不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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放浪編

試験開始

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「おい、あれを見ろよ!!どうやら俺達以外にも先客が居たようだな……」
「あれ?」


他の囚人の言葉を聞いてレナは視線を向けると、砂漠のような試験場には他の囚人の姿がちらほらと見えた。全員が獣人族というわけでもなく、中には巨人族や小髭族の囚人も存在した。全員が共通している事は同じ囚人服を着込んでおり、武器や防具の類は装備していない。


「数は……だいたい30人弱か」
「ほう、お前もしかして気配感知を覚えているのか?という事は暗殺者なのか?」
「まあ、似たようなもんだよ」


一瞬で試験場に存在する人数を把握したレナに白髪の男性は感心した声を上げ、適当にレナも言い返す。これから何が行われるのか警戒しながらもレナは自分の装備を確認し、薄々と理解してはいたが転移前に装備していた退魔刀や反鏡剣、さらには魔法腕輪の類も外されていた。


(盗まれたのか、それとも没収されたのか……くそ、後で必ず取り返してやる)


苦労して手に入れた装備品を奪われた事にレナは不満を抱き、アイリスと交信が再開出来るようになれば必ず取り戻す事を誓いながらも武器になりそうな物を探す。しかし、周囲は砂漠のような砂丘に囲まれているだけで武器になりそうな物は見当たらず、強いて言えば両手と両足を拘束している枷の鎖程度しか存在しない。


(こんな状態でどんな試験をやる気だ?まさか囚人同士で殺しあえとか言わないよな……何だ?)


気配感知と魔力感知の能力を発動させたレナは地中から接近する反応に気づき、砂の中を高速で移動する生物が存在する事を知る。同時に試験場の観客席にて一人の男性が立ち上がり、囚人達に向けて大声で話しかける。


「では、これよりお前達の適正検査を行う!!といっても規則は簡単だ。何が何でも10分間生き残れ!!以上、説明は終わりだ!!」
「はあっ……?」
「生き残れって……どういう意味だ?」


あまりにも大雑把過ぎる説明に試験場の囚人達は戸惑うが、そんな彼らを見て観客席の囚人達の顔つきが代わり、これから起こる出来事を知っている彼等は注意深く観察を行う。


「では試験開始をする!!今日の新入りの相手は……砂鮫だ!!」
「砂鮫……だと!?」


砂鮫という言葉に獣人族の囚人は顔色を変化させ、怯えた表情を浮かべて周囲の砂丘の様子を伺う。だが、獣人族以外の囚人は砂鮫という聞きなれない単語の魔物に戸惑う。レナも砂鮫と呼ばれる魔物の知識はなく、ダインがこの場にいれば彼の豊富な魔物の知識で教えてくれたかもしれないが、生憎と今のレナには頼れる仲間はいない。


「ねえ、砂鮫というのは……」
「黙っていろ!!死にたいのか……!?」


先ほど色々と説明してくれた白髪の囚人にレナは質問しようとすると、何故か囚人は頭の獣耳に両手を添えて周囲から聞き取れる音に集中するように耳を澄まし、そんな彼の行動にレナは訝しむ。だが、数秒後に彼の行動の意味が判明した。


「……こっちだ!!こっちの方から音が聞こえる!?」
「やばい、早く逃げろ!!」
「急げっ!!食われるぞ!?」


どうやら人間よりも優れた聴覚を利用して砂中を掻き分けて移動する砂鮫の位置を特定したらしく、慌てて獣人族の囚人達は駆け出す。だが、彼等の行動を理解できない他の種族の囚人は反応が遅れてしまう。


「おい、お前等何を騒いで……ぎゃあああっ!?」
『シャオオオッ!!』



――最初の犠牲者は身長が4メートルを超える巨人族の老人であり、砂丘から飛び出てきた全身が土気色の鮫に頭部を飲み込み、口内に存在する数十本の歯で噛み砕く。砂鮫が再び砂中に消えると、残されたのは頭部だけを食いちぎられた巨人族の男性の死体だけとなり、それを見た他の囚人は顔色を真っ青に変えて試合場を駆け回る。



「ひいいいっ!?」
「逃げろぉっ!!」
「おい、一か所に固まるんじゃねえっ!!こっちに来るなっ……うわああっ!?」
『シャオオッ!!』


奇怪な鳴き声を上げながら今度は鈍足の小髭族の男性の身体を丸飲みした砂鮫の姿を見てレナは冷や汗を流し、砂の中をまるで海中のように自由自在に動く鮫の姿を見て焦りを抱く。武器があれば恐れる相手ではないのだが、生憎と今のレナの手元には剣はない。


「あれが砂鮫……ゴーレムよりもやばそうだな」
「当たり前だ!!奴はレベル4の危険種だぞ!?」


レベル4の危険種はミノタウロスやサイクロプスと同等の存在を意味するため、今回の砂鮫は魔人族並に厄介な相手と知ったレナは急いで場所を移動する。気配感知の能力で砂鮫が移動する位置は把握出来るのだが、砂の上を移動する事に慣れていないレナと海の中を泳ぐように移動できる砂鮫では移動速度が違うため、狙いを定められれば逃げ切れる事は出来ない。


(くそっ……武器がないときにこんな大物と戦わされる事になるとは……仕方ない、ここは初心に戻るか!!)


背後から接近する砂鮫の気配を感じ取り、レナは深淵の森で暮らしていた時のように碌な武器もない状況で編み出した「氷装剣」を発動させ、迎撃の態勢を整える。






※ややこしいので死合場→試験場に統一しました。
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