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外伝 ~ヨツバ王国編~
一騎打ち
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「おらぁあああっ!!シャドウ・バインド・スペシャル!!」
「金剛撃!!」
『ぎゃあああっ!?』
森中に轟音が鳴り響き、数十人の兵士が一度に蹴散らされ、何事かとハシラが視線を向けるとそこには影を生き物ように操る青年と巨人族の拳士が存在した。2人の他にも大剣を掲げた大柄な女性と人魚族の少女が存在し、倒れているジャンヌを抱き上げる姿をハシラは目撃する。
「ほら、起きる……これを飲めば大丈夫」
「ううっ……す、すいません」
「たく、3人だけで無茶するんじゃないよ。それにしてもこれだけの森人族を相手にするのなんて久しぶりだね……現役を引退した身とはいえ、これだけの人数を目にすると身体が震えるね」
「バル!!それに他の皆も追いついたのか!!」
「新手か……」
レナは姿を現したバルたちに喜び、ハシラは苦い表情を浮かべる。人数差は圧倒的に北聖将軍の方が多いが、レナ達も一人一人が常人離れした実力者揃いのため、このまま戦闘に入ればどちらも大きな被害は免れないだろう。特に剣聖の称号に至った剣士達を相手にするのは分が悪く、ハシラはレナと向かい合う。
(この少年……他の者と僅かにだが雰囲気が違う。見た所、まだ15、16程度の年齢だがこの少年が恐らく一番強いだろう)
先ほどの戦闘で垣間見せたレナの力を見てハシラは彼こそがこの場で最大の強敵だと判断し、会話の内容から察するにレナこそが統率者であると判断した。しかも風の聖痕の持ち主となると森人族の兵士の最大の強みである「精霊魔法」を無効化されるため、実質的にこちらの魔法は通用しない。
(仮にこの少年が本当にハヅキ家の人間だとしたら、あの紋様は間違いなく本物だ。となると風属性の魔法は受け付けないだろう……だが、聖痕の力を継承する者はハヅキ家の後継者のみ、どうしてこんな少年がその力を持っている?いや、今はそんな事はどうでもいい)
風の聖痕を所持している時点でレナは風属性の精霊魔法は受け付ける事はなく、仮にこの場の全員が精霊魔法を発動させた所でレナには通用しない。その事を理解したハシラは精霊魔法ではなく、自分の技量のみで倒すしかないと判断した。
「少年、名前は何という?」
「名前?レナ……レナ・バルトロスだよ」
「バルトロスだと……その名前を持つ者はバルトロス王家のみのはず。そうか、噂でハヅキ家の娘の一人がバルトロス王族と結婚したと聞いていたが、まさかその息子か?」
「そうだよ。そしてあんた等が拘束しているマリアの甥だ」
「拘束だと……何の話だ?」
レナの言葉にハシラは訝し気な表情を浮かべ、どうやらマリアがカレハに拘束されている事を知らない様子らしく、戯言だと判断したハシラは大弓を構えるとレナと向かい合う。
「お前達の目的は何だか知らんが、ギンタロウの手助けとして俺を捕まえに来たのだろう?」
「まあ、そんな所かな……」
「いいだろう、ならばここは一騎打ちで決着を付けようではないか。大将は誰だ?お前か?」
「将軍!!本気ですか!?」
ハシラの思いもがけない言葉に兵士達の方が驚愕し、ここで一騎打ちを提案されるとは思わなかったレナはどうするべきか考え、他の仲間達に視線を向けるとハシラの提案を受け入れるように促す。
「レナ、どうやらこいつは覚悟を決めたようだね。ここはあんたが決めな」
「そうね、もちろん私達はここで戦っても問題ないけど、大将同士の一騎打ちなら被害は少なくて済むわ」
「ぼ、僕としてはそろそろ引き返したいかな……」
「ダイン……さっきの威勢はどうした?」
一騎打ちの提案に対してバルとシズネはレナの判断を任せ、他の者達もそれに賛同し、レナは退魔刀を抱えて悩む。だが、考えてもこのまま数千人の兵士を相手に全員で戦うよりも自分一人がハシラと一騎打ちを仕掛ける方が被害が最小限に抑える事は間違いなく、ここは相手の提案を引き受けた。
「分かった、俺たちが勝てばあんたを拘束する。それでいい?」
「……ならばこちらが勝てばお前達を拘束する。それでいいか?」
お互いの条件を付きつけるとレナとハシラは20メートル程離れた所で向かい合い、お互いの武器を構える。レナは退魔刀だけを両手に握りしめ、ハシラの方は赤色に塗りつけられた矢を番え、エリナに告げる。
「エリナ!!お前が決闘の合図を行え!!」
「は、はい!!それじゃあ……この矢が地面に落ちた時に決闘の開始の合図とさせていただきます!!」
「矢?」
エリナはクロスボウに矢を装填すると、上空へ向けて構える。どうやら空に打ち込んだ矢が地面に落ちた瞬間に決闘を始めるらしく、これが森人族の決闘の合図の通例らしい。
(なるほど……エリナの技量なら矢を撃ち込んでもすぐ傍の地面に落ちるように計算して撃ち込めるか、弓使いならではの決闘法だな。となると矢が落ちた瞬間が狙い目か……)
相手の動向を伺うだけではなく、いつ落ちてくるかも分からない矢に集中しなければならず、一瞬の油断も出来ない。だが、一騎打ちを引き受けた以上は引き下がる事は出来ず、レナは退魔刀を抱えてハシラと向かい合う。
他の仲間達もレナの様子を見つめ、万が一にも一騎打ちを邪魔されぬように他の兵士の様子を観察する。だが、兵士達も北聖将の勝利を信じているのか不審な動きを取る者は存在せず、緊張した面持ちで見つめていた。
「じゃあ、行きます!!」
エリナはクロスボウを上空に向けて構えると、矢を撃ち込む。矢は木々の枝を潜り抜けてそのまま見えなくなるが、レナとハシラはお互いの姿を捉えたまま感覚を研ぎ澄ませた。
(……視力に頼るな、聴覚で矢が落ちた音を捕えるんだ)
退魔刀を抱えたままレナは神経を聴覚に集中させ、瞼を閉じる。その行為にハシラは一瞬だけ目を見開くが、すぐに気を取り直して大弓を構える。相手がどのような方法を取ろうと自分がやる事は変わらず、確実に仕留めるためにハシラは矢を番える。
(心眼を習得しているか……だが、その程度のスキルならば恐れるに足らん)
五感を研ぎ澄まし、相手の姿を目で捕らえずに気配と動向で捕らえる心眼のスキルは確かに便利ではあるが決して万能とは言い切れず、いくら感覚を研ぎ澄まそうと人間の反射神経には限界が存在する事をハシラは知っていた。レベルを高めれば確かに身体能力は上昇するが、それでもハシラは自分の矢が確実にレナが動く前に仕留めると確信していた。
ハシラが弓を武器として使い始めてから既に100年以上の時を費やし、彼は他の者が剣や魔法を極める中、敢えて弓の技量だけを磨き上げていた。理由はハシラは森人族でありながら産まれた時から魔力が弱く、精霊魔法も碌に扱える事も出来なかった。だからこそ彼は他の森人族の戦士のように生きていく事は出来ないと判断し、自分の職業に適した武器のみを鍛える事に専念する。
エリナをハシラが弟子にしたのは自分程ではないが、彼女が筋力の問題で他の武器が扱えない事を察し、自分と同じように苦労する彼女を見捨てられずに弟子にした。結果としてはエリナは王国四騎士に選ばれる程の実力を身に着け、自分の指導法が間違っていなかった事を確信する。
ハシラは自分が六聖将の中でも肉体面で恵まれていない事は理解していた。それでも六聖将の名に恥じぬように鍛錬を続け、最終的には六聖将の中で最も兵士を抱える事を許される立場にまで昇格を果たす。自分をここまで取り立ててくれたヨツバ王族に大してハシラは絶対の忠誠を誓い、そして王族の敵が現れた時は自分が真っ先に打ち滅ぼすと決めていた。
「金剛撃!!」
『ぎゃあああっ!?』
森中に轟音が鳴り響き、数十人の兵士が一度に蹴散らされ、何事かとハシラが視線を向けるとそこには影を生き物ように操る青年と巨人族の拳士が存在した。2人の他にも大剣を掲げた大柄な女性と人魚族の少女が存在し、倒れているジャンヌを抱き上げる姿をハシラは目撃する。
「ほら、起きる……これを飲めば大丈夫」
「ううっ……す、すいません」
「たく、3人だけで無茶するんじゃないよ。それにしてもこれだけの森人族を相手にするのなんて久しぶりだね……現役を引退した身とはいえ、これだけの人数を目にすると身体が震えるね」
「バル!!それに他の皆も追いついたのか!!」
「新手か……」
レナは姿を現したバルたちに喜び、ハシラは苦い表情を浮かべる。人数差は圧倒的に北聖将軍の方が多いが、レナ達も一人一人が常人離れした実力者揃いのため、このまま戦闘に入ればどちらも大きな被害は免れないだろう。特に剣聖の称号に至った剣士達を相手にするのは分が悪く、ハシラはレナと向かい合う。
(この少年……他の者と僅かにだが雰囲気が違う。見た所、まだ15、16程度の年齢だがこの少年が恐らく一番強いだろう)
先ほどの戦闘で垣間見せたレナの力を見てハシラは彼こそがこの場で最大の強敵だと判断し、会話の内容から察するにレナこそが統率者であると判断した。しかも風の聖痕の持ち主となると森人族の兵士の最大の強みである「精霊魔法」を無効化されるため、実質的にこちらの魔法は通用しない。
(仮にこの少年が本当にハヅキ家の人間だとしたら、あの紋様は間違いなく本物だ。となると風属性の魔法は受け付けないだろう……だが、聖痕の力を継承する者はハヅキ家の後継者のみ、どうしてこんな少年がその力を持っている?いや、今はそんな事はどうでもいい)
風の聖痕を所持している時点でレナは風属性の精霊魔法は受け付ける事はなく、仮にこの場の全員が精霊魔法を発動させた所でレナには通用しない。その事を理解したハシラは精霊魔法ではなく、自分の技量のみで倒すしかないと判断した。
「少年、名前は何という?」
「名前?レナ……レナ・バルトロスだよ」
「バルトロスだと……その名前を持つ者はバルトロス王家のみのはず。そうか、噂でハヅキ家の娘の一人がバルトロス王族と結婚したと聞いていたが、まさかその息子か?」
「そうだよ。そしてあんた等が拘束しているマリアの甥だ」
「拘束だと……何の話だ?」
レナの言葉にハシラは訝し気な表情を浮かべ、どうやらマリアがカレハに拘束されている事を知らない様子らしく、戯言だと判断したハシラは大弓を構えるとレナと向かい合う。
「お前達の目的は何だか知らんが、ギンタロウの手助けとして俺を捕まえに来たのだろう?」
「まあ、そんな所かな……」
「いいだろう、ならばここは一騎打ちで決着を付けようではないか。大将は誰だ?お前か?」
「将軍!!本気ですか!?」
ハシラの思いもがけない言葉に兵士達の方が驚愕し、ここで一騎打ちを提案されるとは思わなかったレナはどうするべきか考え、他の仲間達に視線を向けるとハシラの提案を受け入れるように促す。
「レナ、どうやらこいつは覚悟を決めたようだね。ここはあんたが決めな」
「そうね、もちろん私達はここで戦っても問題ないけど、大将同士の一騎打ちなら被害は少なくて済むわ」
「ぼ、僕としてはそろそろ引き返したいかな……」
「ダイン……さっきの威勢はどうした?」
一騎打ちの提案に対してバルとシズネはレナの判断を任せ、他の者達もそれに賛同し、レナは退魔刀を抱えて悩む。だが、考えてもこのまま数千人の兵士を相手に全員で戦うよりも自分一人がハシラと一騎打ちを仕掛ける方が被害が最小限に抑える事は間違いなく、ここは相手の提案を引き受けた。
「分かった、俺たちが勝てばあんたを拘束する。それでいい?」
「……ならばこちらが勝てばお前達を拘束する。それでいいか?」
お互いの条件を付きつけるとレナとハシラは20メートル程離れた所で向かい合い、お互いの武器を構える。レナは退魔刀だけを両手に握りしめ、ハシラの方は赤色に塗りつけられた矢を番え、エリナに告げる。
「エリナ!!お前が決闘の合図を行え!!」
「は、はい!!それじゃあ……この矢が地面に落ちた時に決闘の開始の合図とさせていただきます!!」
「矢?」
エリナはクロスボウに矢を装填すると、上空へ向けて構える。どうやら空に打ち込んだ矢が地面に落ちた瞬間に決闘を始めるらしく、これが森人族の決闘の合図の通例らしい。
(なるほど……エリナの技量なら矢を撃ち込んでもすぐ傍の地面に落ちるように計算して撃ち込めるか、弓使いならではの決闘法だな。となると矢が落ちた瞬間が狙い目か……)
相手の動向を伺うだけではなく、いつ落ちてくるかも分からない矢に集中しなければならず、一瞬の油断も出来ない。だが、一騎打ちを引き受けた以上は引き下がる事は出来ず、レナは退魔刀を抱えてハシラと向かい合う。
他の仲間達もレナの様子を見つめ、万が一にも一騎打ちを邪魔されぬように他の兵士の様子を観察する。だが、兵士達も北聖将の勝利を信じているのか不審な動きを取る者は存在せず、緊張した面持ちで見つめていた。
「じゃあ、行きます!!」
エリナはクロスボウを上空に向けて構えると、矢を撃ち込む。矢は木々の枝を潜り抜けてそのまま見えなくなるが、レナとハシラはお互いの姿を捉えたまま感覚を研ぎ澄ませた。
(……視力に頼るな、聴覚で矢が落ちた音を捕えるんだ)
退魔刀を抱えたままレナは神経を聴覚に集中させ、瞼を閉じる。その行為にハシラは一瞬だけ目を見開くが、すぐに気を取り直して大弓を構える。相手がどのような方法を取ろうと自分がやる事は変わらず、確実に仕留めるためにハシラは矢を番える。
(心眼を習得しているか……だが、その程度のスキルならば恐れるに足らん)
五感を研ぎ澄まし、相手の姿を目で捕らえずに気配と動向で捕らえる心眼のスキルは確かに便利ではあるが決して万能とは言い切れず、いくら感覚を研ぎ澄まそうと人間の反射神経には限界が存在する事をハシラは知っていた。レベルを高めれば確かに身体能力は上昇するが、それでもハシラは自分の矢が確実にレナが動く前に仕留めると確信していた。
ハシラが弓を武器として使い始めてから既に100年以上の時を費やし、彼は他の者が剣や魔法を極める中、敢えて弓の技量だけを磨き上げていた。理由はハシラは森人族でありながら産まれた時から魔力が弱く、精霊魔法も碌に扱える事も出来なかった。だからこそ彼は他の森人族の戦士のように生きていく事は出来ないと判断し、自分の職業に適した武器のみを鍛える事に専念する。
エリナをハシラが弟子にしたのは自分程ではないが、彼女が筋力の問題で他の武器が扱えない事を察し、自分と同じように苦労する彼女を見捨てられずに弟子にした。結果としてはエリナは王国四騎士に選ばれる程の実力を身に着け、自分の指導法が間違っていなかった事を確信する。
ハシラは自分が六聖将の中でも肉体面で恵まれていない事は理解していた。それでも六聖将の名に恥じぬように鍛錬を続け、最終的には六聖将の中で最も兵士を抱える事を許される立場にまで昇格を果たす。自分をここまで取り立ててくれたヨツバ王族に大してハシラは絶対の忠誠を誓い、そして王族の敵が現れた時は自分が真っ先に打ち滅ぼすと決めていた。
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