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。

【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい

夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが…… ◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。 ◆お友達の花々緒さんが、表紙絵描いて下さりました。可愛いニャリスと、悩ましげなラクロア様。 ◆これもいつか続きを書きたいです、猫の日にちょっとだけ続きを書いたのだけど、また直して投稿します。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

処理中です...