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蛇足編
完璧な肉体
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「――死んだか、時間稼ぎにもならなかったね」
「なっ……誰ですか!?」
「お前は……!?」
「……ミヤ!!」
シャドウ家の怨霊が消滅した瞬間、下水道内を充満していた黒霧が消え去った。通路の奥から人の声が響き渡り、それを聞いたダイン達は武器を構える。しかし、現れたのは20代半ばの美しい女性だった。それを見てダインは呆気にとられた。
「だ、誰だ!?」
「ふん、この私の顔を見忘れたのかい?相変わらず生意気なガキだね」
「まさか……ミヤなのか!?」
「この感覚……気を付けてください!!この人、僕の母さんと一緒です!!」
「何だと!?」
いち早くミイネはミヤの正体に勘付き、彼女の正体が吸血鬼だと見抜いた。厳密にはミイネの母親はサキュバスだが、ミヤはキラウやアルドラと同じく人間の精ではなく血液を欲する真性の吸血鬼だった。
「小娘、あんたから吸血鬼の臭いがするね。だけど能力はまだ覚醒していないようだね」
「……大きなお世話ですよ」
「おい、ミヤ!!その身体はどうなってるんだ!?」
ミイネに注目するミヤに対してダインは杖を構えて前に立つと、ミヤは自分の肉体を見せつけるように両腕を広げた。彼女はシャドウ家の怨念を利用して肉体を若返らせたことを伝えた。
「見ての通り、私は若返ったのさ。ここまでの肉体を取り戻すのに大分時間は掛かったけどね」
「そ、そんな馬鹿な……お前、しわしわの婆だったじゃないか!?」
「ダインさん、こんな時に笑わせないでください……」
「ふん、そこの小娘の話を聞いてなかったのかい?私は吸血鬼になったんだよ」
「吸血鬼だと!?」
吸血鬼に変貌したことを告げたミヤにダインとゴンゾウは驚き、彼女は吸血鬼に至るまでの経緯を話す。シャドウ家を抜け出した後、ミヤは自分の命が長くないと悟って吸血鬼になることを決めた。吸血鬼になれば定期的に血液を吸い上げれば死ぬことはなくなり、とある吸血鬼の力を借りた。
彼女を吸血鬼へと変貌させたのはキラウであり、彼女に力を与える代わりにミヤはキラウに腐敗龍を蘇らせるための特殊な死霊石を作り上げた。キラウのお陰で吸血鬼となった彼女だが、完全に肉体を若返らせるには自分と同じ家系の人間の血を吸う必要があることを伝える。
「私の全盛期の肉体を取り戻すためにはお前の血が必要なんだよ。さあ、大人しく私に殺されるというのならお前の味方は見逃してやるよ」
「ふざけるな!!そんなのお断りだ!!」
「僕達を舐めて貰っては困りますねお婆さん」
「そうだ!!俺達は強いぞ!!」
ダインは即答でミヤの申し出を断り、ミイネとゴンゾウも戦うつもりだった。だが、彼等の返答を予想していたミヤは焦りもせずに杖を構えた。
「あんた達のことは部下が色々と調べてくれたよ。七魔将を始末したこともね」
「七魔将のことを知ってるのか!?」
「知っているどころかお友達だよ。ほら、出てきな!!」
「何だと!?」
ミヤの背後から巨大な影が出現し、それを見たゴンゾウは目を見開く。姿を現わしたのは彼がかつて打ち倒したはずの鬼人将のオウガであり、その後ろからは同じく七魔将のアルドラが姿を現わした。彼女はシズネに敗れたと聞いているが、この場に現れたことにダイン達は戸惑う。
「オウガ!?それにアルドラまで……ど、どうして生きてるんだ!?」
「違います!!よく見てください……この人達の身体はおかしいです!!」
「これは……」
オウガとアルドラの肉体は継ぎ接ぎだらけであり、まるで別の人間の肉体を無理やり繋ぎ合わせたような姿をしていた。二人とも意識はないのか虚ろな瞳をしており、それを見たダインはあることに気が付く。
「死霊人形……いや、違う。まさか死体に怨霊を乗り移させたのか!?」
「その通りさ。死霊人形と違ってこいつらの肉体には死霊石は存在しない。言うなれば呪術人形だね」
「呪術人形……!?」
死霊魔術師は死霊石を利用して死体を操るのに対し、呪術師の場合は死体に他の人間の魂を憑依させることで復活させることができる。ミヤは殺された部下の魂をオウガとアルドラの死体に封じ込め、自分の手駒へと変貌させた。
オウガとアルドラは既に死亡しており、肉体も腐敗化していた。だが、ミヤは万が一の場合に備えて二人の死体を回収して別の死体と繋ぎ合わせる。最後にこれまで自分が殺した部下の怨霊を憑依させることで従順な手下へと造り替える。
「さあ、お前達!!あの巨人と小娘の相手をしてやりな!!」
「ウウッ……オオオオオッ!!」
「ぐうっ!?」
オウガは真っ先にゴンゾウの元へと迫り、それに対してゴンゾウは正面から組み合う。かつて倒した相手とはいえ、あまりにも変わり果てたオウガの姿にゴンゾウは気おくれした。しかし、そんなゴンゾウにダインは注意する。
「ゴンゾウ!!そいつはオウガじゃない、ただの怨霊だ!!惑わされるなよ!!」
「……そうだ、お前はオウガなんかじゃない!!失せろ偽物!!」
「オアアアアッ!!」
ゴンゾウはオウガの呪術人形に対して正面から押し返し、徐々にオウガを後退させていく。本物のオウガならば自分に力負けがするはずがないと思ったゴンゾウは躊躇せずに本気の力を発揮した。
「なっ……誰ですか!?」
「お前は……!?」
「……ミヤ!!」
シャドウ家の怨霊が消滅した瞬間、下水道内を充満していた黒霧が消え去った。通路の奥から人の声が響き渡り、それを聞いたダイン達は武器を構える。しかし、現れたのは20代半ばの美しい女性だった。それを見てダインは呆気にとられた。
「だ、誰だ!?」
「ふん、この私の顔を見忘れたのかい?相変わらず生意気なガキだね」
「まさか……ミヤなのか!?」
「この感覚……気を付けてください!!この人、僕の母さんと一緒です!!」
「何だと!?」
いち早くミイネはミヤの正体に勘付き、彼女の正体が吸血鬼だと見抜いた。厳密にはミイネの母親はサキュバスだが、ミヤはキラウやアルドラと同じく人間の精ではなく血液を欲する真性の吸血鬼だった。
「小娘、あんたから吸血鬼の臭いがするね。だけど能力はまだ覚醒していないようだね」
「……大きなお世話ですよ」
「おい、ミヤ!!その身体はどうなってるんだ!?」
ミイネに注目するミヤに対してダインは杖を構えて前に立つと、ミヤは自分の肉体を見せつけるように両腕を広げた。彼女はシャドウ家の怨念を利用して肉体を若返らせたことを伝えた。
「見ての通り、私は若返ったのさ。ここまでの肉体を取り戻すのに大分時間は掛かったけどね」
「そ、そんな馬鹿な……お前、しわしわの婆だったじゃないか!?」
「ダインさん、こんな時に笑わせないでください……」
「ふん、そこの小娘の話を聞いてなかったのかい?私は吸血鬼になったんだよ」
「吸血鬼だと!?」
吸血鬼に変貌したことを告げたミヤにダインとゴンゾウは驚き、彼女は吸血鬼に至るまでの経緯を話す。シャドウ家を抜け出した後、ミヤは自分の命が長くないと悟って吸血鬼になることを決めた。吸血鬼になれば定期的に血液を吸い上げれば死ぬことはなくなり、とある吸血鬼の力を借りた。
彼女を吸血鬼へと変貌させたのはキラウであり、彼女に力を与える代わりにミヤはキラウに腐敗龍を蘇らせるための特殊な死霊石を作り上げた。キラウのお陰で吸血鬼となった彼女だが、完全に肉体を若返らせるには自分と同じ家系の人間の血を吸う必要があることを伝える。
「私の全盛期の肉体を取り戻すためにはお前の血が必要なんだよ。さあ、大人しく私に殺されるというのならお前の味方は見逃してやるよ」
「ふざけるな!!そんなのお断りだ!!」
「僕達を舐めて貰っては困りますねお婆さん」
「そうだ!!俺達は強いぞ!!」
ダインは即答でミヤの申し出を断り、ミイネとゴンゾウも戦うつもりだった。だが、彼等の返答を予想していたミヤは焦りもせずに杖を構えた。
「あんた達のことは部下が色々と調べてくれたよ。七魔将を始末したこともね」
「七魔将のことを知ってるのか!?」
「知っているどころかお友達だよ。ほら、出てきな!!」
「何だと!?」
ミヤの背後から巨大な影が出現し、それを見たゴンゾウは目を見開く。姿を現わしたのは彼がかつて打ち倒したはずの鬼人将のオウガであり、その後ろからは同じく七魔将のアルドラが姿を現わした。彼女はシズネに敗れたと聞いているが、この場に現れたことにダイン達は戸惑う。
「オウガ!?それにアルドラまで……ど、どうして生きてるんだ!?」
「違います!!よく見てください……この人達の身体はおかしいです!!」
「これは……」
オウガとアルドラの肉体は継ぎ接ぎだらけであり、まるで別の人間の肉体を無理やり繋ぎ合わせたような姿をしていた。二人とも意識はないのか虚ろな瞳をしており、それを見たダインはあることに気が付く。
「死霊人形……いや、違う。まさか死体に怨霊を乗り移させたのか!?」
「その通りさ。死霊人形と違ってこいつらの肉体には死霊石は存在しない。言うなれば呪術人形だね」
「呪術人形……!?」
死霊魔術師は死霊石を利用して死体を操るのに対し、呪術師の場合は死体に他の人間の魂を憑依させることで復活させることができる。ミヤは殺された部下の魂をオウガとアルドラの死体に封じ込め、自分の手駒へと変貌させた。
オウガとアルドラは既に死亡しており、肉体も腐敗化していた。だが、ミヤは万が一の場合に備えて二人の死体を回収して別の死体と繋ぎ合わせる。最後にこれまで自分が殺した部下の怨霊を憑依させることで従順な手下へと造り替える。
「さあ、お前達!!あの巨人と小娘の相手をしてやりな!!」
「ウウッ……オオオオオッ!!」
「ぐうっ!?」
オウガは真っ先にゴンゾウの元へと迫り、それに対してゴンゾウは正面から組み合う。かつて倒した相手とはいえ、あまりにも変わり果てたオウガの姿にゴンゾウは気おくれした。しかし、そんなゴンゾウにダインは注意する。
「ゴンゾウ!!そいつはオウガじゃない、ただの怨霊だ!!惑わされるなよ!!」
「……そうだ、お前はオウガなんかじゃない!!失せろ偽物!!」
「オアアアアッ!!」
ゴンゾウはオウガの呪術人形に対して正面から押し返し、徐々にオウガを後退させていく。本物のオウガならば自分に力負けがするはずがないと思ったゴンゾウは躊躇せずに本気の力を発揮した。
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