不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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最終章 前編 〈王都編〉

真の回復魔法

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「ブ、ギィイイイッ……!?」
「な、何だ!?」
「腕が……再生している!?」
「ええっ!?」


過去にレナに切り落とされたミノタウロスの腕が再生を始め、皮膚を突き破って筋肉が盛り上がり、腕の形に変形を果たす。そして敗れた皮膚が再生され、やや細身ではあるが完全に失われたはずの腕が再生した。ミノタウロスは再生した腕を呆然とした視線を向け、正面に立つティナに視線を向ける。


「あ、あれ?傷だけを回復するつもりだったんだけど……」
「ブモォオッ!!」
「す、凄い……肉体を再生させる回復魔法が扱えるなんて治療院の神官クラスの腕前だぞ!?」
「レナの回復魔法よりも凄い……」
「まあ、俺の場合は自然回復能力を強化させる程度だからね。それにしても……凄いな」


再生した腕を握り締めながらミノタウロスはティナに視線を向け、彼女が自分の失われた腕を再生してくれたことを理解すると、その場に跪く。


「ブモォオオッ……!!」
「あ、あれ?どうしたの!?気分が悪いの!?」
「いや、きっとお礼を言ってるんですよ。ですよね?」
「多分……狼語は分かるけど牛語は分からないや」


自分の腕を治してくれた事を理解したミノタウロスはティナに頭を下げ続け、この調子ならば彼女が使役化する事も承諾するのは間違いない。だが、ここから先が重要なのでレナはティナに契約を行うように促す。


「ティナ、こいつと契約してくれる?」
「え、でもいいのかな?」
「大丈夫っす!!ちゃんと習った通りにやれば出来ますよ!!」
「う、うん……分かった!!」


ティナは恐る恐るミノタウロスの元に近付き、その額に掌を押し付ける。彼女の行為にミノタウロスは抵抗する素振りを見せず、そのままティナは意識を集中させながら反対の腕の手先に魔力を手中させた。


「汝、我が願いに答えて契約を交わす事を誓え……」
「ブモォッ……!?」


掌が額から離れた瞬間、ミノタウロスの額に円形の魔法陣が誕生し、ティナは魔法陣の内部に光り輝く指先を向けて紋様を描く。相当に神経を集中させるのか普段の彼女からは考えられない真剣な表情で紋様を描く。


「ふうっ……我が言葉に従い、その力を示せ!!」
「ブモォオオオッ!!」
「うわっ!?」
「な、何だ!?」


ミノタウロスとの契約が成功したのか、ティナが指先を離した瞬間にミノタウロスの身体が光り輝き、折れていた頭の角が再生を果たす。ミノタウロスの変化に全員が戸惑う中、魔力感知のスキルを持つ者はミノタウロスの変化に気付く。

ティナと契約を交わした瞬間にミノタウロスの体内から感じられる魔力が膨れ上がり、再生した腕も膨れ上がって完璧に元の状態へ戻った。これはどういう事なのかとレナ達はエリナとティナに視線を向けると、エリナが説明を行う。


「凄いっす!!このミノタウロスはティナ様と契約した時に魔力を取り込んで成長したんですよ!!多分、前よりも強くなってます!!」
「わあっ……大きくなたっね~」
「ブモォッ!!ブモオオッ!!」
「キュロロッ……」


ゴリラのように胸板を叩くミノタウロスにアインは困った風にレナに視線を向けると、もう拘束は必要ないと判断したレナはミノタウロスに忠告を行う。


「よし、これでお前はティナの僕だ。一応は言っておくけど、もしも俺達を裏切ろうとした時は今度こそ叩き切るからな?」
「ガウッ!!」
「ブフゥッ……!!」


レナとウルの警告にミノタウロスは一瞥すると、黙って頷く。予想外に傷の治療どころか腕の再生と肉体の成長したミノタウロスをティナの僕として従えさせることに成功したレナ達は屋敷に戻る事にした――




――翌晩、屋敷の前で準備を整えたレナはダインと共にウルに乗り込み、コトミンとエリナを両肩に乗せたアインに振り返る。ゴンゾウとティナとミノタウロスは今回は屋敷の留守番を任せ、この4人と2匹で偵察を行う事が決まった。


「俺達は冒険都市に向かうから、コトミン達は川を下って村を回って他の仲間を探して。出来る限り目立つ行動は避けてね」
「うぃっす!!でも、兄貴はともかくダインの兄さんは大丈夫なんですか?」
「おい、馬鹿にするなよ!?僕だってこう見えても隠密のスキルを持ってるんだぞ!!」
「ダイン、レナの足を引っ張らないように気を付けて」
「キュロロッ」
「大丈夫だってば……よし、夕方までにここに戻ってくるように気を付けて」
「皆、気を付けろ」
「御飯は頑張って用意しておくからね!!」
「ブモォッ……」


留守番組のゴンゾウ、ティナ、ミノ(ミノタウロスの愛称、ティナが命名)の見送りを受けながらレナ達は森の中に入り込む。木々を潜り抜け、森を抜けるまでの間にレナは先日のアイリスからの助言を思い出す。


『現在の冒険都市には王妃が滞在しています。なので警備も厳重ですが、ここは先日のゴブリン達のように地下から忍び込みましょう。そして地上に存在する冒険者達と合流してください』
『既に黒虎、氷雨、牙竜の3つのギルドには王国軍の兵士が滞在しています。彼等と接触するのは難しいでしょうが、そこはどうにか頑張って忍び込んでください』
『王妃は冒険都市の古城にいるはずですからホネミンさんもそこの何処かにいるはずです。出来れば救出して欲しい所ですが、無理はしないでくださいね』


アイリスからの助言を思い出しながらレナは背後を振り返り、ウルに振り落とされないように必死にしがみついているダインに注意する。


「ダイン!!都市に忍び込むときは目立つ行為は出来ないから気を付けてよ!!」
「わ、分かってるよ!!でも、このままウルに乗って都市に近付くのは危険じゃないのか!?」
「大丈夫、俺達は途中で降りてウルには敢えて別の方角から都市に忍び込んでもらう。警備がウルに集中している間に俺達は忍び込むよ!!」
「ウォンッ!!」


自分に任せろとばかりにウルは速度を上昇させ、遂に深淵の森を抜け出して草原を駆け抜ける。その途中、魔物の群れと遭遇したが本気で走る白狼種の足に追いつける魔物など滅多に存在せず、無駄な交戦を避けてレナ達は冒険都市へ向かう。


「見えてきた!!ここで降りよう!!」
「こ、こんな場所で?まだ結構距離があるけど……」
「俺達が見える距離なら相手にも見える距離なんだよ」
「クゥンッ……」


冒険都市から1キロほど離れた場所でウルと別れ、二人は歩いて都市へ向かう。正面から乗り込む事は出来ないので地下の下水道を利用して地上へ忍び込む必要があり、ウルに囮役を任せる。


「ウル、出来る限り目立つように走ってくれ。危険と判断したらすぐに逃げるんだぞ」
「ウォンッ!!」
「ううっ……緊張してきた。漏らさないようにちょっとそこの茂みで用を足してくる」
「クゥ~ンッ……」


言葉の割には緊張感が感じられないダインにウルが呆れた表情を浮かべるが、ここから先は一つのミスも許されず、王国軍に見つからずに冒険者達と接触しなければならない。レナはウルの頭を撫で上げると冒険都市と向かい合い、約5日ぶりの帰還を果たす。


「よし、行こう」
「ウォンッ!!」
「お、おう!!」


ウルは反対方向から都市に侵入するために駆け出し、その間にレナとダインは旅行客を装って冒険都市へ接近するために変装用の衣装に着替える。ある程度にまで近づけば先日のゴブリンの襲撃に利用された地下通路に繋がる出入口に辿り着くため、二人は日が暮れる前に屋敷に戻るために行動を開始した。
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