不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
2,064 / 2,091
蛇足編

長き因縁に決着を

しおりを挟む
「ダイン、この魔力は灯りでは消えないのか?」
「無理だと思う。ここに流れている魔力は密度が違いすぎる……ただのランタンぐらいじゃ消えないよ」
「逆に言えばそれだけの魔力を流しているということはミヤはここにいるということですか?」
「ああ、そうだな。これだけの魔力を生み出せるのはミヤしかいない」


下水道に充満した黒霧はミヤ以外では作り出すことはできず、彼女は下水道の何処かに居ることは確かだった。ダインは闇属性の魔力を影魔法で吸収しながら移動していると、不意に彼は違和感を抱く。


「なんだこの魔力……変な感じがする」
「ダインさん?」
「どうした?」


先ほどから黒霧を影に吸い込ませながら移動していたダインだったが、闇属性の魔石から吸い上げていた魔力と比べて異質な感じがした。吸い込めば吸い込む程に嫌な感覚を抱き、ダインは吐き気を催した。


「き、気持ち悪くなってきた……」
「大丈夫か!?」
「やっぱり無理をし過ぎたんじゃ……」
「へ、平気だよ……それよりも早く行こう」


気分は悪くなりながらもダインは先へ進もうとした時、ダインの影に異変が起きた。影の一部が盛り上がるとまるで人間の顔の形に変化して語り掛ける。


『アギャギャッ!!』
「うわぁっ!?」
「な、何だ!?」
「これは!?」


いきなり自分の作り出した影から人面が浮きあがってダインは驚くが、ゴンゾウとミイネはそんな彼を庇う。ダインの影人形から次々と人面が浮きあがり、この世の者とは思えないおぞましい声をあげた。


『ギィアアアアッ!!』
『ウヒヒヒッ!!』
『オアアアアッ!!』
「な、何だよこれ!?僕の影に変なのが……」
「ダイン!!しっかりしろ!!」
「ダインさん!!近付いてますよ!!」


ダインの影魔法は彼の影を実体化させる魔法であり、影人形に浮かんだ人面はダインと影が繋がっている足元に迫る。ミイネはとっさにダインに注意すると、彼は慌てて影魔法を一旦解除した。

影魔法が解かれた瞬間に影に浮かんでいた人面は黒霧の塊と化して排出され、それらはダイン達の周囲を飛び回る。その姿を見てダインは人面の顔一つ一つに覚えがあることに気が付く。


「こ、こいつら……シャドウ家の人間だ!?」
「何だと!?」
「どういうことですか!?」
「まさかこいつら……シャドウ家の怨霊か!?」
『ヒヒヒヒヒッ!!』


自分の影から出現したシャドウ家の怨霊にダインは冷や汗を流し、ダインが彼等の顔を見忘れるはずがない。屋敷で暮らしていた時はダインは彼等に虐待を受けており、自分を痛めつけた相手のことを忘れるはずがなかった。


「お前等ミヤに操られているのか!?」
『イヒヒッ!!』
『アアアアッ!!』
『ギヒヒッ!!』


ダインの言葉が通じていないのかシャドウ家の怨霊はまともな言葉を発せず、そもそも怨霊は本来は言葉が通じる相手ではない。オウネンやブラクの場合は特殊な存在だったが、通常の怨霊は生前の意識は残っておらず、生者を見つけると例え相手が肉親だろうと躊躇なく襲い掛かる。

下水道を充満している魔力の正体はシャドウ家の怨念であり、シャドウ家の人間が死んだ後に死体は墓場ではなく地下室に保管され、そのせいで魂は怨霊と化して封じられていた。怨霊と化した魂は魔力ごとミヤに吸収されたが、そのミヤが解き放った魔力にまだ怨霊は残っていた。

影魔法で吸収された黒霧の中に怨霊が混じっており、皮肉にも彼等は生前見下していたダインのお陰で怨霊に戻ることができた。ダインの影に吸収された際に彼の魔力を吸収してミヤに吸収される前の状態に戻ったが、もうこの状態では意識も保っていない。


「醜いですね……これが悪党の鳴れの果てですか」
「ダイン……こいつらはどうする?」
「……放っておいてもどうせ消えるだろうけど、このままだとまたミヤに利用されるかもしれない。それぐらいなら僕の手で……」
『アヒヒヒッ!!』


怨霊達はダイン達の周囲を飛び回るだけで何も出来ず、彼等は生者に群がることしかできない。ダインは自分を散々痛めつけてきた憎い連中だったが、そのあまりにも哀れな姿に彼の復讐心は消えていく。


「どうするんですか?怨霊を倒すには浄化するしかないと聞いてますが……」
「こいつらはもう怨霊じゃない。ただの魔力の塊だ……なら、こうすればいい」


ダイン達を取り囲む怨霊は闇属性の魔力で維持しているが、その魔力を断ち切れば怨霊は消滅する。ダインは影人形をもう一度作り出すと、自分達の周囲を飛び回る怨霊を集めて両手で叩き潰す。


「大人しく消えろ!!」
『ッ――――!?』


怨霊を一つにまとめるとダインは影人形で押し潰した瞬間、怨霊は霧散して黒霧と化す。完全に潰されたことで怨霊は粉々となり、やがて消えていく。これでもう二度と復活することはなく、ダインはシャドウ家の怨霊を滅ぼした。彼にとっては自分を苦しめてきた憎い相手だったが、最後は消滅させて彼等を救う。


「頼むからもう二度と現れるなよ……」
「ダイン……」
「……行きましょう。ミヤのところへ」


両手を見つめながらダインは呟き、そして最後に残ったミヤの元へ向かう。
しおりを挟む
感想 5,096

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。