ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

七転び八起き

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第一章 再会

第17話

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 それから何日か経ったある日——

 私は駅前をウロウロしていた。
 また、無くしものをした。
 財布に続いて今度はスマホ。
 なんで私はこんなにドジなんだ……。

 途方に暮れて交番に行こうとした。

 その時——

 スッと目の前に私のスマホが差し出された。
 見上げると、すごい美人の女の人が立っていた。
 上品で、洗練されていて、まるで雑誌から出てきたような人。
 年齢は20代後半くらいだろうか。
 化粧も服装も完璧で、私とは全然違う世界の人みたい。

「これ、お探しのものですか?」

 その声も、とても上品だった。
 お嬢様みたいな、丁寧な話し方。

「そ、そうです! ありがとうございます!」

 思わず深く頭を下げた。

 その人は、穏やかに微笑んでいた。

「あなた、可愛らしい子ね」

「え、いや、ドジなんです、はい……」

 その時、その人の表情が一瞬曇ったような気がした。
 よくわからなくて、会釈を返して、そのまま去った。

 * * *

 明日は愛美に誘われて、テーマパークに行く約束をしていた。
 夏雄先生に失恋した悲しみを発散させる為に。
 愛美には本当の事をちゃんと話してないけど、似た者同士だからこれでよし!

 ジェットコースターで全部叫び飛ばそう!
 今日はとにかく、全力で楽しもう!
 今だけは何もかも忘れよう……!

 ——そして当日。

 絶好のテーマパーク日和。

 帽子をかぶって、動きやすい服装。
 愛美と駅で待ち合わせて、くだらない話でゲラゲラ笑った。

「昨日、バイトで変なお客さんが来てさー」
「えー、どんな人?」

 そんな、他愛もない話。

 到着してすぐにキャラクターのヘアバンドとサングラスを買って、写真を撮りまくる。
 ジェットコースターでも大騒ぎして、大笑いして最高の気分だった。
 久しぶりに、心から笑えた。

 でもはしゃぎすぎて疲れてしまって、二人で日陰に座って涼んでいた。

「あー、楽しかった!」
「でもちょっと疲れたね」

 愛美も満足そうな顔をしている。

「白乃もなんかあったの?」
「別にー」

 もう考えたくない。
 私はちゃんと先生に気持ちを伝えられた。
 それで十分。

「なんか喉乾いたー!腹減ったー!」

 愛美が立ち上がった。

「ポップコーン食べたい!」

 私も続いて立ち上がり、二人でぶらぶら歩き出す。
 園内は賑やかで、家族連れやカップルがたくさんいる。
 みんな、楽しそう。

 一瞬、心がズキっと痛くなった気がした。
 これはきっと後遺症。

 ——その時。

 目の前に、夏雄先生がいた。

 え……。
 なんでここに?

 どうしていつも忘れようとしてるのに、先生に会ってしまうの?

 時が止まった気がした。

 我に帰って周りを見渡した時、先生の隣には、この前スマホを拾ってくれたあの女性がいた。
 もしかして、この人が先生の婚約者……?

「あ、あなた、この前の……」

「えーと、その節はありがとうございました…」

 ——気まずい!

 思わず目線を逸らしてしまった。

 その時、夏雄先生が私を見て、凍りついたような顔をした。

「え、二人……知り合いだったの?」

 先生が動揺している。
 こんな姿、初めて見た。

 愛美は……建物の影に隠れてる。
 私を置いてくなー!

「この前、スマホを拾ってもらって……」

 先生は呆れたように言った。

「お前、今度はスマホかよ……」
「はい……すみません」

 そのやりとりを、彼女はじっと見ていた。

「仲がいいんですね」

 その人はふふっと笑った。

 あ、バレたらまずい……!

「高校の時の先生なんです!とても仲良くさせてもらってました!尊敬する先生です!」

 ——裏では、全力であの関係を否定してた。

「夏雄さんの教え子さんなんですね」

 彼女が先生の方を見る。
 先生は目を逸らしながら、「はい……」とだけ答えた。

 演技してよ、先生!
 心の中で思わずツッコんでしまう。

「あなたは誰かと来てるの?彼氏さんとか?」

 その瞬間、先生の眉間に皺が寄った。
 なにこの拷問。
 一刻も早く立ち去りたい。

「違います……女友達です」

 ——もう無理!

「すみません!友達待たせてるんでー!」

 私は全力でその場を離れた。

「あの子、魅力的な生徒さんね」

 彼女がつぶやいた。

 そこに、静寂が流れた。
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