不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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外伝 ~ヨツバ王国編~

異常事態

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――レナ達が予想外の戦闘を繰り広げる中、他の代表者も魔の草原の調査を行い、大まかな地形と5つの大樹の特徴を掴む。調べた結果、全ての大樹は異様な速度で「樹肉」と呼ばれる果物を生み出して地面に落とし、魔物を引き寄せている事が発覚した。


「あいつら、勝負の前のなのに何を騒いでやがるんだ?」
「さあな……まあ、別に大丈夫だろ。あのマリアさんの甥が付いてるんだから」
「えっと……助太刀に行かなくていいのかな?」
「必要ない、これから競い合う相手にわざわざ助力する義理はない……それにあの程度の数ならば問題ないだろう」


代表者の一人に選ばれたロウガが率いるのは氷雨の冒険者ギルドの中でも上位に位置する4名の冒険者を引き連れていた。まずはロウガの弟子にして同じ獣人族の剣士でもあるガロ、その彼の冒険者集団であるミナとモリモ、最後にカゲマルとハンゾウと同じく、和国から訪れた忍者の「アヤメ」がロウガと行動を共にしていた。

最初の3人はレナ達と面識があるのに対し、アヤメに関してはカゲマルやハンゾウと比べれば年齢も若く、普段は滅多に人前に姿を現さない。冒険者ではあるが最近になって入って来たばかりの新人である。しかし、新人ながらにCランクの階級まで昇格した実力は確かでカゲマルやハンゾウと同様にマリアに忠誠を誓う忍者の一人である。


「ロウガ殿、某の調査の限りではこの大樹は他の大樹と違い、樹肉が実るまでに時間が僅かながらに早いようですござるん」
「そうか、分かった。だが、その……お前の語尾はどうにかならんのか?」
「申し訳ございません。姉邪と被らぬために某の語尾はござるんで統一しているのでござるん」
「何なんだ和国に忍者ってのは……変人しかいねえのかよ」
「ガロ!!女の子に変人なんて失礼だよ!!」
「いや、まあ……変わってるという点は否定できないんじゃないか?」


アヤメはカゲマルとハンゾウとは妹弟子の関係に当たり、どちらも実の兄や姉のように尊敬している。だが、少し変わった性格で姉であるハンゾウが未だに国の言葉が抜けきれずに「ござる」という語尾を使うのに対し、彼女は敢えて「ござるん」という特殊な語尾を使う。ハンゾウの場合は語尾は自然に出てくるのに対し、彼女の場合は標準語が離せるのに敢えてこちらの語尾を使っていた。

本人曰く、姉のハンゾウだけが語尾に関して他の者から変に思われないように自分も稀有な語尾を使う事でハンゾウだけが目立たなぬように行動しているとの事だが、逆に奇妙な語尾を使い続ける二人のせいで和国の忍者と呼ばれる存在は変人なのではないかと疑われてしまう。

ちなみにアヤメの容姿はカゲマルとハンゾウが黒装束を着込むのに対し、彼女の場合は紅葉を想像させる刺繍が施された赤色の忍び装束を着込んでいる。和国の忍者は一人前になるまでは闇に溶け込む黒装束を着用する事を禁じられ、まだ成人年齢も迎えていないアヤメは自作の装束を着込んでいた。

アヤメの身長はミナよりも頭一つほど小さく、年齢相応の体型に桜色の髪の毛をショートカットにまとめ、特徴的なアホ毛を持つ。顔立ちは整っているが口元をマフラーのような物で覆い隠し、身に着けている武器は巨大な十字手裏剣を背中に装着していた。


「それにしてもアヤメ、お主はここに居ていいのか?カゲマルとハンゾウと共に行動しなくても良かったのか?」
「某は御二人の命令を受けてこの場に残りました。いざというとき、御二人に何か起きた場合は某が偵察隊を纏めるように指示されていますでござるん」
「その語尾の違和感だけはどうにかなんねえのかよ……」
「で、でもアヤメちゃんのお陰で情報収集もはかどるし、アヤメちゃんが一緒にいてくれて心強いよ?」
「ミナ殿、某は与えられた役目を果たしているだけでござるん。それほど褒められる事でもないでござるん」


ミナに褒められたアヤメは言葉では冷静に対応しているが、彼女の頭のアホ毛は嬉しさの感情を表す様に揺れ動く。一体どういう原理で髪の毛が動いているのかは不思議だが、ロウガのチームはアヤメのお陰で早い段階で魔の草原に聳え立つ樹肉の大樹の特徴を掴む。


「ふむ、ここまで近づいても魔物共は反応せんか……儂等に気付いていないわけでもあるまいに」
「観察した限り、大樹から半径20メートル以内に接近すると魔物が襲いかかるようです。なのでこれ以上に迂闊に近づくと危険でござるん」
「どうやって調べたんだよそんな事」
「某が大樹に接近し、魔物が反応した距離を見計らっただけでござるん。どうやら標的と定められても大樹の範囲外に逃げ切れば魔物は追跡せず、元に戻るようでござるん」
「え、凄い!!そんな事まで調べたの!?」
「アヤメは頼りになるな。いや、本当に」
「……褒め過ぎでござるん」


ミナとモリモの言葉に素直に喜べないアヤメはアホ毛を揺らしながら照れ隠しするようにマフラーで顔を隠す。その一方でロウガとガロは大樹に視線を向け、鼻を鳴らす。


「……駄目だな、魔物共の臭いと死骸の臭いが強すぎて上手く鼻が利かん。ガロ、お前はどうだ?」
「こっちも鼻が上手く利かねえ……血の臭いが酷過ぎて鼻がひん曲がりそうですよ」
「うむ。だが、それよりも気になる事は魔物の死骸だ。最初は気のせいかと思ったが、どうも死骸の腐敗化が早過ぎる……見ろ、あのゴブリンの死骸は先ほど死んだばかりだというのに腐り果てているぞ?」


ロウガは大樹の根本の部分に倒れているゴブリンの死骸を示すと、死亡してからそれほどの時間が経過しているわけでもないのに死体の全体が腐り始めていた。皮膚は剥がれ落ち、筋肉は萎み、眼球が抜け落ちる光景を見てロウガ達は違和感を抱く。アヤメも二人と同様に死骸の腐敗化の速度が気になっていたらしく、説明を行う。


「それは某も気になっていたでござるん。どうも大樹の付近で死亡した死骸は急速的に腐敗化してしまう現象が起きる事から、これは予測にしか過ぎないでござるがのこの「樹肉の大樹」は大地から栄養を独占するだけではなく、自分の近くで死亡した死骸からも栄養を奪い取っているのではないかと……」
「何だと!?そんな馬鹿げた事があるのかよ!?」
「自然界では敵を招き寄せて捕食する植物は決して珍しくはないでござるん。この大樹に至っては魔物を引き寄せる力を持つ果実を生み出し、それを利用して招き寄せた魔物同士を殺し合わせて死亡した魔物の死骸から栄養を奪い取っているように感じられないかでござるん?」
「むうっ……言われてみれば確かにな」
「な、何か怖いな……僕達もこの大樹に近付いたら栄養を奪い取られたりするのかな?」
「確認した限りでは死亡しない限りは大樹の方から何かを仕掛けてくる様子はないでござるん。しかし、戦闘の際はより一層に気を付けた方がいいでござるん。もしも普段よりも体力の消耗が激しいと感じたら引き返す方が賢明かもしれないでござるん」
「……やっぱりその語尾はうぜえな」


アヤメは真剣に話しているのだが、どうにも語尾のせいで説得力が欠けてしまい、危機感が伝わらない。それでも樹肉の大樹の恐ろしさを感じ取ったロウガ達は不用意には近づかず、勝負の時間が始まる前に出来る限りの多くの情報を得るために行動する。
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