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放浪編

まさかの再会 〈デジャウを感じるbyレナ〉

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――ネズミの協力の元で無事に監獄都市から抜け出したレナとゴンゾウは2日ほど山岳地帯を進むと、遂に獣人国の街へと到着する。獣人国では街によって番号名が付けられており、馬車が到着した街の名前は「1番街」と呼ばれている街だった。

馬車は街の城門で停止すると、二人を下ろして関所へ帰還する。去り際に話し相手になってくれた気さくな兵士がレナとゴンゾウに紙袋を渡す。


「じゃあなお前等!!これは俺からの選別だ。元気でな!!」
「ありがとうございます」
「世話になったな」
「気にするなよ!!達者でな!!」


気さくな兵士は笑い声を上げながら馬車を関所へ引き返し、その後姿を見送るとレナとゴンゾウは紙袋の中身を確認する。袋の中には布製の小袋が入っており、中身は銅貨が十数枚程入っていた。どうやら出所した囚人の選別品らしく、他にも兵士が手作りでつくったと思われるクッキーが中に入っていた。


「お金と食べ物か……一応は空間魔法に予備があるけど、有難いね」
「うん、中々美味いぞ」
「もう食ってるし……でも、仕方ない。まずは腹から満たそうか」
「そうだな!!」


クッキーを口に頬張りながらゴンゾウはレナの言葉に頷き、二人は扉を潜り抜ける。今更ながらに他国の街へ訪れる事が初めてのレナは街や住民の様子を伺い、冒険都市とは大きく違う事を知る。


「当たり前だけど、獣人族ばっかりだね」
「獣人国だからな」
「それに建物も木造製ばっかだな」
「俺の国も似たような物だぞ」


街中には獣人族以外の種族は殆ど存在せず、大半の建物は煉瓦製ではなく木造製で構成され、街のあちこちには屋台が並んでいた。街の何処に移動しても食べ物の匂いが漂い、冒険都市よりも活気にあふれていた。


「らっしゃいらっしゃい!!お、そこの御二人さんは外国人だね?どうだいうちの串焼きは?」
「へえっ、串焼きか……ねえ、これどう見ても鶏肉には見えないんだけど?」
「そりゃそうさ!!なんたってモウギュウの肉焼きだからな!!」
「ほう、それは食いごたえがありそうだな」


串焼きの屋台と言っても販売しているのは鳥の肉ではないらしく、恐らくはこの世界の牛型の魔獣の肉を串で刺して焼いたものらしく、外見はどちからというとケバブに近い。ゴンゾウは嬉々とした表情で先ほどの小袋の銅貨を支払い、串焼きを1本購入する。


「う、美味い!!」
「あはははっ!!そう喜んでくれるとこっちも嬉しいね。ほら、そこの兄ちゃんにはこいつをおまけしてやるよ。ちょっと小さいけど我慢してくれよ」
「どうも……あ、本当に美味しい」


レナも小ぶりの肉が突き刺さった肉を口にすると、冒険都市で輸入される食材の肉よりも良い味だった。二人は串焼きを食べながら街道を歩き、今後の事を話し合う。


「レナ、これからどうする?冒険都市に戻るのか?」
「まあ、当面の目標はそうなるね。でも、他の皆も事も気になるし、もしかしたら俺達のように別の場所に飛ばされているかもしれないから探してみよう」
「都市に戻らないのか?」
「都市に戻りながら皆を探す、そのためにはまず足が必要だな……ウルがいればよかったけど」


他の場所に向かうにしても移動手段がなければ不便のため、ゴンゾウでも乗り込むことが出来る馬車のような乗り物を探す必要がある。ウルが存在すれば馬よりも早く移動する事が出来たのだが、生憎とレナの近くに転移していれば臭いを辿って姿を現すはずなので残念ながらウルはこの地域には転移していない可能性が高い。


「ふうっ……ずっと馬車に揺すられていたから少し疲れたな。ここで休もうか」
「そうだな……綺麗な川だな」
「あ、本当だ。魚もいっぱいいるね」


レナとゴンゾウは橋の上で立ち止まり、川の様子を伺うと大きな魚がちらほらと見えた。土手の方で魚釣りを行う獣人も多く、少し間だけ休憩を挟む。

既に監獄都市に二人が転移してから四日が経過しており、冒険都市の方ではどのような事態に陥っているのか気になるが、現状では仲間が無事である事を祈るしか出来ない。橋の上で二人はため息を吐き出し、これまでの道中でまとも身体を休める暇もない事を思い出した。


「のどかな光景だな……本当、こんな状況じゃなかったら観光を楽しめるのに」
「そうだな……ん?」
「どうかした?」
「いや、川の方で何か動いたような……」


ゴンゾウの言葉を聞いてレナは川の中を覗き込むと、一際大きな魚の影がこちらの方に近付いている事に気付き、何故かレナは嫌な予感を覚えてゴンゾウから橋から離れるように注意する。


「ゴンちゃん!!ここから離れて!!」
「何?どうしたんだ?」
「いいから早く……うわっ!?」


レナの言葉に反応したように水面に派手な水飛沫が発生し、水中から巨大な鮫を口に咥えた少女が飛び出す。彼女は橋の上に着地すると、水飛沫を浴びて水浸しとなったレナとゴンゾウに振り返る。


「……れふぁ、ほんぞ、ひはいぶり」
「まずは口に咥えているのを離してから喋れ……元気そうで嬉しいよコトミン」


約4日ぶり再会を果たした人魚族の少女にレナは笑みを浮かべ、彼女は口元の鮫を地面に下ろすと、両腕を広げて二人に飛びついた――
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