アオハルのタクト

碧野葉菜

文字の大きさ
45 / 70
受難曲(パッション)

16

しおりを挟む
 自室のドアを開けて、ふうと一息つく間もなく、次に訪れたんは強烈なバイブ音。出どころは、学習机の上に放置していたスマホ。硬い材質のせいで、ブーッブーッと耳障りな振動を繰り返している。
 どうせ、また優希やろう。
 発信者を予想しながら部屋に入り、アップライトピアノに楽譜を置く。
 通話アプリの返事をしてへんせいか、この電話に出んかったら、近いうちに家まで押しかけてくるかもしれん。かといって今すぐ出る気にもなれず、どうしようか考えているうちに振動が収まった。
 盛大にため息をつきながら、重い手をスマホに伸ばす。嫌なことは先に済ませといた方がええか……そう思いながら、画面を覗いた瞬間、目ん玉を落っことしそうになった。
 しばらく固まった後、ゴシゴシ瞼を擦り、再び目を見開く。通話アプリ経由の着信履歴、そこに記載された小さな文字を何度も読み返した。
 どうしようと思う前に、指が勝手に動く。出てきた受話器のマークを押して、スマホを耳に当てた。気が変わらんうちに早く、俺の本能がそうさせたんかもしれん。
 高鳴る胸を抱えながら、繰り返されるコール音を聞く。六回目を過ぎたあたりで、途切れたコール音に体を固くした。

「はーい、もしもーし」
「あっ、もひ、もし……」

 通話口から聞こえる落ち着いた声に、ドキッとして思わず噛んでもうた。するとすかさず弱みを握った彼女が、スマホの向こうで鼻で笑った。
 
「電話くらいで興奮して、キモいんだけど」
「なっ、べ、別に興奮してへんし!」

 ついムキになって言い返しながらも、自然な会話の流れに安堵する。「なにか用?」なんて言われんところを見ると、間違い電話ではなさそうや。着信履歴の名前を見た時は、俺の目がおかしくなったんかと思ったけど。それくらい春歌から電話をかけてくるんは珍しい。通話アプリのメッセージですら、三回に一回返ってくればええ方やのに。

「ど、どうしたん、なんか、用?」

 なにを話してええかわからず、ぎこちん質問をする。自分からかける時はここまで緊張せんのに、心の準備って大事やと思う。

「八月十一日、空いてる?」

 藪から棒に言われて、眉を顰め、首を傾げる。春歌が提示した月日を、頭で想像したカレンダーで追いかける。
 なにか予定があった気がする。そうや、その日は俺の――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

カオルとカオリ

廣瀬純七
青春
一つの体に男女の双子の魂が混在する高校生の中田薫と中田香織の意外と壮大な話です。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】『80年を超越した恋~令和の世で再会した元特攻隊員の自衛官と元女子挺身隊の祖母を持つ女の子のシンクロニシティラブストーリー』

M‐赤井翼
現代文学
赤井です。今回は「恋愛小説」です(笑)。 舞台は令和7年と昭和20年の陸軍航空隊の特攻部隊の宿舎「赤糸旅館」です。 80年の時を経て2つの恋愛を描いていきます。 「特攻隊」という「難しい題材」を扱いますので、かなり真面目に資料集めをして制作しました。 「第20振武隊」という実在する部隊が出てきますが、基本的に事実に基づいた背景を活かした「フィクション」作品と思ってお読みください。 日本を護ってくれた「先人」に尊敬の念をもって書きましたので、ほとんどおふざけは有りません。 過去、一番真面目に書いた作品となりました。 ラストは結構ややこしいので前半からの「フラグ」を拾いながら読んでいただくと楽しんでもらえると思います。 全39チャプターですので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。 それでは「よろひこー」! (⋈◍>◡<◍)。✧💖 追伸 まあ、堅苦しく読んで下さいとは言いませんがいつもと違って、ちょっと気持ちを引き締めて読んでもらいたいです。合掌。 (。-人-。)

処理中です...