不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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最終章 王国編

王妃の能力

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「もういい……お前とは分かり合えない」
「そう、残念ね……貴方がいれば私の夢は3年もせずに叶うでしょうに」
「王妃様、お下がりください……忠告しておくが、その大剣を振りぬく前に僕は彼を殺す事が出来る」
「いいっ!?」


退魔刀の柄を握り締めたレナに対してミドルはロンギヌスの槍をダインに構え、レナが王妃に攻撃を仕掛けた瞬間にダインを殺す事を予告する。だが、既にイレアビトはレナの大剣の範囲内に存在するため、ミドルも余裕はないのか冷や汗を流す。だが、そんな彼に対してイレアビトは振り返りもせずに答える。


「余計な心配は不要よミドル……貴方は自分の相手の事だけを心配しなさい」
「王妃様……」
「レナ、私が貴方を求めた本当の理由を最後に話しておくわ。私と貴方は「同じ」なのよ」
「……不遇職、か?」
「えっ!?」


イレアビトの言葉にレナは彼女が自分と共感する真の理由を言い当てると、まさか自分の考えを読まれたのかとイレアビトは意表を突かれた表情を浮かべる。常に冷静沈着で余裕を保っていたイレアビトでもそんな顔をするのかとレナはこの状況で荷が笑いを浮かべながらもアイリスから事前に聞いていたイレアビトの職業を言い当てた。


「お前の職業は不遇職……それも固有職シングルだ。その職業の名前は「時空魔術師」だろ?」
「……何処でそれを知ったの?」
「そこまでは教える義理はない」
「じ、時空……魔術師?そんなの、聞いたこともない……」
「王妃様?」


レナの言葉にイレアビトは表情を険しくさせ、その一方でダインとミドルは戸惑いの表情を浮かべる。何しろ「時空魔術師」という職業は二人も聞いたことがなく、そもそもミドルでさえもイレアビトの職業を初めて知ったのだ。つまり、イレアビトの側近でさえも知らない事実をレナは暴露した事になる。



――イレアビトの職業である「時空魔術師」は魔術師系統の職業の中でも最も希少で存在すら世間には知られておらず、実際にこの世界の歴史上で時空魔術師の職業を得た人間は10人も存在しない。イレアビトはこの職業のせいで早々に母親から見限られ、他の兄妹よりも辛い生活を強いられた。



時空魔術師の能力は名前の通りに「時間」と「空間」を扱う魔術師であり、その能力は全ての魔術師の中でも最も特殊で扱いにくい能力だった。鍛え上げれば立派に活躍する支援魔術師の支援魔法、初級魔術師の初級魔法、錬金術師の能力とは根本的に能力その物が異なり、彼女の場合は魔術師でありながら自分の職業に適した魔法以外は一切扱えなかった。

一般人でも扱えるはずの初級魔法さえもイレアビトは扱えず、しかも扱える能力はあまりにも条件が厳しく、身体に負担が大きい事から彼女は早々に魔術師として生きる事を諦めざるを得なかった。だからこそイレアビトは生き残るために知恵を磨き、身体を鍛え、生き抜く技術を身に着けるしかなかった。その点ではレナと酷似しているが、彼女の場合は自分自身を強くするのではなく、他者を利用する術を磨く事に人生を捧げた。

だが、自分の職業を見抜く存在が現れた事にイレアビトは動揺を隠せず、自分の職業を知る人間は旧帝国の人間、恐らくは既に故人である母親程度しか存在しない。それにも関わらずにレナは自分の職業を言い当てた事が理解出来ず、頭を抑える。


「どうやって……それを知った?」
「さあね……答える義理はない」
「……そう、ならここで死になさい」


自分の秘密を知った人間は生かしては置けず、イレアビトは「能力」を発動させた。彼女の職業の「時空魔術師」の扱える魔法は文字通りに「時間」と「空間」を操作出来る恐ろしい魔法だった。



(――止まれ)



イレアビトが心の中で呟いた瞬間、彼女の視界の光景が固定化され、目の前に存在するレナの身体が硬直したかのように動かなくなる。正確にはレナだけではなく、その隣にいるダインやロンギヌスを構えて駆け出したミドルも止まり、イレアビトを除く全ての@存在というよりは「現象」そのものが停止した。


(久しぶりね、この感覚はっ……!!)


時間を停止させたイレアビトは即座に後方に移動すると、胸元を抑えて眉をしかめる。この「時間停止」の能力は発動中の間は彼女の魔力が急速に消費され、体感的には「1秒」につきイレアビトの魔力の「1割」を消費していた。既に時間を停止させてから3秒近くが経過し、流石にこれ以上の維持は不可能だと判断したイレアビトは能力を解除させた。


「――っ!?」
「なっ!?」
「王妃様……!?」


時間停止が解除された事で時が流れ始め、レナとダインの目には王妃が一瞬で自分達に距離を取り、その間にミドルが槍を構えて接近する光景が映し出される。ミドルも何が起きたのか一瞬理解出来なかったが、即座に攻撃に集中してダインを狙う。


「刺突!!」
「撃剣!!」
「ひいっ!?」


突き出された真紅の槍に対してダインは防御も回避もする暇もなく、咄嗟にレナは退魔刀を引き抜いて槍を受け止める。玉座の間に金属音が響き渡り、遂にミドルとレナは先頭を開始した。


「下がれダイン!!」
「逃すか!!」
「うわぁっ!?」


ダインに対して追撃を加えようとしたミドルにレナは大剣を振りぬき、その刃を回避しながらミドルはダインを仕留めるために槍を突き出す。だが、レナの妨害のお陰でダインは咄嗟に背後跳躍する事で槍を回避する事に成功し、左の頬に刃先が掠るが致命傷は避けられる。

レナは退魔刀を握り締めると最初から全力で戦うため、ここまで温存しておいた体力を魔力を全て消費する覚悟で「限界強化」の魔法で身体能力を上昇させ、更に「重撃剣」の能力を発動させて手元の重力を操作し、ミドルの背後に剣を振り下ろす。


「兜砕き!!」
「ぐうっ!?」


咄嗟にミドルは槍を構えて刃を受ける事に成功するが、全身全霊のレナの一撃を受けて勢いを殺しきれず、膝を付く。それでも彼は両腕の筋肉を膨張させ、刃を弾き返す。


「反動!!」
「うおっ……このっ!!」


相手の攻撃を弾く戦技を発動させてレナを後方に下がらせるが、どちらも即座に体勢を立て直して槍と大剣を繰り出す。今回は二刀流ではないが、元々レナは大剣だけで生き抜いてきたため、敢えて退魔刀だけで戦闘を挑む。


「はああああっ!!」
「おおおおおっ!!」


玉座の間に激しい金属音が鳴り響き、二人は目にも止まらぬ速さで撃ち合う。その光景を目の当たりにしたダインとイレアビトは状況を忘れて英雄の領域を超えた存在の二人の戦闘に魅入られ、数秒ほど動く事は出来なかった。

単純な戦闘技術やレベルはミドルが上回るが、魔法と剣技を組合せたレナの攻撃は相手の意表を突き、更に剣鬼の能力を発動させて加速する。しかし、ミドルも劣らずに剣鬼状態のレナに追いつく速度で槍を放ち、どちらも残像が産まれる速度で激しく玉座の間を駆け巡る。


「乱れ突き!!」
「回転!!」


無数に繰り出された突きに対してレナは大剣を横薙ぎに振り回して弾き返し、今度は上空に飛んだミドルは槍を下に構て全体重を乗せた一撃を繰り出す。


「落突!!」
「受け流し!!」


頭上から迫りくる槍の刃先に退魔刀の刃で軌道を逸らし、床にロンギヌスが突き刺さって衝撃が走る。2人はお互いに睨み合うと更に速度を加速させ、お互いを本気で殺すために打ち合う。
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