不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
190 / 2,091
剣鬼 闘技祭準備編

母親の愛、父親の死

しおりを挟む
『事前に言っておきますけど、レミアの母親は自分が犠牲になる事を承知で聖光石を利用したんです。だから彼女は自分の意思で死を選んだんです』
『……自殺?』
『結果的にはそうなりますね。彼女の死は少なくともルトリア家で大きな影響を受けました。祖父母は嘆き悲しみ、父親は彼女の行動を止められなかった事を激しく後悔し、後を追うように自殺しました』
『そんなっ……』


アイリスによるとレミアの母親は自らの死と引き換えに自分の娘に聖騎士の職業を習得させるため、聖光石を利用して生まれてくる赤子の職業を変化させたという。決して誰かに強制されたわけではなく、あくまでも彼女は自らの意思で自分を犠牲にしてレミアを産んだ事になる。


『当時のルトリア家はそれ程までに追い詰められていたんですよ。大将軍に就いていた祖母は既に高齢で何時まで現役を続けられるか分かりませんでした。子供に継がせようにも娘は武芸の才能はなく、結婚した相手の夫も残念ながら文官でしたので引き継げません』
『どうしてルトリア家はそんなに大将軍に拘るんだよ。別に大将軍じゃなくても……』
『色々と理由はあるんですけど、ルトリア家は聖騎士の職業を司る家系として他国にも知れ渡っています。聖騎士の職業は白騎士レイナの代から受け継がれている特別な職業なんです』
『つまり……大将軍の一人は聖騎士でじゃないといけない理由がある?』
『そういう事です。大将軍という存在は王国でも重要な役割を担います。ですが、もっと大切な事は聖騎士の職業の人間が大将軍の座に就く事、これが最も重要なんですよ』
『……理解したくないな』


聖騎士の職業の人間が特別である事、王国の大将軍という地位が重要な事は分かったが、それでも母親が自分の命を犠牲にしてまでレミアに聖騎士の職業を継がせようとした行為はレナには納得し難い。


『母親は自らの意思で犠牲となり、レミアは聖騎士の職業を得ました。しかし、その後の彼女の人生は色々と問題もありました。父親が死んだ事で祖父母に彼女は育てられましたが、問題なのは10才の時に大将軍に就いていた祖母が死亡した事から彼女は強制的に大将軍の跡を継ぎました』
『10才って……そんな年齢で将軍になったの!?』
『当然ですけど反対の声は大きかったですね。しかし、聖騎士の職業を持つ人間は彼女だけです。だから祖父がレミアの傍で支えるために護衛の騎士として同行していたんですが、その祖父も3年後に亡くなりました。レミアは13才という年齢で大将軍の座を完全に任せられた歴代最年少の将軍になってしまいます』
『……俺もシズネも相当だけど、レミアも苦労してたんだな』


幼少の頃に家から追い出されたシズネやレナも過酷な経験をしているが、レミアの場合は家の定めによって苦労しているらしく、レナは彼女に同情心すら抱く。しかし、レミアが闘技祭に出場する以上は彼女との戦闘も考慮しなければならず、一先ずは顔を確認できたので立ち去る事にした。


『いつも情報提供ありがとう。今度は夢の中でいつ会える?』
『そうですね、8日後ぐらい……ですかね。準備が出来ましたら教えますので楽しみにしてください』
「はいはい……」


アイリスとの交信を終えると、現実に戻ったレナは柱の陰からレミアの様子を伺い、熱心に祈りを捧げていた。他の修道女はそんな彼女に習うように無言で祈りを捧げており、レナは彼女達の邪魔にならないように移動する。


(レミアか……戦いにくい相手だな)


最後に一目だけレミアの横顔を確認すると、レナは立ち去ろうとした時、祭壇の扉が勢いよく押し開かれた。


「れ、レミア大将軍!!ここにおられますか!?」
「なっ……何事ですか!!レミア様は今は祈祷中ですよ!!」
「も、申し訳ありません!!ですが……」
「出ていきなさい!!ここを何処だと思っているんです!!」


扉を開いて中に入り込んだのは王国の兵士達であり、祭壇に入り込んできた彼等に修道女が厳しく問い詰めるが、祈祷を行っていたレミアが立ち上がり、彼女達を制する。


「静まりなさい。祈祷はもう終わりです、何が起きたのですか?」


特別に大きな声ではないはずだが、不思議の彼女の言葉は祭壇内に浸透し、慌てふためていた兵士達も冷静になる。まだ年齢は10代後半だが、歴戦の将軍のような気迫を放つ彼女に圧倒され、レナは立ち去るのを中断して様子を伺う。


「祈祷中、申し訳ございません!!」
「謝罪はいりません。用件を答えなさい」
「は、はい!!実は移送中の囚人が脱走し、街に逃げ込みました!!」
「囚人……王妃様が闘技祭の余興のために呼び寄せたという男の事ですか」


兵士の言葉にレミアは眉を顰め、一方で囚人と王妃という言葉にレナは立ち止まり、柱の陰から兵士とレミアのやり取りを観察する。
しおりを挟む
感想 5,096

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。