不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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放浪編

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――翌日の朝、どうにか宿が取れたレナは目を覚ますと、自分の背中にコトミンが抱きついて眠っている事に気付く。普段の彼女は大きな壺や瓶の中に水を入れて過ごすのだが、昨夜のレナの様子を心配したのか先に目を覚ましてベッドに潜り込んでいたらしい。


「……おはようレナ、昨日はお楽しみだった」
「おはようコトミン……それとそんな言葉を何処で覚えてきた」


背中に惜しげもなく年齢の割には立派に育った胸を押し付けてくるコトミンに対してレナは苦笑し、彼女を引き剥がしてベッドから起き上がる。昨夜は遅くに眠りについたはずだが不思議と疲れは取れており、頭も冴えていた。身体を軽く動かして準備体操を行うと、コトミンが肩をつつく。


「レナ、水を浴びたい」
「ああ、なら裏庭の方に井戸があるらしいから水浴びしてきなよ。今の時間帯なら誰も起きてないだろうし……」
「一緒に水浴びする?」
「風邪を引きそうだから遠慮しとく……それにゴンちゃんを起こさないとね」
「ふごぉおおっ……」


相部屋しか残っていなかったのでゴンゾウもレナと同じ部屋に寝泊まりしており、巨人族のベッドは存在しなかったので布団を2枚も敷いた上でゴンゾウは眠っていた。毎回ゴンゾウを起こすのはレナの役割であり、過去に皆で野宿したときにダインがゴンゾウの寝返りで潰されかけた事があってからレナがゴンゾウを起こすようになった。

今回はどのような手段でゴンゾウを起こすべきかレナは考えると、水浴びに向かうはずのコトミンがレナの肩を叩き、扉を指差す。


「レナ、誰か扉の前にいる」
「え?」


コトミンの言葉にレナが扉を振り返ると、ゴンゾウの鼾で気付かなかったが外側から何度かノックされている事に気付き、疑問を抱いたレナは念のために空間魔法を発動させて反鏡剣を取り出すと扉に話しかける。


「どなたですか?」
『朝早くに申し訳ありません。私は傭兵ギルドの者です、ここに宿泊されているのはレナ様で間違いないでしょうか?』
「傭兵ギルド……」


この街の傭兵ギルドの人間が何の用事で自分の元へ尋ねに来たのかとレナは疑問を抱くが、昨日に傭兵ギルドの人間と話した事を思い出し、事情聴取のために明日の朝にギルドに訪れるように言われた事を思い出す。ギルドとしても事件の当事者であるレナから詳しい話を聞きたいため、わざわざ職員を送り出してきたらしい。

だが、レナは自分が宿泊している宿に関してはギルドの人間には伝えておらず、どうして居場所が知られたのかと不思議に思い、それに扉越しに感じる気配が1つではない事に気付いて「心眼」の能力を発動させた。


(数は……3人か、それに武装しているな)


瞼を閉じて生物の放つ力を第六感で感じ取ったレナは扉の向こうに存在する人間の数と武器を身に着けている事を見抜き、不振を抱いたレナは扉の鍵を開けずに窓を確認する。


「ちょっと待ってください、今から着替えるので……」
「……?」


適当に誤魔化しながらコトミンに何も喋らないように人差し指を口元に移動させ、窓を開いてそのまま壁にしがみついて通路側の窓から様子を確認する。案の定というべきか通路には明らかに柄の悪い男性が立っており、一人は縄と袋を抱えていた。

どう見てもギルドが出迎えのために派遣した傭兵には見えず、窓から通路の様子を確認しながらレナは部屋に戻ると、コトミンにゴンゾウを起こす様に指示する。


「コトミン、ゴンちゃんを起こしておいて……俺はちょっと部屋の外を掃除してくる」
「分かった。ゴンゾ、起きて……」
「ううんっ……あと少しだけ」


コトミンが優しくゴンゾウを揺らして起こそうとするが、子供のようにゴンゾウは毛布にくるまり、それを見たコトミンがぽかぽかと軽く背中を叩く。その間にレナは扉に手を掛け、鍵を開けるのと同時に勢いよく扉を開く、


「ていっ!!」
「ふげっ!?」
「あっ、おい!?」
「馬鹿野郎!!何してんだ!?」


扉の前に立っていた男は顔面を強打して後ろに倒れ込み、それを見た二人が慌てるが、その隙を逃さずにレナは通路に出ると壁を蹴って二人目の男の顔面を蹴りつける。


「とりゃっ!!」
「げふっ!?」
「相棒!?」


三角飛びの要領で二人目を倒すとレナは空中に浮かんだ状態で右手を後ろに差し出し、風圧の魔法を利用して最後の男に目掛けて風の力で勢いを付けた踵落としを頭部に放つ。


「頭上注意!!」
「うきぃっ!?」


猿のような悲鳴をあげて最後の男が白目を剥いて倒れ込み、無事に着地したレナは床に倒れた3人の様子を伺う。完全に気絶している事を確認すると身に着けている武器を取り上げ、ついでに男達が持参していた縄を利用して逆に拘束を行う。やがて異変に気付いたのか寝ぼけ眼のゴンゾウを連れて来たコトミンが通路の惨状を見て驚きの声を上げる。


「はっ……死体現場?コトミンは見た」
「そんな家政婦は見た、みたいな言い方してないでこいつらを縛るのを手伝ってよ……あ、ダメだゴンちゃん!!足元に気を付けて!?」
「ふああっ……ん?何だ?」
「ぐええっ!?」


まだ頭が覚醒していないゴンゾウが寝ぼけながら通路に足を踏み入れると、床に転がっていた男を踏みつけてしまい、情けない誘拐犯の悲鳴が宿中に響き渡った――
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