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放浪編
閑話 〈ウル〉
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――冒険都市にて転移されたのは人間だけではなく、魔獣であるウルも例外ではなかった。だが、幸いというべきかウルが飛ばされたのは彼の故郷である深淵の森からそれほど離れていない草原であり、ウルははぐれてしまった仲間を探し回っていた。
「クゥ~ンッ……」
定期的に仲間達の臭いを感じられないのか確認しながらウルは草原を移動し、冒険都市へ向かう。その途中、以前にレナとゴブリンを討伐する際に救った村を発見し、ここにレナが立ち寄っていないのかを確かめるために訪れる。
「ウォンッ!!」
「うわっ!?なんだこのデカい狼は!?」
「いや、待て……この狼、もしかして前に来た冒険者さんの所の狼じゃないか?」
「クゥ~ンッ」
村の中に白狼種が入ってきたことに村人は驚くが、すぐにレナの事を覚えていた村人が近寄り、襲ってこない事を確認してから住民達に安全を告げる。
「大丈夫だ!!こいつはウルという名前の冒険者さんのペットだ。こう見えても可愛い奴さ、だろ?」
「ウォンッ」
「おお、本当だ!!ウルじゃねえか!!またでっかくなったなお前!!」
「あ、ウルちゃんだ!!また背中に乗せて~!!」
ウルの元にすぐに村人は集まり、特に子供達は嬉しそうにウルの身体に抱き着く。自分に群がる子供達に舌で舐めながらもウルはレナの姿を探す。
「ウォンッ?」
「ん?どうした?腹でも減ってるのか?」
「そういえば今日はご主人様はどうしたんだ?一緒じゃないのか?」
「クゥ~ンッ……」
村人の言葉を聞いてウルはレナがこの村に立ち寄っていない事を悟り、落ち込んだように身体を伏せると、その反応を見て村人たちは不思議がる。主人がいないと確認したウルは村を立ち去ろうとするが、不意に聞き覚えのある声を耳にした。
「あれ!?そこにいるのって……もしかしてウルちゃんじゃないっすか!?ティナ様、ウルちゃんですよ!!」
「え、本当に!?」
「キュロロロッ!!」
「ウォンッ?」
ウルは振り返ると村の出入口にアインの両肩に乗ったティナとエリナの姿を発見し、3人は嬉しそうにウルの元へ近寄り、真っ先にティナはウルに抱き着く。
「やっぱりウルちゃんだ!!このモフモフ具合、本物だよ~!!」
「キュロロッ♪」
「ウォンッ♪」
まさかこのような場所で3人と再会するとは思わなかったウルは嬉しそうに身体を摺り寄せ、その柔らかな毛皮で受け入れる。しかし、すぐに身を話して何が起きたのかを尋ねた。
「ウォンッ!!ウォオンッ!!」
「えっと、何か伝えたいみたいですけど……何て言ってるんですかね?」
「んとね……レナ君の事を知らないかだって?」
「キュロロッ?」
魔物使いでもあるティナはウルの言葉をある程度理解できるのか彼が何を尋ねたいのかを理解したが、生憎とティナ達もレナ達の間に何が起きたのか知らない様子だった。それでもここで知り合いと出会えたことは嬉しく、ウルは3人の身に何が起きたのかを問う。
「クゥンッ?」
「あ、私達はね、今からヨツバ王国に戻る途中なんだよ。ちょっと、色々とあってね」
「ウォンッ?」
帰国するというティナの言葉にウルは首を傾げ、彼女達の他の護衛の姿は見えず、それどころか馬車さえも乗っていない事に疑問を抱く。だが、目的を思い出したのかエリナはティナの肩を掴む。
「あ、忘れてた!!ティナ様、こんな事をしている場合じゃないっすよ!!すぐに逃げないと……」
「そ、そうだね。ごめんねウルちゃん、また今度遊ぼうね!!」
「クゥ~ンッ?」
足早に立ち去ろうとするティナ達にウルは首を傾げ、一体何をそんなに急いでいるのか気になったウルは後を追いかけようとした時、村の出入口の方でアインの悲鳴が響き渡る。
「キュロロロロッ!?」
「アインちゃん!?」
「くそ、もう追い付いたんすか!?」
「ウォンッ!?」
アインの悲鳴を耳にしたエリナは右腕に装着したボーガンを構え、ティナを庇う。ウルは何が起きたのかとアインに視線を向けると、そこには目元を両手で覆うアインと緑色のフードで身を覆い隠した森人族の集団が存在し、エリナたちを取り囲む。
「な、何なんだあんたらは!?」
「おい、止めろ!!その子達が何をしたって……」
「汚れた人間が……我等の邪魔をするな!!」
「グルルルッ……!!」
森人族の集団がティナ達を取り囲むのを見て村の大人たちが止めようとしたが、森人族たちは弓矢を村人に構えて邪魔をしないように牽制する。その姿を見てウルは唸り声をあげ、主人の友人を傷つけようとする彼等に牙を剥く。
「何だこいつは……白狼種?どうしてこんな所に希少種がいる」
「どうでもいい。それよりも姫様を確保するぞ」
「ち、近寄よるなっす!!いくら同僚でもティナ様に手を出したら許さないっすよ!!」
「ふん、成り上がりの王国四騎士が……我等の邪魔をするな!!」
「え、エリナちゃん……!!」
ティナに近付こうとする森人族たちにエリナはボーガンを構えるが、多勢に無勢でこのままでは捕まってしまう。そう判断したウルは二人を救うため、雄たけびを上げて森人族の集団に襲い掛かった。
「ウォオオンッ!!」
「なっ!?こいつ……獣の分際で!!」
「待て、殺すな!!魔獣にはこれが一番だ!!」
包囲網を飛び越えてティナとエリナの元に着地したウルに向けて森人族の一人が袋を取り出し、中身を放とうとする。だが、嫌な予感を覚えたウルは相手が袋を投げつける前に右前脚で振り払う。
「ガウッ!!」
「うわっ!?」
「馬鹿が!!何をしている!?」
ウルが前脚で袋を振り払うと、中に入っていた茶色の粉が森人族の集団に降りかかり、全員が激しく咳き込む。それを見たウルは以前にバジルという旧帝国の幹部と戦った時に見かけた魔物の糞を粉状になるまですり潰した物だと判断し、まともに受けていれば無事では済まなかった事を悟る。
「ウォンッ!!」
「わあっ!?」
「きゃあっ!?」
「ま、待て……げほほっ!?」
即座にウルはエリナとティナを口で咥えて背中に移動させると、包囲網を突破して駆け出す。森人族の集団は慌てて後を追いかけるが、足の速さならば竜種ですらも簡単に追いつけない白狼種のウルに敵うはずがなく、どんどんと距離を開かれていった――
※あちこちで問題が起きてますね。レナ、早く来てくれ~!!( ゚Д゚)
「クゥ~ンッ……」
定期的に仲間達の臭いを感じられないのか確認しながらウルは草原を移動し、冒険都市へ向かう。その途中、以前にレナとゴブリンを討伐する際に救った村を発見し、ここにレナが立ち寄っていないのかを確かめるために訪れる。
「ウォンッ!!」
「うわっ!?なんだこのデカい狼は!?」
「いや、待て……この狼、もしかして前に来た冒険者さんの所の狼じゃないか?」
「クゥ~ンッ」
村の中に白狼種が入ってきたことに村人は驚くが、すぐにレナの事を覚えていた村人が近寄り、襲ってこない事を確認してから住民達に安全を告げる。
「大丈夫だ!!こいつはウルという名前の冒険者さんのペットだ。こう見えても可愛い奴さ、だろ?」
「ウォンッ」
「おお、本当だ!!ウルじゃねえか!!またでっかくなったなお前!!」
「あ、ウルちゃんだ!!また背中に乗せて~!!」
ウルの元にすぐに村人は集まり、特に子供達は嬉しそうにウルの身体に抱き着く。自分に群がる子供達に舌で舐めながらもウルはレナの姿を探す。
「ウォンッ?」
「ん?どうした?腹でも減ってるのか?」
「そういえば今日はご主人様はどうしたんだ?一緒じゃないのか?」
「クゥ~ンッ……」
村人の言葉を聞いてウルはレナがこの村に立ち寄っていない事を悟り、落ち込んだように身体を伏せると、その反応を見て村人たちは不思議がる。主人がいないと確認したウルは村を立ち去ろうとするが、不意に聞き覚えのある声を耳にした。
「あれ!?そこにいるのって……もしかしてウルちゃんじゃないっすか!?ティナ様、ウルちゃんですよ!!」
「え、本当に!?」
「キュロロロッ!!」
「ウォンッ?」
ウルは振り返ると村の出入口にアインの両肩に乗ったティナとエリナの姿を発見し、3人は嬉しそうにウルの元へ近寄り、真っ先にティナはウルに抱き着く。
「やっぱりウルちゃんだ!!このモフモフ具合、本物だよ~!!」
「キュロロッ♪」
「ウォンッ♪」
まさかこのような場所で3人と再会するとは思わなかったウルは嬉しそうに身体を摺り寄せ、その柔らかな毛皮で受け入れる。しかし、すぐに身を話して何が起きたのかを尋ねた。
「ウォンッ!!ウォオンッ!!」
「えっと、何か伝えたいみたいですけど……何て言ってるんですかね?」
「んとね……レナ君の事を知らないかだって?」
「キュロロッ?」
魔物使いでもあるティナはウルの言葉をある程度理解できるのか彼が何を尋ねたいのかを理解したが、生憎とティナ達もレナ達の間に何が起きたのか知らない様子だった。それでもここで知り合いと出会えたことは嬉しく、ウルは3人の身に何が起きたのかを問う。
「クゥンッ?」
「あ、私達はね、今からヨツバ王国に戻る途中なんだよ。ちょっと、色々とあってね」
「ウォンッ?」
帰国するというティナの言葉にウルは首を傾げ、彼女達の他の護衛の姿は見えず、それどころか馬車さえも乗っていない事に疑問を抱く。だが、目的を思い出したのかエリナはティナの肩を掴む。
「あ、忘れてた!!ティナ様、こんな事をしている場合じゃないっすよ!!すぐに逃げないと……」
「そ、そうだね。ごめんねウルちゃん、また今度遊ぼうね!!」
「クゥ~ンッ?」
足早に立ち去ろうとするティナ達にウルは首を傾げ、一体何をそんなに急いでいるのか気になったウルは後を追いかけようとした時、村の出入口の方でアインの悲鳴が響き渡る。
「キュロロロロッ!?」
「アインちゃん!?」
「くそ、もう追い付いたんすか!?」
「ウォンッ!?」
アインの悲鳴を耳にしたエリナは右腕に装着したボーガンを構え、ティナを庇う。ウルは何が起きたのかとアインに視線を向けると、そこには目元を両手で覆うアインと緑色のフードで身を覆い隠した森人族の集団が存在し、エリナたちを取り囲む。
「な、何なんだあんたらは!?」
「おい、止めろ!!その子達が何をしたって……」
「汚れた人間が……我等の邪魔をするな!!」
「グルルルッ……!!」
森人族の集団がティナ達を取り囲むのを見て村の大人たちが止めようとしたが、森人族たちは弓矢を村人に構えて邪魔をしないように牽制する。その姿を見てウルは唸り声をあげ、主人の友人を傷つけようとする彼等に牙を剥く。
「何だこいつは……白狼種?どうしてこんな所に希少種がいる」
「どうでもいい。それよりも姫様を確保するぞ」
「ち、近寄よるなっす!!いくら同僚でもティナ様に手を出したら許さないっすよ!!」
「ふん、成り上がりの王国四騎士が……我等の邪魔をするな!!」
「え、エリナちゃん……!!」
ティナに近付こうとする森人族たちにエリナはボーガンを構えるが、多勢に無勢でこのままでは捕まってしまう。そう判断したウルは二人を救うため、雄たけびを上げて森人族の集団に襲い掛かった。
「ウォオオンッ!!」
「なっ!?こいつ……獣の分際で!!」
「待て、殺すな!!魔獣にはこれが一番だ!!」
包囲網を飛び越えてティナとエリナの元に着地したウルに向けて森人族の一人が袋を取り出し、中身を放とうとする。だが、嫌な予感を覚えたウルは相手が袋を投げつける前に右前脚で振り払う。
「ガウッ!!」
「うわっ!?」
「馬鹿が!!何をしている!?」
ウルが前脚で袋を振り払うと、中に入っていた茶色の粉が森人族の集団に降りかかり、全員が激しく咳き込む。それを見たウルは以前にバジルという旧帝国の幹部と戦った時に見かけた魔物の糞を粉状になるまですり潰した物だと判断し、まともに受けていれば無事では済まなかった事を悟る。
「ウォンッ!!」
「わあっ!?」
「きゃあっ!?」
「ま、待て……げほほっ!?」
即座にウルはエリナとティナを口で咥えて背中に移動させると、包囲網を突破して駆け出す。森人族の集団は慌てて後を追いかけるが、足の速さならば竜種ですらも簡単に追いつけない白狼種のウルに敵うはずがなく、どんどんと距離を開かれていった――
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