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最終章 前編 〈王都編〉
閑話 〈愚者〉
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――王城の一室には老人のように痩せ細り、白髪に染まった男性がベッドの上で横たわっていた。彼の名前は「シンジ」バルトロス王国の13代目国王を務める男だった。
「哀れね……利用された人間の末路というのは」
「う、ぐぅっ……」
そんな国王の前には王妃が座り込み、間もなく命が尽きようとしている国王に対して覚めた目を向ける。この男と結婚し、子供を授かったにも関わらずに王妃は国王に対して一切の愛情は抱いていなかった。だが、彼の境遇に対しては同情もしている。
「お互いに難儀な立場に生まれた者ね。聞こえていないでしょうけど、貴方は兄の代わり……私は姉弟の代わりとして生きてきたわ」
「…………」
意識もない国王に対して王妃は窓から見える外の景色に視線を向け、この国王と自分の境遇が似通っている事を話す。国王は優秀過ぎる兄のせいで王位継承権すら与えられず、兄が死亡した事で結果的に国王の座に就く事が出来た。だが、その兄を謀殺したのが王妃である事すらも気付いてすらいない。
王妃がどうして先王を殺したのかというと、弟の方が国王である方が彼女にとっては都合が良く、何かと勘の鋭い先王が相手では彼女は今の地位に辿り着けなかっただろう。だから影で国王を支える一方でミドルを利用し、先王の命を討つ。
先王の子供達に手を出さなかったのは親を亡くした彼女達を不憫に思ったわけでもなく、バルトロス王族の血筋の人間が非常に優秀な人間が多いから利用しようと考えただけである。実際に先王の血筋を継いだ3人の娘は優秀な能力を持ち、それに彼女の計画が果たせば別に3人の娘の命を奪うことはなく彼女は「王」の座に就ける。
「ねえ、聞こえていないでしょうけど貴方には聞きたいことがあるの」
「うっ……」
王妃は国王の前に戻ると、ゆっくりと顔を近づけ、彼の耳もとに囁く。そして王妃が疑問を抱いていた質問を行う。
「貴方……本当に何も気づいていなかったの?」
自分に散々利用され続けた国王に対して王妃はそれだけを告げると、意識を失っていた国王の口が僅かに開き、その口元に王妃は耳を近づける。
「……あい、ら……」
「……最後の最後まで自分を唯一愛してくれた女の事を気に掛けるのね」
つまらない返答に王妃はため息を吐き出し、机の上に置いていた瓶に視線を向け、一思いに楽にしてやろうかと考えた。もうここまでくれば国王という存在は必要はなく、ここで命を絶つ方が王妃にとっても都合が良い。
「ここで貴方を殺せばナオやアイラはどう思うかしらね。いえ、あの二人よりも息子がどのような反応をするのかしら?自分を捨てた父親が死ねば喜ぶのか、それとも怒りを抱くのか、あるいは何も感じないのか……それだけは興味があるわ」
「れ、な……」
「……驚いたわ、本当に意識が戻っているの?」
一言だけ呟いた国王の言葉に王妃は素直に驚いた表情を浮かべ、まさかこの状況で国王が息子であるレナの名前を口にするとは思わなかった。だが、次の彼の言葉は更に王妃の意表を突く。
「……さ、くら……」
「……哀れな男ね」
自分の偽名を口にした国王に王妃はため息を吐き出し、この男は本気で自分を愛していたのかと哀れな感情を抱く。だが、彼の言葉を聞いても王妃の心は動かされず、そのまま彼女は部屋を退室した。せめてもの情けとして国王の命を絶たなかったのは彼女なりのけじめだろう。
「なお……」
王妃が立ち去った後、国王は自分の事を気にかけてくれた人物の名前を何度も呟き、その姿はまるで小さな子供がひとりになった時に寂しさを紛らわせるように家族の名前を言い続けるようにしか見えなかった――
「哀れね……利用された人間の末路というのは」
「う、ぐぅっ……」
そんな国王の前には王妃が座り込み、間もなく命が尽きようとしている国王に対して覚めた目を向ける。この男と結婚し、子供を授かったにも関わらずに王妃は国王に対して一切の愛情は抱いていなかった。だが、彼の境遇に対しては同情もしている。
「お互いに難儀な立場に生まれた者ね。聞こえていないでしょうけど、貴方は兄の代わり……私は姉弟の代わりとして生きてきたわ」
「…………」
意識もない国王に対して王妃は窓から見える外の景色に視線を向け、この国王と自分の境遇が似通っている事を話す。国王は優秀過ぎる兄のせいで王位継承権すら与えられず、兄が死亡した事で結果的に国王の座に就く事が出来た。だが、その兄を謀殺したのが王妃である事すらも気付いてすらいない。
王妃がどうして先王を殺したのかというと、弟の方が国王である方が彼女にとっては都合が良く、何かと勘の鋭い先王が相手では彼女は今の地位に辿り着けなかっただろう。だから影で国王を支える一方でミドルを利用し、先王の命を討つ。
先王の子供達に手を出さなかったのは親を亡くした彼女達を不憫に思ったわけでもなく、バルトロス王族の血筋の人間が非常に優秀な人間が多いから利用しようと考えただけである。実際に先王の血筋を継いだ3人の娘は優秀な能力を持ち、それに彼女の計画が果たせば別に3人の娘の命を奪うことはなく彼女は「王」の座に就ける。
「ねえ、聞こえていないでしょうけど貴方には聞きたいことがあるの」
「うっ……」
王妃は国王の前に戻ると、ゆっくりと顔を近づけ、彼の耳もとに囁く。そして王妃が疑問を抱いていた質問を行う。
「貴方……本当に何も気づいていなかったの?」
自分に散々利用され続けた国王に対して王妃はそれだけを告げると、意識を失っていた国王の口が僅かに開き、その口元に王妃は耳を近づける。
「……あい、ら……」
「……最後の最後まで自分を唯一愛してくれた女の事を気に掛けるのね」
つまらない返答に王妃はため息を吐き出し、机の上に置いていた瓶に視線を向け、一思いに楽にしてやろうかと考えた。もうここまでくれば国王という存在は必要はなく、ここで命を絶つ方が王妃にとっても都合が良い。
「ここで貴方を殺せばナオやアイラはどう思うかしらね。いえ、あの二人よりも息子がどのような反応をするのかしら?自分を捨てた父親が死ねば喜ぶのか、それとも怒りを抱くのか、あるいは何も感じないのか……それだけは興味があるわ」
「れ、な……」
「……驚いたわ、本当に意識が戻っているの?」
一言だけ呟いた国王の言葉に王妃は素直に驚いた表情を浮かべ、まさかこの状況で国王が息子であるレナの名前を口にするとは思わなかった。だが、次の彼の言葉は更に王妃の意表を突く。
「……さ、くら……」
「……哀れな男ね」
自分の偽名を口にした国王に王妃はため息を吐き出し、この男は本気で自分を愛していたのかと哀れな感情を抱く。だが、彼の言葉を聞いても王妃の心は動かされず、そのまま彼女は部屋を退室した。せめてもの情けとして国王の命を絶たなかったのは彼女なりのけじめだろう。
「なお……」
王妃が立ち去った後、国王は自分の事を気にかけてくれた人物の名前を何度も呟き、その姿はまるで小さな子供がひとりになった時に寂しさを紛らわせるように家族の名前を言い続けるようにしか見えなかった――
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