【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中

文字の大きさ
39 / 59

第39話 岸田さんの家

しおりを挟む
「こ、恋人っ? 俺が、岸田さんの恋人になるのっ? えっ?」
『やっぱり勘違いしてますよね。恋人になるといってもあくまで一時的なものです。少しの間だけ恋人のフリをしてほしいんです』
「あ、あー、そう。恋人のフリね……なあんだ」
勘違いさせるような言い方をしたのは岸田さんの方だと思うが……。

『どうですか? 引き受けてくれますか?』
「え、いやぁ……」
『やっぱり駄目ですよね』
「あー、いやそうじゃなくてっ。ちょっといまいち意味がよくわからなくて。理由を話してくれないかな? それから判断するよ」
『そうですか。わかりました。では電話でというのもあれなので、直接会って話します。今から出られますか?』
電話越しにそう訊いてくる岸田さん。

おそらくだが、どうせ俺とは違って無表情な顔で淡々と話しているのだろうな。
そんな様子が目に浮かぶ。
それにひきかえ、俺はというと告白されたのかと思い、少しドキドキしているというのにな。
今鏡を見たら、きっとおかしな表情をした自分の顔を拝めるに違いない。

「まあ、大丈夫だけど」
平静を装いつつ返すと、
『では、今から送る住所に来てください』
「あ、ああ。わかった」
『それでは、失礼します』
岸田さんはそう言って電話を切った。

「うーん……なんなんだ一体?」

とりあえず、どっか遊びに行くのはまた今度だな。
俺は身支度を整えると、自分の部屋を出た。


◆ ◆ ◆


「ここだよな?」

俺は岸田さんに教えられた住所までやってきていた。
そこは普通の住宅街の一角で、俺の目の前にはそこそこ立派な二階建ての一軒家がある。
それを見上げここでいいのかと思っていたところ、

「あ、木崎さん。どうも」
家の二階の窓が開き、そこから顔を出した岸田さんが声を降らせてきた。

「岸田さん。ここってもしかして岸田さんの家?」
「そうです。家にはわたししかいないので勝手に上がってきてください」
そう言うなり岸田さんは顔を引っ込めてしまう。
うーん、相変わらずつかみどころのない人だ。

俺は若干緊張しつつ、「お邪魔しまーす」と家に上がり込む。
どうやら家の中には本当に岸田さんしかいないようで、誰の返事も返ってはこない。
俺は視界に入った階段を上り二階へと向かった。

すると、
「木崎さん、いらっしゃいませ。わたしの部屋はこっちです。どうぞ」
と部屋の前で出迎えてくれる岸田さん。
そして俺を部屋に通すと、
「ちょっと待っててください。今飲み物を持ってきます」
そう言って部屋をあとにした。
お客に対するそれなりのもてなしは出来るらしい。

俺はなんとはなしに岸田さんの部屋の中を見回した。
若い女性の部屋に入るのは初めてだったので、新鮮な気分である。
しかし、相手は岸田さんだ。
やはり若い女性の部屋として思い描いていたものとは少々異なり、ぬいぐるみやDVD、男性アイドルのポスターといったものは一切見当たらなかった。
その代わりといってはなんだが、部屋のいたるところになぜかお札のようなものが貼りつけられていた。
……不気味だ。

若い女性に対する幻想を打ち砕かれ、やや肩を落としているとそこへ岸田さんが戻ってきた。
手にはペットボトルに入った炭酸飲料を二つ持っている。
それを俺に差し出し、
「はい、どうぞ」
すました顔で言う岸田さん。

「あ、うん、ありがと……」
すると俺の表情を見て何か思うところがあったのか、
「? 木崎さん、もしかして炭酸飲料苦手ですか?」
と訊ねてきた。

「いや、大丈夫だけど」
「そうですか。よかったです」
つぶやき、そして俺の正面に座る岸田さん。
俺も岸田さんにならって床に腰を下ろした。

「勝手に入ってきちゃったけどよかったの? 家の人は留守?」
訊いてみたところ、
「留守というか、この家はわたしの家なので。住んでいるのはわたしだけです」
との返答が。

「え? どういうこと? この家ってまさか、岸田さんのものなの?」
「そうですよ。わたしが買った家です」
岸田さんはさも当たり前のように淡々と口にする。

「マジで? ……すごいね」
「そうですか? ダンジョンを所有していれば割と普通だと思いますけど」
「あ、そうなんだ。へー」
俺もダンジョンを所有しているが、自分名義の家など持っていないぞ。

「……」
「……」

俺が何か話さないと沈黙がまた訪れそうだったので、俺は気になっていたことを訊いてみた。

「あ、そういえばさ、使い魔の卵どうなった? どんなモンスターが生まれたか見せてくれないかな」
「あれですか。すみません、あの使い魔の卵は姪っ子にあげました」
「えっ? 姪っ子? にあげたの?」
「はい」
岸田さんは平然とうなずく。

「でも、岸田さん欲しがってたよね。あの使い魔の卵」
「はい。でも姪っ子がどうしても欲しいと。くれないと絶交すると言ったのであげました」
「あー、そう。いや別に俺に断ることではないから全然いいんだけどね。うん」

何を考えているのか、やはりわからない人だ、岸田さんは。
これ以上岸田さんと一緒にいると、岸田さんのペースにはまってしまい疲れそうだ。
そう思い、俺は本題に入ることにした。

「えっと、で、俺に恋人のフリをしてほしいっていうのはどういうことなのか、説明してくれる?」
「はい」
こくりと首肯した岸田さんは、俺の目をじっとみつめながらこう言った。

「実はわたし、今ストーカーされているみたいなんです」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
クロード・ディスタンスは最強の魔法使い。しかしある日勇者パーティーを追放されてしまう。 勇者パーティーの一員として魔王退治をしてくると大口叩いて故郷を出てきた手前帰ることも出来ない俺は自分のことを誰も知らない辺境の地でひっそりと生きていくことを決めたのだった。

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

処理中です...