不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
471 / 2,090
放浪編

傭兵ギルドの調査

しおりを挟む
――誘拐を企んでいた3人組を捕まえたレナ達は彼等を傭兵ギルドの元まで連行すると、職員達が慌てて対応を行う。どうやら捕まえた3人は傭兵ギルドに所属した人間だったらしく、ギルド長室に案内されてギルド長自ら謝罪を受けた。


「申し訳ない!!今回の件、誠にご迷惑をお掛けしました!!」
「あの、顔を上げてください。一体何があったんですか?」


ギルド長を務めていたのは獣人族の老齢の男性であり、申し訳なさそうに頭を下げて謝罪を行う。だが、レナ達としては謝罪の言葉よりも何故自分達が襲われたのか知りたく、彼等が何の目的で襲撃してきたのかを質問する。


「あの3人を調べたところ、どうやら昨日に捕まえたガブ男爵と繋がりのあるダルンを慕っていた者達です。彼等はダルンが捕まったのが貴方達の報告である事を知り、逆恨みとして誘拐して奴隷商人に売り払うつもりだったようです」
「……酷い話ですね」
「本当に申し訳ありません……まさか、うちのギルドの人間がそのような悪事に加担していたとは……!!」
「むうっ……」


昨日にレナは男爵が捕まえる際にダルンも彼の共犯者として傭兵ギルドに報告していたため、両者は逮捕されて現在はギルド内で取り調べを受けている。だが、どちらも観念したのかこれまでに街中で行方不明になった子供達を誘拐した犯人は自分達である事を認めたという。

しかし、男爵に協力をしていたのはダルンだけではなく、彼を兄貴分として慕っていた複数名の傭兵も事件に関与しており、彼等は自分達が捕まる前に二人が捕まった原因であるレナ達の誘拐を試みる。レナ達を奴隷商人に売り飛ばした後に逃げるつもりだったらしいが、結局は返り討ちにされた事になる。


「どううやら男爵は不特定多数の傭兵と繋がりを持っていたようで……現在は職員を含めて傭兵ギルドに所属する全員に取り調べを行っています。それと殺された子供の親が殺到して男爵を出す様に喚き散ら有様でして……」
「子供を失ったのだから当然の事だな」


子供の行方不明事件の犯人が男爵である事は既に街中に知れ渡っており、傭兵ギルドの前では大勢の民衆が詰め寄っていた。男爵を罵倒する者、あるいは男爵の無実を信じる者、殺された子供の親類が集まって事件の真相を問い質す声が窓から聞こえ、ギルド長は頭を抱えながら今回の事態をどのように対処すべきか思い悩む。


「正直、私も男爵と親交はあったのですが未だに信じられません……あれほど子供好きな方がこんな凶行を起こしていたなんて……」
「だけど事実です。生き残っていた子供達はどうしていますか?」
「今は治療院の方で治療を受けています。ですが、身体の一部を失っている子供の感知は難しく、恐らく何らかの後遺症が残るでしょう」
「そう、ですか」


回復薬の類には肉体を再生させる物も存在するが、あまりに怪我を負ってから長い時間が経過していると完治は難しく、拷問を受けていた子供達の精神状態の事を考えても治療は長引くと考えられた。

男爵の屋敷を調査した結果、これまでに100名近くの子供を誘拐し、殺害していた事が発覚したため、男爵と彼に協力した人間達は重罪は免れないだろう。人望が厚かった男爵が子供の誘拐事件の犯人であるなど住民の誰もが予想も出来ず、逆に信じていたからこそ非道を行った男爵を許せない人間も多い。


「あの……一つ聞きたい事があるんですけど、男爵の息子さんを死霊人形にした死霊使いというのは見つかったんですか?」
「いえ、事情聴取の際にはどうやら男爵は流れ者の人間に依頼したらしく、死霊使いの詳細は女性である事以外に判明していません。ですが、支払った代金や渡した物に関しては判明しています」
「渡した物……それはどんな物ですか?」


事前にダルンから事情を聞いていたレナだが、男爵が死霊使いに渡したという「家宝」については内容を聞いていない事を思い出し、ギルド長に尋ねると彼は資料を片手に困惑した表情を浮かべる。


「話を聞く限り、どうやら特殊な魔道具のようですね。なんでもガブ男爵家に伝わる家宝らしくて……翼のような形をした装飾品アクセサリーだそうです」
「翼……なら、それはどんな効果を生む魔道具ですか?」
「男爵の話を聞く限りではなんでも冒険者だった曾祖父が持って帰ってきた貴重な魔道具らしく、身に着けるだけで本物の鳥のように空を飛べる魔道具らしいです。まあ、実際に男爵は試した事はないらしいので本当に魔道具にそんな力があったのかは分からないそうですが……」
「そうですか……」
「レナ、何か気になるのか?」


ギルド長の言葉を聞いてレナは納得したように頷き、隣に座るゴンゾウがレナの反応を見て不思議そうに尋ねると、レナは死霊使いの正体が判明した事を話す。


「翼のような形をした魔道具を持つ死霊使いに心当たりがあります。名前はキラウ、多分死霊使いの中でも最悪の部類にはいる性悪女です」
「き、キラウ!?あの悪名高い死霊使いですか……!?」
「なるほど、奴か……腐敗竜を操った死霊使いだな」
「レナと少し顔が似てるオバさん?」


キラウの名前を口にした途端にギルド長は震えあがり、どうやら獣人国でもキラウの悪名は有名らしく、レナもまさかこの土地でキラウが「神器」を入手した事を知る事になるとは思わなかった。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。