不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
311 / 2,091
闘技祭 決戦編

バルの悪知恵

しおりを挟む
「大丈夫ですかマリア様!?」
「すぐに治療を……!!」
「……平気よ」


倒れ込んだマリアに建物の前に残っていた女性冒険者が集まり、彼女の介抱を行おうとした瞬間にマリアは目を開き、ゆっくりと起き上がる。その様子を見て冒険者達は驚愕の表情を浮かべるが、当のマリアは若干涙目になりながらも額を抑えながら呟く。


「全く……相変わらず無茶をするわね」
「ま、マリア様!?ご無事だったんですか?」
「平気……とはいいがたいけど、意識ははっきりとしているわ」


額を抑えながらもマリアは自分を介抱しようとしてくれた人間達を離れさせ、どうにか立ち上がる。額は痛むが治療する程の大怪我ではなく、彼女は溜息を吐きながらもバルの行動に内心感謝していた。


(……結果的には姉さんも連れ出して兵士達を引き下がらせる事は出来たわね)


マリアが何か行動を起こす前にバルがアイラを連れ去った事により、結果的にはアイラを王国兵に引き渡さず、建物の前から退去させる事には成功した。しかもバルは最後に自分だけ責任を負うつもりなのかマリアと仲違いを引き起こしたように見せつけ、傍目から見れば彼女がアイラを誘拐したようにしか見えない。


(でも、自分一人だけで罪を背負うなんて真似はさせないわよ)


バルは表向きは自分だけが悪人に徹して罪を被ろうしたのだろうが、この程度の企みなど王妃にはすぐに見抜かれるだろう。マリアは覚悟を決め、長年の間に立てていた計画を実行する事を決めた。


「時期尚早かもしれないけど、仕方がないわ。全員を集めなさい!!」
「は、はい!!」
「あの……追いかけて行った奴等はどうしたらいいでしょう?」
「放っておきなさい。それよりも今現在集まっている冒険者を集めなさい!!」
「分かりましたっ!!」


残された女性冒険者達はマリアの指示に従い、即座にギルド内に残っている冒険者を呼び集める。その間にもマリアはレナに危険を知らせるため、彼の居場所を探す。


「仕方ないわね……少し神経を使うけど、貴方達に頼るしかないわ」


マリアは両手を広げ、風の精霊を呼び集める。ハヅキ家の中で最も魔術師の才に恵まれたマリアならば街中に広がっている風の精霊を呼び集める事も可能であり、精霊を呼び寄せてレナの居場所を探る。


『教えなさい、あの子は何処に居るの?』


瞼を閉じて呼び集めた精霊に問いかけると、マリアの周辺に緑色の光の球体が無数に現れる。実体化した精霊に触れる事で街の至る場所の状況を確認し、闘技祭を終えた後のレナの居場所を探す。そして精霊の1体がレナの位置を捉えると、マリアは瞼を開く。


「これは……どういう事かしら?」


既にレナは闘技場から冒険都市へ移動していた事が発覚し、仲間達と共に合流していたのかレナの他に複数の人間の反応が存在した。しかし、その中にレナやアイラと良く似た魔力を持つ人物が混じっている事にマリアは気付き、疑問を抱く。


「この反応はもしかして母……?いえ、違うわ。だけど、ハヅキ家の縁のある人間……?」


レナと同行している人物の一人があまりにもハヅキ家の人間が放つ魔力の波長と似ており、マリアは訝しむ。しかし、ハヅキ家の誰かがレナと行動しているとは考えにくく、その反面に赤の他人とは思えない程にレナやアイラと酷似した魔力の波長を放っているため、考えられる事は一つだった。


「ま、まさか……姉さんに隠し子がっ!?」
「あの、マリアさん……?どうかしました?」
「え、あっ……ミナ、貴女は戻っていたの?」


驚愕の表情を浮かべたマリアの背後から声が掛けられ、慌ててマリアが振り返ると不思議そうな表情を浮かべたミナが立っていた。彼女はレナ達よりも先に闘技場から立ち去り、冒険者ギルドへ帰還すると何故かマリアが一人で立っていたのを発見し、疑問を抱いてはなしかけたのだが、マリアは誤魔化すように咳ばらいを行うとミナに事情を説明する。


「こほんっ……何でもないわ、見苦しい物を見せたわね。ところでミナ、試合は見事に勝ち抜いたようね」
「あ、ありがとうございます!!でも、勝ち抜いたというのはちょっと違うかもしれませんけど……」
「運も実力の内、と言うわ。それよりも丁度良かったわ、貴女に頼みたいことがあるの」
「え、僕に頼み事……ですか?」


滅多にマリアの方から頼み事をされた事がないミナは驚いた表情を浮かべるが、マリアは彼女に現在の状況をレナに伝えるように指示を出す。


「どうやらバルトロス王国がレナを捕まえようとしているの。だからすぐにあの子の元へ助けに行きなさい」
「ええっ!?ど、どうして……」
「今は詳しく説明している暇はないの。レナ達はここから南の方角にいるはずよ。貴女はすぐにあの子の元へ助けに向かいなさい」
「わ、分かりました!!あ、でも……王国兵の人達に見つかったらどうすればいいんでしょうか?」
「出来る限り戦闘を避けて逃げなさい。それと、レナの元へ向かうならあの狼君も解放しなさい。そっちの方が手っ取り早いかもしれないわ」
「ウル君の事ですか?」
「とにかく急ぎなさい!!もう一刻の猶予もないの!!」
「は、はい!!」


普段のマリアならば考えられない程の気迫にミナは慌てて冒険者ギルド内へ入り込み、ティナの飼っているサイクロプスのアインと共にギルドが預かっているウルの元へ向かう。仮にミナが出発するときにレナ達が移動していたとしてもウルならばレナの匂いを嗅ぎ取り、彼女をレナの元へ案内するだろう。


「……私も急いだ方が良いわね」


現時点で行える対処を終えると、マリアは建物内へと引き返そうとした。だが、彼女が呼び集めた精霊が唐突に騒ぎ出し、この場所に強力で悍ましい魔力を持つ者が接近している事を告げる。


「この反応は……そう言う事ね」


苛立ちを隠さずにマリアは建物に戻るのを止めると、杖を握りしめて反応がある方向に視線を向ける。そして、こちらに向けて黒色のローブで覆い隠した集団が接近している事を視界に確認した。



※次回から「都市崩壊編」に入ります。
しおりを挟む
感想 5,096

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。