忠犬男子が懐きすぎて異世界までついてきた「件」

竜弥

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第2章:てんぱい異世界の足跡

第23話 天貴、マナを知る

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 次の朝、なんかやけにスッキリ目が覚めた。

「え!?あれ?なんで……朝!?」

 昨日、アルカノアの空をバーンと晴らして、空に向かって叫んで青春した直後だ。

「おい、倒れたぞ!」
「て、天貴!?」

 急に力が抜けてその場にヘタれこんで…そこまでは覚えてる。その後俺は、コンバインさんにお姫様抱っこ(記憶あいまい)されて、そのままベッドに輸送されたらしい。昨日の昼からだから…半日以上の爆睡かよ!?むしろそっちにビビる。

「でも。何かがみなぎってる気がする。多分!」

 初めての魔力切れを体験して、俺も正式に異世界の仲間入りって感じか?それにしても倒れる寸前まで本人が気づいてないあたり、我ながら情けない。

「一気に消費したってとこか…」

 スカイリンクは当然、魔力マナを使う。走ったら体力減るように、アストラを使えばマナが減る。

 「つまり、昨日は出血多量ならぬ、出マナ多量で強制シャットダウンってわけか」

 スタミナの上限は努力で鍛えられるけど、マナの上限って伸ばせるのか?この世界の当たり前は、まだ俺には謎だらけだ。ベッドから立ち上がり窓の外を見ると、上り始めたアカボシが畑をじんわりオレンジに染めていた。

「よし、今日も晴れそうだ!」

 いつものツナギに着替えて部屋を出ると、部屋のすぐ横の足元に赤いスープとパンが。

「誰かが俺の飯、置いといてくれたのか?」

 すると、新しいスープとパンをお盆に乗せたアリスがそ~っと階段を上がってきていた。

「アリス、おはよ!」
「きゃっ!」

 おっとっと!とバランスを崩しかけて、なんとか持ちこたえるアリスに、少し慌てる俺。

「もう!脅かさないでよ!天貴ってば!」
「お、おぅ」

 **********

 スープはどうやら俺用のマナ回復セットだったらしい。

「うまっ!なぁ、このスープでどれくらいのマナが回復するんだ?」
「どのくらいって言われると、うーん個人差としか言えないかなぁ」

 そうよね?うんうん、と一人で頷くアリスに続けて質問する。

「じゃあ、これ飲んで回復できるマナに上限ってあるのか?」
「上限と言えばそうね。例えばそのスープがぶ飲みしてもマナが無尽蔵に増えるって事はないわ」

 なるほど、そりゃそうだろうな。もしそうなら、玄太はマナトマソース食い尽くして大魔道士にでもなっちまう。

「じゃあさ、最大マナというか、マナの器をデカくするっていう考え方はあるのか?」

 アリスはう~んと首をひねってから、ゆっくりと答えてくれた。

「増やしたいって発想は分かるけど、単純な話じゃないのよ」

 俺は黙ってうんうんと頷き、アリスの説明を聞く。

「例えば、火のアストラ持ちの人がいるとするでしょ?」
「ふむふむ」

「最初、彼女は火の玉しか出せません」
「その子、女なんだ」

「その時の彼女の…サリィの最大マナは10だったとする!」
「あ、その子サリィて言うんだ」

「でも、サリィは頑張ってアストラの力を伸ばしました!」
「ひゅ~!サリィ、やるぅ!」

 ちょっと、真面目に聞いてる?と、ジト目で俺をみるアリス。いや、どっちのせいだよ!

「コホン。で、ついにサリィは炎の雨を使えるようになりました!」
「…サリィ、怖え~よ」

「するとどうでしょう!サリィの最大マナは30に上がっていました!ってそんな感じよ?」

 なるほど、となると俺のパターンは、サリィが初期にいきなりデカい火の玉を出しちまって一気に枯渇した感じか?…じゃあ、俺にとっての炎の雨って一体、なんだ?

「あと!年齢を重ねる事でも伸びるわね!衰える事は滅多にないから、そこが体力とはまた少し違うところ!」
「ほぉ、サリィがばあちゃんになる頃には彼女なりの最強って事か」

 まぁ、加齢の件はそれはそれとして。まず俺は一気に消費しないように、効果範囲を調整できるようにならないとダメだな。

「ま!おいそれと今日も晴れろ~って使えねえって事だな!」
「そうね!基本的には自然に任せて、必要な時は、よろしくね!水撒き担当さん!」

「あ!それひでー!」

 俺はスプリンクラーかよ!っとツッコみたくなったが、通じないのでパスせざるをえない。

「じゃ天貴、今日はゆっくりしてね」

 そういって笑って食器を下げてくれるアリスを見送ってベッドにゴロンと横になる。そういやアリス、いつの間にか天貴って呼んでたな。いや、俺も勝手にアリスって呼んでるから別にいいんだけど。人が人を呼ぶその名前って、お互いの関係の距離によって変わっていくんだよな。心の距離が近づけば、その分呼び名も。

 天貴先輩が、てんぱいになったように。

「ま、なんか認めてくれたって事かな!」

 そうだろ?玄太!
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