婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる

kouta

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あの愛をもう一度

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 ノアとアルフレッドは二人きりで城の中庭を歩く。ここは、アイリーンのお気に入りの茶会の場でもあり、幼い頃はよくノアとアルフレッドが遊んでいた場所でもあった。
 ノアはあの頃を懐かしく思いながら、もう婚約者ではない男の隣を歩く。随分背が高くなり、大きくなった。でも、どこか憂いを帯びた横顔は長年一緒に連れ添ったノアも初めて見る顔だった。

 アルフレッドの足が止まったのは、噴水の前の広場だった。

「覚えているか? よくここで遊んだよな」
「そうですね。私が初めて魔法で土人形を出したのは、この噴水の前でした」
「あの時口止めしてやったのに、ローランにチクりやがって」
「陛下には言っていないですよ。それに婚約中はちゃんと約束を守ってお父様にも内緒にしてました」
「……」

それを聞くと、アルフレッドは暫し口を閉ざしたが、次にノアを方を振り返った時には決意を固めた顔をしていた。

「ノア、悪かった」
「……それは何に対しての謝罪ですか?」
「リリスに浮気したことと婚約を破棄したことだ」

『今更か……』と肩を竦めながらもノアはその謝罪を受け入れた。

「そして、ありがとう。裏切り者の俺に忠誠を誓ってくれて」
「あの人でなしよりはマシってだけですよ」
「それでも、父は俺よりも、兄上の即位を願っていただろう。兄上が庶子でなければ、そもそも俺は王太子にすらなれてなかった」
「でも、実際は王太子に選ばれたのはアルフレッド様です」
「……だが、俺は兄上に劣る。わかっているんだ、自分が力不足なことは」

アルフレッドは己の不甲斐なさを自嘲したが、それでもその瞳は曇ることはなかった。

「それでも、俺は忠誠を誓ってくれたお前に報いたい。自らの血を汚しながらも兄上が手に入れたかった玉座に座る者として……この国を正しく導いていくことを誓おう。我がアルフレッド・ランドルフの名に懸けて」

アルフレッドがノアの前に手を差し出す。夕日に照らされた彼の姿はまるで黄金の像のように輝いて見えた。

「どうか、未熟な俺を支えてくれないかノア……もう一度やり直そう」
「…………」

ノアは差し出されたアルフレッドの手を見つめ、そして静かに首を横に振った。

「その言葉、婚約破棄をされる前の私だったら、受け入れたかもしれません。でも、今の私は貴方と共に歩むことは出来ません」
「……ローラン、か」
「気づいていたんですか?」
「あんだけ堂々と目の前でいちゃつかれればな」

(はて。そんなにいちゃついていただろうか?)

ノアは内心首を傾げながらも、アルフレッドに告げる。

「私は、他の女を好きな男についていくほど、健気ではありませんよ」
「リリスのことは……」
「愛しているんでしょう? あんな裏切られ方をした今でも」
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