婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる

kouta

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婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる

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 すっかり、日が暮れて夜になっていた。王都の町全体を見渡せる高台の場所に彼はいた。
 つい数日前も彼は思い詰めた顔で王都を見下ろしていたが、今日も随分とまぁ酷い顔をしていた。

「こんなところにいたのかオルランド」
「!? ノア! どうしてここにいるんだ?」

ノアが声をかけると、冒険者らしくなく本気で人が近くにいることに気づいていなかったようで飛び上がるようにオルランドは立ち上がった。

「お前の肩にいるのは俺の鳩だろ」
「あ……それで居場所がわかったのか……」

すっかりオルランドの肩の上が気に入ったらしい鳩は、今はぐっすり眠っているが、このゴーレムの魔力を辿ってノアにはオルランドがここにいることを突き止める事が出来た。

「……ったく、城から随分離れた場所まで移動しやがって。お陰で追いかけていたらとっくに夜になっちまったじゃないか」

家に帰ったらオスカーとメイドにまた怒られるに違いない。ノアは家に帰った時のことを思ってうんざりしながら彼の隣に腰掛ける。

「……どうしてここに?」
「だから、鳩の魔力を辿って……」
「違う。そうじゃなくて……アルフレッドと話たんだろ?」
「うん。そうだけど?」
「……リリスが、魅了の魔法を使っていたとは思わなかったな」

実際はアルフレッドにリリスの魅了は通じないのだが、王家の極秘事項なので、ノアは黙っていた。

「つまり、アルフレッドの婚約解消は彼の意思じゃなかった可能性が高い」
「……だから?」
「えっと……だからつまり……寄りを戻したのでは?」
「…………はぁーーー」

ノアの深いため息に、オルランドがびくっとするが、構わずにノアは告げた。

「魔法で操られていたからって、アルフレッドが俺を裏切ったことには変わりないでしょ」
「それは、そうだが……」
「まぁアイリーン様は元々愛妾だったし、うちの国の貴族は愛人を作るのとか平気でするけどね。チャールストン家は皆、パートナーに一筋の純愛主義なの。浮気は認めないし、一度裏切られたらとことん冷める」
「そう……なのか?」
「だから気をつけろよ、お前も」

ノアの言葉にきょとんとするオルランドにノアは重ねて言った。

「浮気したら絶対に許さないから」
「それって……」
「お前についていくって言ってるんだよ」
「本当か!?」

がしっと肩を掴まれて、ノアは苦笑いを浮かべながら頷く。ぱぁっと顔を明るくしたオルランドだったが何故か見る見るその表情が曇っていく。

「……でも、本当にいいのか? 俺についていくってことは、公爵家の次男という今の地位を捨てることになる」
「知ってる」
「俺は第三王子でこれ以上の出世はあまり期待できない」
「わかってる」
「……俺の本当の仕事は諜報員だから、俺と一緒に居るとまた危険な目に合うかもしれないし、治安が悪い国や戦争中の国に派遣される可能性も……」
「っ~~~~~だぁあああ!! お前は俺を連れて帰りたいのか置いていきたいのかどっちなんだよ!?」

グダグダといつまでも言い続けるオルランドに痺れを切らしたノアが叫ぶ。

「もちろん連れて帰りたい!!」
「だったらつべこべ言わずに俺を持っていけ!! こちとらお前についていく覚悟はとっくに決めてんだよ!!」


例えもう血の繋がった家族になかなか会えなくなったとしても、忠誠を誓った主人と国を置いて行ってでも、オルランドと共にありたい。


 それがノアの本心だった。

「ありがとうノア」
「こちらこそ。好きだぜローラン……あぁ、こっちの髪色の時はオルランドって呼んだ方がいいか?」
「どっちでも。俺も好きだノア、愛してる」

ローラン……オルランドがノアの身体を抱きしめてキスをする。ノアは幸福な気持ちに包まれながら、そのキスを受け止めて彼の背中に腕を絡ませた。



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