不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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最終章 王国編

最後の決戦準備

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――無事にアイラとの再会を果たしたレナは深淵の森に戻ると、既に草原からウルも引き返していた。全員が揃った事を確認するとレナは拠点を革命団の隠れ家へ変更する事を説明している間、ロプスの背中に乗ってハンゾウが返ってきた。彼女は一足先に冒険都市のドルトン商会へ向かい、依頼していた品物を受け取ってきたらしい。


「レナ殿、冒険都市のフェリス殿から物資と退魔刀を受け取って来たでござる!!」
「キュロロッ!!」
「おお、ありがとう二人とも……まさか本当に取ってきてくれたのか」
「僕の杖は!?」
「勿論、あるでござるよ」


ウルが不在だったので足代わりにティナからロプスを借りたハンゾウは収納石のブレスレットを差し出すと、異空間からレナの退魔刀とダインの新しい杖を取り出す。他にもフェリスが気を使って送ってくれた食料品や武器が詰め込まれた木箱も出現し、全員が群がる。


「うわ、凄いよこれ!!箱に入っているの全部一級品だよ!?」
「こちらの闘拳……相当に腕利きの鍛冶師が作り出したようですね」
「おおっ……巨人族用の鎧まであるのか」
「わあ、この腕輪綺麗だね~」


木箱の中身を全員が覗き込み、自分に必要な装備品を取り出して装着を行う。その一方でダインは木箱の中から自分の身長ぐらいの長さの杖を取り出し、全体を漆黒で塗りつぶされた杖には複数の闇属性の魔水晶が取り付けられ、それを見たダインは興奮を隠せずに鼻息を鳴らす。


「す、凄い……この杖、世界樹を加工して作り出してる。しかも7つの魔水晶まで取り付けられてるよ!!これなら僕の影魔法もとんでもなく強化されるぞ!?」
「良かったねダイン……それで俺の方は外見はあんまり変わってないかな」


レナはガジンに打ち直してもらった退魔刀に視線を向けると、魔法腕輪に取り付けられていた全ての魔水晶が刃の部分に食い込まれ、腕輪は柄の後部に取り付けられていた。刃の形状は特に変わったようには見えないが、以前よりも重量が増していた。

外見に大きな変化はないが性能面は確実に強化されているらしく、試しにレナが素振りを行うと以前よりも掌にしっくりと馴染み、魔法剣を試そうと掌を刃に構えると、刀身に一瞬で炎が纏う。


「おおっ……凄い、前よりも魔法剣が簡単に発動するようになった。それに少し重たくなったけど、今の俺にはこれぐらいが丁度いいや」
「流石は小髭族一の鍛冶師だよな!!よし、僕の影魔法もどれぐらい強化されたか試してやる……ウル、ちょっと手伝ってよ」
「ウォンッ?」


ダインに呼び出されたウルは不思議そうに彼に近付いて立ち止まると、自分よりも体格が大きいウルに対してダインは影魔法を発動させた。


「シャドウ・バインド……うわっ!?」
「キャインッ!?」
「ウル!?」


杖を地面に突き刺して影魔法を発動した瞬間、普段は一つの影しか生み出せないのだが、今回は複数の影が誕生してウルの肉体に纏わりつく。実体化した影はまるで触手のようにウルの全身を拘束し、動けないように縛り付ける。


「ガアアッ……!?」
「ダイン、ウルが苦しがってる!!早く解除して!!」
「ご、ごめん!!」


ウルが苦痛の表情を浮かべるとダインは慌てて杖を引き抜いて影魔法を解除した。その瞬間、拘束していた影の触手が消えた事で自由になったウルは怒った風にダインの元へ向かう。


「ガウガウッ!!」
「うわぁっ!?ごめんって、許してくれよ!?」
「あ~あ……」


裏庭でダインはウルに追いかけ回され、事前の約束通りにガジンは影魔法を強化する杖を生み出したようだが、肝心のダインが力加減を操れない事から練習が必要だった。レナは退魔刀を背中に戻すとハンゾウが腰に見覚えのある刀を装備している事に気付く。


「あれ、ハンちゃん……その刀ってもしかして?」
「おお、やっと気づいてくれたでござるか!!これはガジン殿から受け取った「妖刀紅蓮」でござる!!」
「え、紅蓮!?なんでそれをお前が持ってんだよ!?」
「ウォンッ?」


ウルに後ろから押し倒されてじゃれつかているダインがハンゾウの言葉を聞いて驚き、レナも紅蓮を再び目にする事になるとは思わなかったので動揺を隠せない。そんな二人に対してハンゾウは自慢するように紅蓮に手を伸ばしながら事の経緯を説明する。


「実はこの紅蓮、元々は和国の所有物でござる。だけど、数年ほど前に何者かに紅蓮が奪われ、今まで消息不明だったのでござる。まさか世界一の鍛冶師と名高いガジン殿の手に渡っていたとは驚きでござったが、拙者がどうにか説得して買い取ったのでござる!!」
「買い取ったって……それ、物凄い価値があるんでしょ?」
「そうでござるな、金貨800枚を請求されたでござる。だから拙者、冒険者ギルドに忍び込んでマリア殿が隠していた金庫から少々お金を拝借してきたでござる」
「盗んできたのか!?自分の主人の金庫から!?」
「し、失礼な!!後でちゃんとお金を稼いで返すでござる!!それに王国軍と戦う事になるのならばきっとこの刀も役立つでござるよ!!」


ハンゾウは大事そうに紅蓮を抱え、妖刀を嬉々とした表情で抱きしめる彼女にレナ達は引くが、これでこの地方の全ての用事を済ませた事になるのでレナは木箱に群がっている仲間達を呼び寄せる。


「よし、じゃあ王都へ戻ろう。皆が入れるだけの広間を確保して貰ったから移動した後はその場を離れないでね」
「レナ、その前に報告がある。スラミンとヒトミンが戻って来た」
『ぷるるんっ!!』
「おおっ!!戻ってたのかお前等!!」


空間魔法を発動させて移動を行おうとしたレナの前にスラミンとヒトミンを抱えたコトミンが近づき、スライム達を離す。スラミンとヒトミンは嬉しそうにレナの元へ飛びつき、頭の上と胸元にすり寄ってきた。


「ぷるぷるっ♪」
「ぷるるんっ♪」
「あはは……本当に無事でよかったよ。お前等、今まで何処に居たんだ?」
「ミナとティナと一緒に川で水浴びしてきたときに流れてきた。最初は青色と赤色の桃が流れてきたのかと思って皆で食べようとした」
「こ、コトミンちゃん?それは言わなくてもいいと思うな……」
「あははっ……」
「……お前等、危うく夜食にされるところだったのか」
「ぷるぷるっ……」


どうやらスライム達も森の中に飛ばされていたらしく、迷子になっていたところをコトミン達に拾われたらしい。ともかくこれで魔獣達は全員と合流を果たす。後は剣聖組とマリアが揃えば転移によってはぐれた全員が揃うが、これ以上の猶予はないので仲間探しは中断して王都へ向かわなければならない。


「よし、皆準備はいい?じゃあ、行くよ!!」


空間に黒渦を発動させ、王都の隠れ家へと繋げるとレナは仲間達と共に黒渦の中に飛び込む。全員が移動するのを確認すると、黒渦は消失して残されたのは古ぼけた屋敷だけとなった――
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