314 / 2,091
都市崩壊編
まさかのゲイン(変装)
しおりを挟む
(……急ごしらえの変装だけど、どうやらばれていないな)
混乱しているパイルを睨みつけながらもレナは周囲の人間に自分の正体がばれていない事に安堵する。服の裏に隠れていたスラミンとヒトミンの協力の元、レナは髪の毛と顔を変装してかつて自分と対峙した「ゲイン」に化けていた。
(前に遊びでスラミンとヒトミンを利用して変装した事があったけど、まさかよりにもよってこいつの顔に変装する事になるとは……)
ゲインの顔をスラミンとヒトミンに教えていた事が幸いし、幸いと言うべきかアイリスによればゲインの存在を知る人間は少ない。彼は旧帝国に所属する吸血鬼ではあったが、旧帝国は既に王妃の目論見で殆どの人員が死亡している。生き残った人間の中でゲインの存在を知っているとしたら彼を溺愛していたキラウ程度だろう。
「全く、僕は日焼けが嫌いなんでね。もう顔は確認したなら十分だろう?」
「そんな馬鹿な……しかし、確かにさっき見た時は……」
「団長?」
一流の傭兵であるパイルは「観察眼」や「遠視」さらには視覚系のスキルを強化する「視覚強化」と呼ばれているスキルを覚えており、彼は城壁の上からでもレナの存在を確認していた。だからこそ民衆の前で彼の正体を明かし、捕縛しようとしたが、スライムという隠し玉を偶然持っていたレナが上手だった。
「君達も僕の仲間に触るんじゃないよ!!いい加減に離してくれないか?」
「えっ?えっと……」
「……もういいでしょう。何時まで無関係の私達に武器を向けるつもりよ?」
口調まで出来る限りゲインに近づけてレナは兵士に囲まれた二人を解放するように指示すると、王国兵は戸惑った表情を浮かべてパイルに指示を仰ぐ。しかし、判断を委ねられたパイルは自分が見間違いしたとは信じられず、疑うようにレナに視線を向ける。
「……変装の可能性もある。このまま我々と共に来てくれようか」
「はっ!!変装だって?そんな事を言い出せば僕以外の人間だって十分怪しいじゃないかっ!!そんな理由で連行なんかされたらたまったものじゃないよ!!」
「そうだそうだ!!」
「兵士だからってなんでもしていいのかよ!?」
レナの煽るような発言に周囲の住民も賛同し、王国兵の対応に怒りを抱いていた民衆がパイルの行動を咎める。雲行きが怪しくなった王国兵は不安そうな表情を浮かべてパイルに視線を向けると、彼は深いため息を吐き出す。
「……ならばそのフードを全部脱いで貰おうか。もしも暗殺犯と同じ服装をしていた場合、お前が変装している証拠になるだろう」
「往生際が悪いね……男を脱がせる趣味があるなんて気持ち悪い」
「いいから見せるんだ!!」
予想していた言葉にレナは遭えて小馬鹿にするような表情を浮かべて大げさに振舞うと、いい加減に我慢の限界を迎えたパイルが腕を伸ばしてくる。しかし、それを待っていたとばかりにレナは突き出された右腕を掴み取り、パイルを睨みつける。
「やれやれ……今度は力尽くで抑えつけるつもりかい?」
「貴様……ぬ、ぐうっ!?」
「団長!?」
右腕を掴まれたパイルは苦痛の表情を浮かべ、恐ろしい握力で握りしめてくるレナを睨む。まるで万力に挟まれたように握りしめられる腕にパイルは目を見開き、レナは彼に聞こえる声量で囁く。
「弱虫」
「……き、さまぁっ!!」
「あっ!?」
パイルは怒りの表情を浮かべて左腕を振り翳し、レナの腹部に向けて拳を叩きこむ。その瞬間、腕に装着されていた破城槌のような武器も叩きこまれ、レナの肉体が後方に吹き飛ぶ。その光景を目撃した民衆は驚愕し、兵士に囲まれていたダインとシズネも反応する。
「なっ……お前、僕の友達に何てことするんだ!!」
「……どういうつもり?一般人に手を出すなんて……傭兵の恥晒しね」
「黙れ!!こいつが先に仕掛けたんだ……!?」
二人の言葉にパイルは言い返そうとしたが、周囲の人間が自分に見つめる視線に気付き、非常に不味い状況だと理解する。傍目から見れば傭兵であるパイルが明らかに力尽くで連行しようとした少年を唐突に殴りつけたとしか思えず、今まで黙っていた人間達も彼を罵倒した。
「おい!!何も殴る事はないじゃないか!!まだ子供だぞ!?」
「そうよ!!だいたいあんたが勝手に勘違いしただけじゃない!!」
「おい、大丈夫か坊主?怪我はないか?」
「うっ……」
「ち、違う!!俺は……」
倒れ込んだレナの元に民衆が集まり、パイルは必死に言い訳を考えるが既に状況はレナ達に味方しており、ダインとシズネを取り囲んでいた兵士達にも他の人間が詰め寄る。
「もういい加減にそっちの二人も離してやれよ!!友達が殴られてたんだぞ!?」
「さ、下がれ!!邪魔をするな!!」
「うわっ!?おい、こいつ今俺に刃を構えたぞ!!こんな横暴が許されるのか!?」
「何が王国兵だ!!だいたいお前等、肝心な時に何もしないくせにいちいち偉そうにしてんじゃねえっ!!」
冒険都市周辺の住民はバルトロス王国の兵士を嫌う傾向があり、理由としては腐敗竜が現れた時に王国は軍隊を派遣しなかった事が原因である。そのため、今回の王国兵の横暴も我慢できず、レナ達を取り囲む兵士を見て民衆も我慢の限界を迎えていた。
混乱しているパイルを睨みつけながらもレナは周囲の人間に自分の正体がばれていない事に安堵する。服の裏に隠れていたスラミンとヒトミンの協力の元、レナは髪の毛と顔を変装してかつて自分と対峙した「ゲイン」に化けていた。
(前に遊びでスラミンとヒトミンを利用して変装した事があったけど、まさかよりにもよってこいつの顔に変装する事になるとは……)
ゲインの顔をスラミンとヒトミンに教えていた事が幸いし、幸いと言うべきかアイリスによればゲインの存在を知る人間は少ない。彼は旧帝国に所属する吸血鬼ではあったが、旧帝国は既に王妃の目論見で殆どの人員が死亡している。生き残った人間の中でゲインの存在を知っているとしたら彼を溺愛していたキラウ程度だろう。
「全く、僕は日焼けが嫌いなんでね。もう顔は確認したなら十分だろう?」
「そんな馬鹿な……しかし、確かにさっき見た時は……」
「団長?」
一流の傭兵であるパイルは「観察眼」や「遠視」さらには視覚系のスキルを強化する「視覚強化」と呼ばれているスキルを覚えており、彼は城壁の上からでもレナの存在を確認していた。だからこそ民衆の前で彼の正体を明かし、捕縛しようとしたが、スライムという隠し玉を偶然持っていたレナが上手だった。
「君達も僕の仲間に触るんじゃないよ!!いい加減に離してくれないか?」
「えっ?えっと……」
「……もういいでしょう。何時まで無関係の私達に武器を向けるつもりよ?」
口調まで出来る限りゲインに近づけてレナは兵士に囲まれた二人を解放するように指示すると、王国兵は戸惑った表情を浮かべてパイルに指示を仰ぐ。しかし、判断を委ねられたパイルは自分が見間違いしたとは信じられず、疑うようにレナに視線を向ける。
「……変装の可能性もある。このまま我々と共に来てくれようか」
「はっ!!変装だって?そんな事を言い出せば僕以外の人間だって十分怪しいじゃないかっ!!そんな理由で連行なんかされたらたまったものじゃないよ!!」
「そうだそうだ!!」
「兵士だからってなんでもしていいのかよ!?」
レナの煽るような発言に周囲の住民も賛同し、王国兵の対応に怒りを抱いていた民衆がパイルの行動を咎める。雲行きが怪しくなった王国兵は不安そうな表情を浮かべてパイルに視線を向けると、彼は深いため息を吐き出す。
「……ならばそのフードを全部脱いで貰おうか。もしも暗殺犯と同じ服装をしていた場合、お前が変装している証拠になるだろう」
「往生際が悪いね……男を脱がせる趣味があるなんて気持ち悪い」
「いいから見せるんだ!!」
予想していた言葉にレナは遭えて小馬鹿にするような表情を浮かべて大げさに振舞うと、いい加減に我慢の限界を迎えたパイルが腕を伸ばしてくる。しかし、それを待っていたとばかりにレナは突き出された右腕を掴み取り、パイルを睨みつける。
「やれやれ……今度は力尽くで抑えつけるつもりかい?」
「貴様……ぬ、ぐうっ!?」
「団長!?」
右腕を掴まれたパイルは苦痛の表情を浮かべ、恐ろしい握力で握りしめてくるレナを睨む。まるで万力に挟まれたように握りしめられる腕にパイルは目を見開き、レナは彼に聞こえる声量で囁く。
「弱虫」
「……き、さまぁっ!!」
「あっ!?」
パイルは怒りの表情を浮かべて左腕を振り翳し、レナの腹部に向けて拳を叩きこむ。その瞬間、腕に装着されていた破城槌のような武器も叩きこまれ、レナの肉体が後方に吹き飛ぶ。その光景を目撃した民衆は驚愕し、兵士に囲まれていたダインとシズネも反応する。
「なっ……お前、僕の友達に何てことするんだ!!」
「……どういうつもり?一般人に手を出すなんて……傭兵の恥晒しね」
「黙れ!!こいつが先に仕掛けたんだ……!?」
二人の言葉にパイルは言い返そうとしたが、周囲の人間が自分に見つめる視線に気付き、非常に不味い状況だと理解する。傍目から見れば傭兵であるパイルが明らかに力尽くで連行しようとした少年を唐突に殴りつけたとしか思えず、今まで黙っていた人間達も彼を罵倒した。
「おい!!何も殴る事はないじゃないか!!まだ子供だぞ!?」
「そうよ!!だいたいあんたが勝手に勘違いしただけじゃない!!」
「おい、大丈夫か坊主?怪我はないか?」
「うっ……」
「ち、違う!!俺は……」
倒れ込んだレナの元に民衆が集まり、パイルは必死に言い訳を考えるが既に状況はレナ達に味方しており、ダインとシズネを取り囲んでいた兵士達にも他の人間が詰め寄る。
「もういい加減にそっちの二人も離してやれよ!!友達が殴られてたんだぞ!?」
「さ、下がれ!!邪魔をするな!!」
「うわっ!?おい、こいつ今俺に刃を構えたぞ!!こんな横暴が許されるのか!?」
「何が王国兵だ!!だいたいお前等、肝心な時に何もしないくせにいちいち偉そうにしてんじゃねえっ!!」
冒険都市周辺の住民はバルトロス王国の兵士を嫌う傾向があり、理由としては腐敗竜が現れた時に王国は軍隊を派遣しなかった事が原因である。そのため、今回の王国兵の横暴も我慢できず、レナ達を取り囲む兵士を見て民衆も我慢の限界を迎えていた。
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。