不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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都市崩壊編

犯罪者ルナ

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「一体誰なんだよ!!国王様を暗殺しようとしている奴ってのは!!」
「そうだそうだ!!適当な事を言っているんじゃねえぞっ!!」
「……本来ならば一般人の君達に話すべき事ではないが、このまま情報も提示せずに待機を命じるのは酷だろう。ならばここで暗殺を企てた人物の名前を明かすぞ!!」


傭兵のパイルの言葉に民衆は静まり返り、何者がバルトロス国王の暗殺を企てたのかと黙って聞く。その光景にレナは冷や汗を流し、即座に「隠密」のスキルを発動させて気配を消す。


「不味い……不味いよね?」
「静かにしなさい……私の後ろに隠れて」
「おい、嘘だろ……こんな所で戦う事になるわけないよな?」


シズネとダインはレナを覆い隠すように移動するが、城壁の上のパイルは既に見抜いていたのか3人に向けて指差す。



「――国王の暗殺を企てていたのはそこに隠れている白銀の剣士ルナだ!!」
「何だって!?」
「ルナって……あの試合の!?」


パイルの言葉に民衆は彼が指差す方向に視線を向け、シズネとダインに身を隠している人物に視線を向ける。隠密のスキルを発動させているので最初はレナの存在に気付くことは出来なかったが、注意深く観察すると彼の姿が確認出来る。あくまでも隠密は存在感を消すだけなので透明人間のように実を隠せるわけではなく、注意深く観察すれば一般人でも見抜くことが出来る。


「お、おい……あの傭兵、あんた等を指差しているぞ」
「姿を見せろよ!!本当にあの白銀の剣士なのか?」
「いや、それは……」
「不味い事になったわね」


ダインとシズネの背に隠れながらレナは舌打ちし、不味い事に今現在のレナの格好はルナの状態に戻っている。理由としては女装を何時までもしていられないので元の服装に戻り、一般人に姿を見られると白銀の剣士と全く同じ背格好に服装をしている事で怪しまれるかも知れないと判断し、ルナの姿に変わっていた事が仇となる。


(くそっ……空間魔法で逃げる?いや、そんな余裕もないか……)


空間魔法を利用して別の場所へ移動する事も考えたが、生憎と空間魔法で逃走するには事前に別の場所に「黒渦」を設置しなければならない。そのため、この状況から抜け出す事は出来ない。


(俺一人なら逃げ切れると思うけど、シズネはともかく、ダインは捕まってしまうかもしれない。だからといってぐずぐずしていたら捕まってしまう)


既に民衆を掻き分けて城門の前で待機していた王国兵が押し寄せており、このままでは正体を明かされてしまう。どうすれば切り抜けられるのかとレナは悩んでいると、不意に自分の服の裏から蠢く存在に気付く。


「おい!!そいつの顔を見せろよ!!」
「い、いや……こいつ、恥ずかしがり屋だから……」
「ちょっと、何処触っているのよ!!痴漢で訴えるわよ!!」
「えっ!?い、いやそういうつもりじゃ……」


ダインとシズネがレナに近づこうとする民衆を誤魔化そうとするが、パイルは確信を抱いたのか彼は城壁の上から飛び降りると、何事もなく地面に着地する。一流の傭兵ならばレベルも高く、高さが十数メートルも存在する城壁の上だろうと簡単に飛び降りる事も出来る。


「往生際が悪いぞ!!その素顔を見せて貰おうか!!」
「ちょ、止めろよっ!!」
「パイル!!一体どういうつもり?」


民衆を掻き分けて接近してきたパイルにダインとシズネが前に出ると、彼は傍に控えている王国兵に視線を向け、二人を拘束するように命じた。


「この二人も暗殺犯の協力者の容疑者だ。連行しろ!!」
『はっ!!』
「ちょっ!?」
「パイル……!!」


パイルの言葉に武装した王国兵が二人を取り囲み、ダインは慌てて杖を構え、シズネも剣に手を伸ばす。その間にもパイルはレナの元へ近づき、全身を覆いこむフードに手を伸ばす。


「さあ、姿を見せろっ……!?」


フードを掴んだパイルは力尽くで正体を明かそうとした時、彼の視界に最初に目に入ったのは「金髪」の髪の毛の少年であり、顔立ちもレナとは異なる美少年が露わになる。その光景に民衆は目を見開き、ダインとシズネでさえも呆気に取られた。


「き、貴様は……!?」
「……うるさいな、汚い手で僕に触れるな」


姿を晒した少年は不機嫌そうにパイルの腕を振り払い、冷たい瞳で睨みつける。その視線を受けたパイルは背筋が凍り、目の前の少年から子供とは思えない程の威圧を受けて後退る。


「な、何者だ!!」
「それはこっちの台詞だよ。いきなり人の事を指差して無理やり僕の顔を晒すなんて……君、もしかして男色の気があるのかい?悪いけど僕はそっちの趣味はないんだよ」
「何だと……!?」
「パイル様!?これは一体どういうことですか!?」
「おい、何が白銀の剣士だよ!!全然似てねえじゃないか!!」


衆目の前で現れた美少年に王国兵は動揺し、民衆も憤慨する。しかし、驚いているのはパイルだけではなく、ダインとシズネも同様であり、一体何が起きたのか理解するのに時間が掛かった。
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