不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
460 / 2,091
放浪編

閑話 〈ウル〉

しおりを挟む
――冒険都市にて転移されたのは人間だけではなく、魔獣であるウルも例外ではなかった。だが、幸いというべきかウルが飛ばされたのは彼の故郷である深淵の森からそれほど離れていない草原であり、ウルははぐれてしまった仲間を探し回っていた。


「クゥ~ンッ……」


定期的に仲間達の臭いを感じられないのか確認しながらウルは草原を移動し、冒険都市へ向かう。その途中、以前にレナとゴブリンを討伐する際に救った村を発見し、ここにレナが立ち寄っていないのかを確かめるために訪れる。


「ウォンッ!!」
「うわっ!?なんだこのデカい狼は!?」
「いや、待て……この狼、もしかして前に来た冒険者さんの所の狼じゃないか?」
「クゥ~ンッ」


村の中に白狼種が入ってきたことに村人は驚くが、すぐにレナの事を覚えていた村人が近寄り、襲ってこない事を確認してから住民達に安全を告げる。


「大丈夫だ!!こいつはウルという名前の冒険者さんのペットだ。こう見えても可愛い奴さ、だろ?」
「ウォンッ」
「おお、本当だ!!ウルじゃねえか!!またでっかくなったなお前!!」
「あ、ウルちゃんだ!!また背中に乗せて~!!」


ウルの元にすぐに村人は集まり、特に子供達は嬉しそうにウルの身体に抱き着く。自分に群がる子供達に舌で舐めながらもウルはレナの姿を探す。


「ウォンッ?」
「ん?どうした?腹でも減ってるのか?」
「そういえば今日はご主人様はどうしたんだ?一緒じゃないのか?」
「クゥ~ンッ……」


村人の言葉を聞いてウルはレナがこの村に立ち寄っていない事を悟り、落ち込んだように身体を伏せると、その反応を見て村人たちは不思議がる。主人がいないと確認したウルは村を立ち去ろうとするが、不意に聞き覚えのある声を耳にした。


「あれ!?そこにいるのって……もしかしてウルちゃんじゃないっすか!?ティナ様、ウルちゃんですよ!!」
「え、本当に!?」
「キュロロロッ!!」
「ウォンッ?」


ウルは振り返ると村の出入口にアインの両肩に乗ったティナとエリナの姿を発見し、3人は嬉しそうにウルの元へ近寄り、真っ先にティナはウルに抱き着く。


「やっぱりウルちゃんだ!!このモフモフ具合、本物だよ~!!」
「キュロロッ♪」
「ウォンッ♪」


まさかこのような場所で3人と再会するとは思わなかったウルは嬉しそうに身体を摺り寄せ、その柔らかな毛皮で受け入れる。しかし、すぐに身を話して何が起きたのかを尋ねた。


「ウォンッ!!ウォオンッ!!」
「えっと、何か伝えたいみたいですけど……何て言ってるんですかね?」
「んとね……レナ君の事を知らないかだって?」
「キュロロッ?」


魔物使いでもあるティナはウルの言葉をある程度理解できるのか彼が何を尋ねたいのかを理解したが、生憎とティナ達もレナ達の間に何が起きたのか知らない様子だった。それでもここで知り合いと出会えたことは嬉しく、ウルは3人の身に何が起きたのかを問う。


「クゥンッ?」
「あ、私達はね、今からヨツバ王国に戻る途中なんだよ。ちょっと、色々とあってね」
「ウォンッ?」


帰国するというティナの言葉にウルは首を傾げ、彼女達の他の護衛の姿は見えず、それどころか馬車さえも乗っていない事に疑問を抱く。だが、目的を思い出したのかエリナはティナの肩を掴む。


「あ、忘れてた!!ティナ様、こんな事をしている場合じゃないっすよ!!すぐに逃げないと……」
「そ、そうだね。ごめんねウルちゃん、また今度遊ぼうね!!」
「クゥ~ンッ?」


足早に立ち去ろうとするティナ達にウルは首を傾げ、一体何をそんなに急いでいるのか気になったウルは後を追いかけようとした時、村の出入口の方でアインの悲鳴が響き渡る。


「キュロロロロッ!?」
「アインちゃん!?」
「くそ、もう追い付いたんすか!?」
「ウォンッ!?」


アインの悲鳴を耳にしたエリナは右腕に装着したボーガンを構え、ティナを庇う。ウルは何が起きたのかとアインに視線を向けると、そこには目元を両手で覆うアインと緑色のフードで身を覆い隠した森人族の集団が存在し、エリナたちを取り囲む。


「な、何なんだあんたらは!?」
「おい、止めろ!!その子達が何をしたって……」
「汚れた人間が……我等の邪魔をするな!!」
「グルルルッ……!!」


森人族の集団がティナ達を取り囲むのを見て村の大人たちが止めようとしたが、森人族たちは弓矢を村人に構えて邪魔をしないように牽制する。その姿を見てウルは唸り声をあげ、主人の友人を傷つけようとする彼等に牙を剥く。


「何だこいつは……白狼種?どうしてこんな所に希少種がいる」
「どうでもいい。それよりも姫様を確保するぞ」
「ち、近寄よるなっす!!いくら同僚でもティナ様に手を出したら許さないっすよ!!」
「ふん、成り上がりの王国四騎士が……我等の邪魔をするな!!」
「え、エリナちゃん……!!」


ティナに近付こうとする森人族たちにエリナはボーガンを構えるが、多勢に無勢でこのままでは捕まってしまう。そう判断したウルは二人を救うため、雄たけびを上げて森人族の集団に襲い掛かった。


「ウォオオンッ!!」
「なっ!?こいつ……獣の分際で!!」
「待て、殺すな!!魔獣にはこれが一番だ!!」


包囲網を飛び越えてティナとエリナの元に着地したウルに向けて森人族の一人が袋を取り出し、中身を放とうとする。だが、嫌な予感を覚えたウルは相手が袋を投げつける前に右前脚で振り払う。


「ガウッ!!」
「うわっ!?」
「馬鹿が!!何をしている!?」


ウルが前脚で袋を振り払うと、中に入っていた茶色の粉が森人族の集団に降りかかり、全員が激しく咳き込む。それを見たウルは以前にバジルという旧帝国の幹部と戦った時に見かけた魔物の糞を粉状になるまですり潰した物だと判断し、まともに受けていれば無事では済まなかった事を悟る。


「ウォンッ!!」
「わあっ!?」
「きゃあっ!?」
「ま、待て……げほほっ!?」


即座にウルはエリナとティナを口で咥えて背中に移動させると、包囲網を突破して駆け出す。森人族の集団は慌てて後を追いかけるが、足の速さならば竜種ですらも簡単に追いつけない白狼種のウルに敵うはずがなく、どんどんと距離を開かれていった――



※あちこちで問題が起きてますね。レナ、早く来てくれ~!!( ゚Д゚)
しおりを挟む
感想 5,096

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。