不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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剣鬼 闘技祭準備編

王妃の命令

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――時刻は夜を迎え、シズネは冒険都市に存在する古城に存在した。彼女の目の前には玉座に堂々と座る王妃サクラと数人の側近が存在し、その中にはジンの手助けを行っていた少年も立っていた。彼とジンはレミアに連れていかれたと聞いていたのだが、王妃の命令で解放されたらしい。


「こうしてお互いに顔を合わせるのは久しぶりね、シズネ」
「……ええっ」
「私の元に来たという事は覚悟を決めたのかしら?」


王妃はワイングラスを片手に笑みを浮かべ、傍に立っていた青年が即座に酒を注ぐ。その態度にシズネは眉を顰めるが、王妃は気にした風もなく味わう。


「この国で最も売れている葡萄酒よ安物だけど、味は悪くないわ。貴方もどう?」
「結構よ……酒はあまり好きじゃないわ」
「そういう所はまだ子供ね。遠慮せずに飲みなさい」
「どうぞ」


側近の中の一人が既に酒が注がれたワイングラスを乗せた盆を差し出す。王妃の側近の中で唯一の女性であり、年齢はシズネと大差はない。彼女は知らない事だがレナを追跡していた刺客であり、普段の彼女は王妃の身の回りの世話を行っている。


「酒はどんな時でも美味しい物よ……例え、他人を犠牲にする選択をした時でもね」
「……どういう意味かしら?」


意味深に語り掛ける王妃にシズネは疑問を抱くが、彼女の質問には答えずに王妃はグラスの中身を飲み干し、シズネにも葡萄酒を味わうように促す。


「飲みなさい。別に変な物は入れてないわよ」
「グラスに毒でも塗ってあるんじゃないんでしょうね」
「王妃様に対して口が過ぎますよ……殺されたいのですか?」


王妃の傍に立っていた青年がシズネを睨みつけるが、そんな彼の反応に対してシズネは正面から睨み返し、冷たい瞳を向ける。


「殺すという言葉を気軽に口にするものではないわ。特に自分よりも格上の相手にはね」
「何だと……」
「止めなさい」


シズネの言葉に青年は腰の剣に手を伸ばすが、王妃がそれを制止する。その様子を確認しながらもシズネはワイングラスに視線を向け、一気に飲み干す。


「……毒は入っていないようね」
「当たり前じゃない。私が貴女を殺すはずがないでしょう?」
「それはどうかしら……」


飲み干したワイングラスを少女に返すと、シズネは周囲から感じ取れる気配を確認する。王妃の側近以外にも数人の気配を感じ取り、返答次第では王妃は自分を始末する準備を整えている事に気付く。


(思っていたよりも警戒されているわね……レナと会った事が知られたのかしら)


決して緊張を悟られないようにシズネは表情を引き締め、何時でも戦闘態勢に入れるように気を配りながら王妃にこの場所へ招かれた理由を問い質す。


「それで……今回は私に何の用かしら?」
「仕事をして欲しいの。ある人間を殺して欲しいの」
「……そう」


事前に予想していたとはいえ、殺人の依頼をされたシズネは無意識に拳を握りしめる。そんな彼女の態度に王妃は笑みを浮かべ、彼女の緊張を解すように明るく話しかける。


「心配しなくていいわ。別に貴方が嫌なら断ってもいいわよ。その代わり、例の約束は……」
「問題ないわ。誰を殺せばいいの?」


約束の話を持ち出されたシズネは唇を噛みしめ、王妃に話の内容を聞く。その反応を見て王妃は首を傾げ、随分とあっさりと承諾した事に違和感を抱く。


「随分と素直ね……何かあったのかしら?」
「別に人殺しの依頼なんて珍しくもないわよ。私が剣聖に至るまで何人の悪党を手にかけたと思っているの?」
「……それもそうね」


傭兵であるシズネは冒険者では受けられない裏稼業の仕事も引き受けており、彼女は何人もの人間を切り伏せている。しかし、彼女が殺害した人間は全員が賞金首であり、数多くの人々を苦しめた悪党だけである。そもそも傭兵稼業自体が危険な職業なので人の命を奪う事自体は珍しくはない。


「それで……誰を殺せばいいの?」
「大丈夫よ。貴方の腕なら容易い相手よ」
「まさか……私の相棒を殺せというの?」


シズネの脳裏にレナの姿が思い浮かび、王妃にとってレナの存在は邪魔でしかないはずだが、彼女は微笑みながら否定する。


「いいえ、違うわ。でも惜しいわね」
「……どういう事よ?」
「彼の命はまだ必要はない。もっと重要なのは……彼の母親よ」
「まさか……!?」
「アイラを殺しなさい。それが私が貴女に与える最後の任務になるわ」


予想外の言葉にシズネは目を見開き、動揺を隠せない。しかし、王妃はそんな彼女の反応を楽しむように新しく注がれた葡萄酒を味わう。
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