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外伝 ~ヨツバ王国編~
ハシラの撃破
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(所詮は子供か……矢が落ちる音に集中して俺への警戒を解いたか。いや、油断は出来ん)
瞼を閉じた状態で待機するレナに対し、確実に一撃で仕留めるためにハシラは「強化射撃」の更に上位に当たる「極射」と呼ばれる戦技の発動を準備する。狩人や弓士の戦技の中でもレベルが70を超える者にしか扱えず、一撃必殺の名に相応しい威力を誇り、剣士の「一刀両断」に位置する戦技である。
極射は発動までに時間が掛かるので本来は戦闘には向かない戦技ではあるが、決闘の場合は合図が行うまでの間に準備を整える事が出来た。仮に乱戦の中で発動させた場合はレナの速度ならばハシラが極射の戦技を発動させる前に接近し、阻止する事が出来ただろう。しかし、それを見越してハシラは敢えて一騎打ちを申し出た。
(卑怯とは言うまい、これが戦略だぞ少年よ)
ハシラが大弓を構えるとレナの位置を把握し、この距離ならば自分が確実に仕留める事を確信した。仮に「縮地」などの高速移動を行う戦技を発動させたとしてもハシラの動体視力ならば戦技を発動させる際に存在する一瞬の筋肉の緩みを見逃すはずがなく、レナが動く前に打ち抜く自信はあった。
攻撃を狙う箇所は頭部に集中し、一発で確実に仕留めるためにハシラは全神経を集中させ、レナの姿を捉える。やがて木々の枝を潜り抜けて矢が落ちていく微かな音を捕えたハシラは大弓をレナに向けた。
(これで終わりだ……!!)
矢が地面に突き刺さった瞬間、ハシラは弦から手を離してレナに向けて矢を放つ。拳銃の弾丸のように回転が加えられた矢が一瞬にして距離を詰め、レナの頭部を射抜こうとした瞬間、瞼を閉じた状態でレナは退魔刀を正面から振り下ろす。
「一刀両断」
「なっ……!?」
森中に轟音が鳴り響き、正面から迫ってきた矢に対してレナは退魔刀の刃を放ち、見事に粉々に切り裂く。その衝撃の余波を受けたハシラの身体が地面に倒れ、戦技の発動によって酷使した筋肉が硬直し、身体が言う事を聞かない。その間にも退魔刀を抱えたレナはゆっくりとハシラに接近し、彼の首元に刃を構えた。
「俺の勝ちだ……降参しろ」
「ば、馬鹿な……何故、俺の攻撃を防ぐ事が出来た!?」
レナの言葉にハシラは信じられない表情を浮かべ、間違いなくレナの頭を貫く一撃を与えたはずだが、気付いた時にはハシラの放った矢は退魔刀に切り裂けられていた。一体何が起きたのかとハシラはレナに問い質すと、レナは自分が何をしたのかを答える。
「予測しただけだよ。正直、矢が落ちる瞬間を捉えて動いてもあんたの攻撃の方が先に届くと思った。だから俺が集中したのはあんたの動作だ」
「動作だと……」
「俺はあんたがどう動くのかをずっと注意していた。矢が落ちた瞬間、先に動くのはあんただと分かっていたから敢えて耳に頼らず、あんたの動作だけに集中した。一刀両断の戦技を発動させる準備を整えた後、あんたが攻撃してくる箇所を予測して剣を振っただけだ」
「何だと……!?」
ハシラならば落ちてくる矢の音を人間よりも優れた聴覚で捉え、先に攻撃を仕掛けてくると判断したレナは「心眼」の能力を発動させ、ハシラの動向だけを注意した。結果的にハシラが攻撃の動作を取る瞬間を見極め、正面から迫りくるハシラの矢を退魔刀で迎撃する事に成功したという。
だが、この賭けはあまりにも博打だった。もしもレナが予測を見誤り、ハシラが頭部以外の箇所に攻撃を仕掛けていた場合は攻撃は空振りして身体を射抜かれていただろう。確実に敵を仕留めるのならば頭部か、あるいは心臓を狙うはずだと判断し、敢えてどちらの攻撃も防ぐためにレナは攻撃範囲が広い退魔刀を正面から振り下ろして生き延びる事が出来た。
もしもハシラが一発でレナを仕留める事は考えず、他の急所を狙っていた場合は結果は逆になっていただろう。それでもレナはハシラが確実に自分を仕留めるために最初の一撃に集中すると判断し、敢えて賭けに出た。エリナから事前にハシラの情報を聞いていた事も幸いし、どうにか生き延びる事に成功する。
「決闘は俺の勝ちだハシラ、降参しろ」
「……確かに勝負はお前の勝利だろう。だが、決闘はまだ終わっていない。俺の首を斬れ」
「師匠!?」
勝負に敗北した事は認めたハシラではあるが、彼はレナの言葉には従わず、黙って首を差しだす。決闘はどちらかの命を討つか、あるいは両者の合意でしか終わることはない。勝負に負けてもハシラはレナの言葉に従うつもりはなく、自分の命を絶つように告げる。
「俺は六聖将だ。将として敵に降るような真似はせん……決闘に勝ちたければ俺の首を斬れ」
「しょ、将軍……!!」
「お前達は手を出すな!!神聖な決闘を邪魔をするのであれば俺は死んでも貴様等の事は許さんぞ!!」
刃を突き付けられたハシラの姿を見て兵士達が武器を構えるが、そんな彼等に対してハシラは邪魔をしないように怒鳴りつけ、潔く死ぬために武器を手放す。
「さあ、俺の首を斬れ。部下達の事は気にする必要はない、俺が死ねば彼等は引き返す」
「……あんた、どうしてそこまで」
「愚問だな……俺は将軍だ。ならば敵に降伏するような真似はしない、将としてこの国に仕えた頃から俺の命は王族のために尽くすと誓った。カレハ様から与えられた任務を果たせない以上、俺の命はここまでだ」
「師匠!!考え直してください!!カレハ様は師匠が思っているような人じゃ……」
「待ちなさい」
ハシラを説得するためにエリナが会話に割って入るが、そんな彼女の肩をシズネが掴む。どうして止めるのかとエリナはシズネに振り返ると、彼女はハシラにある事を尋ねる。
「貴方、さっき王族のために尽くすといったわね。つまり、貴方がカレハとやらに従っているのはこの国に存在する王族がカレハだけだからではないの?」
「……どういう意味だ?」
「仮にこの場にカレハ以外の王族が現れた場合、貴方はどうするのか気になっただけよ」
「何だと……!?」
王族という言葉に死を覚悟していたハシラは目を見開き、シズネはレナに目配せすると、レナは退魔刀を背中に戻してハシラと向き合う。
「これからあんたの前にティナ王女と他の王族の人達を連れてくる。その後にあんたがどう判断するのかは自由だ」
「ま、まさか本当に……この国に他の王族の方々が存在するというのか?」
「ああ、街の方でもう待機しているよ。付いてくるか?」
「……信じられん、俺を捕まえる口実ではないのか?」
東壁街に他の王族が待機しているという言葉にハシラは半信半疑といった表情を浮かべ、この状況でレナ達が自分を殺さないために嘘を吐く理由がないが、だからといって王族が本当に東壁街に存在するのならば姿を現さない理由が分からない。
もしもデブリ国王が姿を見せればハシラは攻撃を中止し、彼の命令に従うだろう。その事はギンタロウも承知済みであり、わざわざ国王を街中に隠して戦闘を行う必要はない。だからこそハシラはレナ達の言葉が嘘だと思ったが、そんな彼に対してレナは妥協案を出す。
「今から俺達は街に戻ってティナ王女と他の王族の人達を連れ出す。あんた達は街に入る必要もないし、俺達に降伏をしなくてもいい。街に戻るまでの間はこちらも攻撃しない事を約束する」
「嘘ではないだろうな?」
「ここであんたを見逃す時点で少しは信じて欲しいんだけどな……」
「……分かった」
レナの言葉にハシラは黙り込み、確かにこの状況下で敵軍の大将である自分を殺さずに説得を試みようとしている辺り、レナ達の言葉が真実である可能性も考え、彼の提案を受け入れた。
瞼を閉じた状態で待機するレナに対し、確実に一撃で仕留めるためにハシラは「強化射撃」の更に上位に当たる「極射」と呼ばれる戦技の発動を準備する。狩人や弓士の戦技の中でもレベルが70を超える者にしか扱えず、一撃必殺の名に相応しい威力を誇り、剣士の「一刀両断」に位置する戦技である。
極射は発動までに時間が掛かるので本来は戦闘には向かない戦技ではあるが、決闘の場合は合図が行うまでの間に準備を整える事が出来た。仮に乱戦の中で発動させた場合はレナの速度ならばハシラが極射の戦技を発動させる前に接近し、阻止する事が出来ただろう。しかし、それを見越してハシラは敢えて一騎打ちを申し出た。
(卑怯とは言うまい、これが戦略だぞ少年よ)
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攻撃を狙う箇所は頭部に集中し、一発で確実に仕留めるためにハシラは全神経を集中させ、レナの姿を捉える。やがて木々の枝を潜り抜けて矢が落ちていく微かな音を捕えたハシラは大弓をレナに向けた。
(これで終わりだ……!!)
矢が地面に突き刺さった瞬間、ハシラは弦から手を離してレナに向けて矢を放つ。拳銃の弾丸のように回転が加えられた矢が一瞬にして距離を詰め、レナの頭部を射抜こうとした瞬間、瞼を閉じた状態でレナは退魔刀を正面から振り下ろす。
「一刀両断」
「なっ……!?」
森中に轟音が鳴り響き、正面から迫ってきた矢に対してレナは退魔刀の刃を放ち、見事に粉々に切り裂く。その衝撃の余波を受けたハシラの身体が地面に倒れ、戦技の発動によって酷使した筋肉が硬直し、身体が言う事を聞かない。その間にも退魔刀を抱えたレナはゆっくりとハシラに接近し、彼の首元に刃を構えた。
「俺の勝ちだ……降参しろ」
「ば、馬鹿な……何故、俺の攻撃を防ぐ事が出来た!?」
レナの言葉にハシラは信じられない表情を浮かべ、間違いなくレナの頭を貫く一撃を与えたはずだが、気付いた時にはハシラの放った矢は退魔刀に切り裂けられていた。一体何が起きたのかとハシラはレナに問い質すと、レナは自分が何をしたのかを答える。
「予測しただけだよ。正直、矢が落ちる瞬間を捉えて動いてもあんたの攻撃の方が先に届くと思った。だから俺が集中したのはあんたの動作だ」
「動作だと……」
「俺はあんたがどう動くのかをずっと注意していた。矢が落ちた瞬間、先に動くのはあんただと分かっていたから敢えて耳に頼らず、あんたの動作だけに集中した。一刀両断の戦技を発動させる準備を整えた後、あんたが攻撃してくる箇所を予測して剣を振っただけだ」
「何だと……!?」
ハシラならば落ちてくる矢の音を人間よりも優れた聴覚で捉え、先に攻撃を仕掛けてくると判断したレナは「心眼」の能力を発動させ、ハシラの動向だけを注意した。結果的にハシラが攻撃の動作を取る瞬間を見極め、正面から迫りくるハシラの矢を退魔刀で迎撃する事に成功したという。
だが、この賭けはあまりにも博打だった。もしもレナが予測を見誤り、ハシラが頭部以外の箇所に攻撃を仕掛けていた場合は攻撃は空振りして身体を射抜かれていただろう。確実に敵を仕留めるのならば頭部か、あるいは心臓を狙うはずだと判断し、敢えてどちらの攻撃も防ぐためにレナは攻撃範囲が広い退魔刀を正面から振り下ろして生き延びる事が出来た。
もしもハシラが一発でレナを仕留める事は考えず、他の急所を狙っていた場合は結果は逆になっていただろう。それでもレナはハシラが確実に自分を仕留めるために最初の一撃に集中すると判断し、敢えて賭けに出た。エリナから事前にハシラの情報を聞いていた事も幸いし、どうにか生き延びる事に成功する。
「決闘は俺の勝ちだハシラ、降参しろ」
「……確かに勝負はお前の勝利だろう。だが、決闘はまだ終わっていない。俺の首を斬れ」
「師匠!?」
勝負に敗北した事は認めたハシラではあるが、彼はレナの言葉には従わず、黙って首を差しだす。決闘はどちらかの命を討つか、あるいは両者の合意でしか終わることはない。勝負に負けてもハシラはレナの言葉に従うつもりはなく、自分の命を絶つように告げる。
「俺は六聖将だ。将として敵に降るような真似はせん……決闘に勝ちたければ俺の首を斬れ」
「しょ、将軍……!!」
「お前達は手を出すな!!神聖な決闘を邪魔をするのであれば俺は死んでも貴様等の事は許さんぞ!!」
刃を突き付けられたハシラの姿を見て兵士達が武器を構えるが、そんな彼等に対してハシラは邪魔をしないように怒鳴りつけ、潔く死ぬために武器を手放す。
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「……あんた、どうしてそこまで」
「愚問だな……俺は将軍だ。ならば敵に降伏するような真似はしない、将としてこの国に仕えた頃から俺の命は王族のために尽くすと誓った。カレハ様から与えられた任務を果たせない以上、俺の命はここまでだ」
「師匠!!考え直してください!!カレハ様は師匠が思っているような人じゃ……」
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ハシラを説得するためにエリナが会話に割って入るが、そんな彼女の肩をシズネが掴む。どうして止めるのかとエリナはシズネに振り返ると、彼女はハシラにある事を尋ねる。
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「……どういう意味だ?」
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「何だと……!?」
王族という言葉に死を覚悟していたハシラは目を見開き、シズネはレナに目配せすると、レナは退魔刀を背中に戻してハシラと向き合う。
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「ま、まさか本当に……この国に他の王族の方々が存在するというのか?」
「ああ、街の方でもう待機しているよ。付いてくるか?」
「……信じられん、俺を捕まえる口実ではないのか?」
東壁街に他の王族が待機しているという言葉にハシラは半信半疑といった表情を浮かべ、この状況でレナ達が自分を殺さないために嘘を吐く理由がないが、だからといって王族が本当に東壁街に存在するのならば姿を現さない理由が分からない。
もしもデブリ国王が姿を見せればハシラは攻撃を中止し、彼の命令に従うだろう。その事はギンタロウも承知済みであり、わざわざ国王を街中に隠して戦闘を行う必要はない。だからこそハシラはレナ達の言葉が嘘だと思ったが、そんな彼に対してレナは妥協案を出す。
「今から俺達は街に戻ってティナ王女と他の王族の人達を連れ出す。あんた達は街に入る必要もないし、俺達に降伏をしなくてもいい。街に戻るまでの間はこちらも攻撃しない事を約束する」
「嘘ではないだろうな?」
「ここであんたを見逃す時点で少しは信じて欲しいんだけどな……」
「……分かった」
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不定期更新、更新遅進です。
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