53 / 53
エピローグ
しおりを挟む
事件から約一年後――。
国の調査により、一部の貴族の汚職と巨大犯罪組織の摘発が行われた。
この調査により実に数百人が捕まり、関係各所はてんやわんやの大忙しだったらしい。
大捕り物の後に裁判が行われて、エドワードとリリスの罪が明かされた。
エドワードは最後まで詭弁を繰り返し、なんとか助命を乞おうとしたが、下された判決は死刑。彼の本当の身分は明かされずに庶民という身分のまま斬首された。
対して、リリスの方は尋問に対して素直に自分の罪を認めてすべてを話していたため、更生の余地が認められて右目摘出と引き換えに釈放された。
本人は処刑を望んでいたらしいが、アルフレッドが彼女を説得し、釈放の後には遠くの修道院へ身柄を預けたようだ。
エドワードの処刑後、陛下は塞ぎがちになり、引きこもるようになってしまったらしい。政治への意欲も失ってしまったようで、今ではアルフレッドが陛下の仕事を少しずつ代行するようになったようだ。あの事件以降、アルフレッドは心を入れ替えて一所懸命に仕事に取り込んでいるらしい。
最初はまた勝手に家名を懸けて、家の命運を決めてしまった挙句に、面倒ごとをすべて押し付けて国外へ行ってしまったノアに怒っていたようだが、最近はアルフレッドの指導にやりがいを見出し始めた様子のオスカーからの手紙を読み終えたノアは、長旅を終えた鳩のゴーレムを労わりつつ、再びその場に寝転がった。
オーベルジュの春は穏やかな気候だ。青々とした草原の上に広がるのは、雲一つない快晴。絶好の昼寝日和である。
『ふわぁ……』とあくびをするノアに近づく人影が一つ。
「やぁノア。鳩がいるってことはお義父さんからの手紙かい?」
「ああ。近況報告ってやつ。アルフレッド様、意外と頑張っているみたい」
「へぇ……学生の頃の彼から想像もつかないな」
「言うねぇローランも。それで、そっちはどうだった? 愛しのお兄様からの呼び出しだったんだろ」
「ああ。仕事だ。今度はバク砂漠に行って欲しいって」
「めちゃくちゃ遠いじゃねぇか」
「そうだ。行きだけでも半年はかかる旅になる」
「マジか。俺、砂漠って初めてだ」
「……一緒に行ってくれるのか?」
「お前、そんな長時間俺にぼっちでいろって言うのかよ?」
ノアは『よっと』と声をあげながら立ち上がる。
「休暇は今日で終わりだな。行きますか、砂漠の旅へ」
「ああ、一緒に行こう」
ローランの手を取り、ノアは微笑む。
二人の旅はまだ始まったばかりだ。
END.
国の調査により、一部の貴族の汚職と巨大犯罪組織の摘発が行われた。
この調査により実に数百人が捕まり、関係各所はてんやわんやの大忙しだったらしい。
大捕り物の後に裁判が行われて、エドワードとリリスの罪が明かされた。
エドワードは最後まで詭弁を繰り返し、なんとか助命を乞おうとしたが、下された判決は死刑。彼の本当の身分は明かされずに庶民という身分のまま斬首された。
対して、リリスの方は尋問に対して素直に自分の罪を認めてすべてを話していたため、更生の余地が認められて右目摘出と引き換えに釈放された。
本人は処刑を望んでいたらしいが、アルフレッドが彼女を説得し、釈放の後には遠くの修道院へ身柄を預けたようだ。
エドワードの処刑後、陛下は塞ぎがちになり、引きこもるようになってしまったらしい。政治への意欲も失ってしまったようで、今ではアルフレッドが陛下の仕事を少しずつ代行するようになったようだ。あの事件以降、アルフレッドは心を入れ替えて一所懸命に仕事に取り込んでいるらしい。
最初はまた勝手に家名を懸けて、家の命運を決めてしまった挙句に、面倒ごとをすべて押し付けて国外へ行ってしまったノアに怒っていたようだが、最近はアルフレッドの指導にやりがいを見出し始めた様子のオスカーからの手紙を読み終えたノアは、長旅を終えた鳩のゴーレムを労わりつつ、再びその場に寝転がった。
オーベルジュの春は穏やかな気候だ。青々とした草原の上に広がるのは、雲一つない快晴。絶好の昼寝日和である。
『ふわぁ……』とあくびをするノアに近づく人影が一つ。
「やぁノア。鳩がいるってことはお義父さんからの手紙かい?」
「ああ。近況報告ってやつ。アルフレッド様、意外と頑張っているみたい」
「へぇ……学生の頃の彼から想像もつかないな」
「言うねぇローランも。それで、そっちはどうだった? 愛しのお兄様からの呼び出しだったんだろ」
「ああ。仕事だ。今度はバク砂漠に行って欲しいって」
「めちゃくちゃ遠いじゃねぇか」
「そうだ。行きだけでも半年はかかる旅になる」
「マジか。俺、砂漠って初めてだ」
「……一緒に行ってくれるのか?」
「お前、そんな長時間俺にぼっちでいろって言うのかよ?」
ノアは『よっと』と声をあげながら立ち上がる。
「休暇は今日で終わりだな。行きますか、砂漠の旅へ」
「ああ、一緒に行こう」
ローランの手を取り、ノアは微笑む。
二人の旅はまだ始まったばかりだ。
END.
1,841
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(19件)
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される
木月月
BL
貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー
※この話は小説家になろうにも掲載しています。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
推しのために自分磨きしていたら、いつの間にか婚約者!
木月月
BL
異世界転生したモブが、前世の推し(アプリゲームの攻略対象者)の幼馴染な側近候補に同担拒否されたので、ファンとして自分磨きしたら推しの婚約者にされる話。
この話は小説家になろうにも投稿しています。
時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~
なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。
一つは男であること。
そして、ある一定の未来を知っていること。
エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。
意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…?
魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。
なんと目覚めたのは断罪される2か月前!?
引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。
でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉
まぁどうせ出ていくからいっか!
北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)
愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます
まんまる
BL
メルン伯爵家の次男ナーシュは、10歳の時Ωだと分かる。
するとすぐに18歳のタザキル公爵家の嫡男アランから求婚があり、あっという間に婚約が整う。
初めて会った時からお互い惹かれ合っていると思っていた。
しかしアランにはナーシュが知らない愛する人がいて、それを知ったナーシュはアランに離婚を申し出る。
でもナーシュがアランの愛人だと思っていたのは⋯。
執着系α×天然Ω
年の差夫夫のすれ違い(?)からのハッピーエンドのお話です。
Rシーンは※付けます
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。
竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。
男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。
家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。
前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。
前世の記憶チートで優秀なことも。
だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。
愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。
回帰したシリルの見る夢は
riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。
しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。
嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。
執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語!
執着アルファ×回帰オメガ
本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけます。
物語お楽しみいただけたら幸いです。
***
2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました!
応援してくれた皆様のお陰です。
ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!!
☆☆☆
2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!!
応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
感想ありがとうございます!
無事に完結まで書くことが出来て私もほっとしております。
楽しんで読んでいただけたようでとても嬉しいです。
こちらこそとても素敵なコメントありがとうございました!
長文の感想コメントありがとうございました!
たくさんコメントいただいたのに返信が遅くなってしまい、大変申し訳ございません。
最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。
(尚、お父様と鳩さんは私も愚痴大会開いてお互いの主について語り合っていると思います)
細かいところまで読んでくださって、本当によひら様のコメントには大変活力をいただきました。
最後まで本当に本当にありがとうございました!