不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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都市崩壊編

まさかのゲイン(変装)

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(……急ごしらえの変装だけど、どうやらばれていないな)


混乱しているパイルを睨みつけながらもレナは周囲の人間に自分の正体がばれていない事に安堵する。服の裏に隠れていたスラミンとヒトミンの協力の元、レナは髪の毛と顔を変装してかつて自分と対峙した「ゲイン」に化けていた。


(前に遊びでスラミンとヒトミンを利用して変装した事があったけど、まさかよりにもよってこいつの顔に変装する事になるとは……)


ゲインの顔をスラミンとヒトミンに教えていた事が幸いし、幸いと言うべきかアイリスによればゲインの存在を知る人間は少ない。彼は旧帝国に所属する吸血鬼ではあったが、旧帝国は既に王妃の目論見で殆どの人員が死亡している。生き残った人間の中でゲインの存在を知っているとしたら彼を溺愛していたキラウ程度だろう。


「全く、僕は日焼けが嫌いなんでね。もう顔は確認したなら十分だろう?」
「そんな馬鹿な……しかし、確かにさっき見た時は……」
「団長?」


一流の傭兵であるパイルは「観察眼」や「遠視」さらには視覚系のスキルを強化する「視覚強化」と呼ばれているスキルを覚えており、彼は城壁の上からでもレナの存在を確認していた。だからこそ民衆の前で彼の正体を明かし、捕縛しようとしたが、スライムという隠し玉を偶然持っていたレナが上手だった。


「君達も僕の仲間に触るんじゃないよ!!いい加減に離してくれないか?」
「えっ?えっと……」
「……もういいでしょう。何時まで無関係の私達に武器を向けるつもりよ?」


口調まで出来る限りゲインに近づけてレナは兵士に囲まれた二人を解放するように指示すると、王国兵は戸惑った表情を浮かべてパイルに指示を仰ぐ。しかし、判断を委ねられたパイルは自分が見間違いしたとは信じられず、疑うようにレナに視線を向ける。


「……変装の可能性もある。このまま我々と共に来てくれようか」
「はっ!!変装だって?そんな事を言い出せば僕以外の人間だって十分怪しいじゃないかっ!!そんな理由で連行なんかされたらたまったものじゃないよ!!」
「そうだそうだ!!」
「兵士だからってなんでもしていいのかよ!?」


レナの煽るような発言に周囲の住民も賛同し、王国兵の対応に怒りを抱いていた民衆がパイルの行動を咎める。雲行きが怪しくなった王国兵は不安そうな表情を浮かべてパイルに視線を向けると、彼は深いため息を吐き出す。


「……ならばそのフードを全部脱いで貰おうか。もしも暗殺犯と同じ服装をしていた場合、お前が変装している証拠になるだろう」
「往生際が悪いね……男を脱がせる趣味があるなんて気持ち悪い」
「いいから見せるんだ!!」


予想していた言葉にレナは遭えて小馬鹿にするような表情を浮かべて大げさに振舞うと、いい加減に我慢の限界を迎えたパイルが腕を伸ばしてくる。しかし、それを待っていたとばかりにレナは突き出された右腕を掴み取り、パイルを睨みつける。


「やれやれ……今度は力尽くで抑えつけるつもりかい?」
「貴様……ぬ、ぐうっ!?」
「団長!?」


右腕を掴まれたパイルは苦痛の表情を浮かべ、恐ろしい握力で握りしめてくるレナを睨む。まるで万力に挟まれたように握りしめられる腕にパイルは目を見開き、レナは彼に聞こえる声量で囁く。


「弱虫」
「……き、さまぁっ!!」
「あっ!?」


パイルは怒りの表情を浮かべて左腕を振り翳し、レナの腹部に向けて拳を叩きこむ。その瞬間、腕に装着されていた破城槌のような武器も叩きこまれ、レナの肉体が後方に吹き飛ぶ。その光景を目撃した民衆は驚愕し、兵士に囲まれていたダインとシズネも反応する。


「なっ……お前、僕の友達に何てことするんだ!!」
「……どういうつもり?一般人に手を出すなんて……傭兵の恥晒しね」
「黙れ!!こいつが先に仕掛けたんだ……!?」


二人の言葉にパイルは言い返そうとしたが、周囲の人間が自分に見つめる視線に気付き、非常に不味い状況だと理解する。傍目から見れば傭兵であるパイルが明らかに力尽くで連行しようとした少年を唐突に殴りつけたとしか思えず、今まで黙っていた人間達も彼を罵倒した。


「おい!!何も殴る事はないじゃないか!!まだ子供だぞ!?」
「そうよ!!だいたいあんたが勝手に勘違いしただけじゃない!!」
「おい、大丈夫か坊主?怪我はないか?」
「うっ……」
「ち、違う!!俺は……」


倒れ込んだレナの元に民衆が集まり、パイルは必死に言い訳を考えるが既に状況はレナ達に味方しており、ダインとシズネを取り囲んでいた兵士達にも他の人間が詰め寄る。


「もういい加減にそっちの二人も離してやれよ!!友達が殴られてたんだぞ!?」
「さ、下がれ!!邪魔をするな!!」
「うわっ!?おい、こいつ今俺に刃を構えたぞ!!こんな横暴が許されるのか!?」
「何が王国兵だ!!だいたいお前等、肝心な時に何もしないくせにいちいち偉そうにしてんじゃねえっ!!」


冒険都市周辺の住民はバルトロス王国の兵士を嫌う傾向があり、理由としては腐敗竜が現れた時に王国は軍隊を派遣しなかった事が原因である。そのため、今回の王国兵の横暴も我慢できず、レナ達を取り囲む兵士を見て民衆も我慢の限界を迎えていた。
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