最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

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バルトロス帝国編

魔石

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「仕方ない……すいません。これを下さい」
「毎度あり」
「……いいの?」


レナは棚の上の回復薬を1つ受け取り、女性に支払いを行うとコトミンに手渡す。彼女は申し訳なさそうに受け取るが、既に購入した以上は彼女が使わなければレナの方が困る。コトミンは硝子瓶の蓋を開き、一気に口に含むと中身を飲み干す。


「ぷはぁっ……生き返った。これなら1日は身体が保つ」
「身体が保つ……?」
「いや、こっちの話です。気にしないで下さい」


コトミンの発言に店主は首を傾げるが、レナは周囲に並べられている物品に視線を向け、この際に自分も何か購入するか考えて見渡していると、机の上に並べられた様々な配色の「六角形」の石を発見する。手に取って見ると絵具か何かで色を染めているわけではなく、すぐにレナは店主に尋ねる。


「あの……これは何ですか?」
「それは水属性の魔石だよ」
「……魔石?」
「まさか……魔石を知らないのかい?」
「えっと……はい」
「驚いたな……もしかして本当に異国から来たのかい?この国で魔石を知らない人間はいないはずだが……」


店長の説明によるとレナが手にしたのは「魔石」と呼ばれる魔道具であり、魔術師の職業の人間が最も多く購入する商品らしい。魔石は名前の通りに各属性の魔力を宿した特別な鉱石であり、この魔石は様々な用途に扱えるという。


「魔術師が魔法を扱う時に触媒を必要とするのは知っているだろう?この魔石を利用すれば媒介と同時に魔法の威力を強化もできるよ」
「触媒……?」
「……魔術師が魔法を扱う時、基本的には何かを媒介にしないと魔法の発現は出来ない。触媒無しに魔法を生成できるのは一流の魔術師だけ」


2人の説明によるとこの世界の魔術師は魔法を発現する際に様々な物を触媒にして生成を行えるらしく、例えば火属性の魔法を利用する時は「火種」を必要とする。最低でもマッチ1本分の火を事前に用意して置かないと火属性の魔法の発現は非常に難しいらしく、魔法を利用する時に都合よく火種を生み出せる物を持っているとは限らないため、大抵の魔術師はこの「魔石」を利用して魔法を生み出す(杖を所持する人間は杖の装飾品として取り付けている事が多い)。

魔石は各属性の魔法の力を宿した特殊な鉱石であり、先ほどの例だと火属性の魔法を扱う際には火属性の魔石を利用する事で魔法を発現させたり、更に魔法の威力の強化も行える。純度が高い魔石であれば効果も高く、使用できる回数も多い。また、一般人の間でも魔石の買い取りは普通に行われ、特別な道具を使用すれば魔術師以外の職業の人間でも普通に魔石を利用してガスや水道、あるいは電気の代わりに使用する事も出来る。

魔法の種類は「風属性」「火属性」「水属性」「雷属性」「土属性」「聖属性」「闇属性」の7つが存在し、各属性には特徴が存在し、例えば火属性は水属性とは相性が悪く、逆に風属性には強い。各属性には良属性と悪属性が必ず存在する。

これらの知識はこの世界の人間にとっては常識であり、知らない人間が居る事自体が珍しい。レナは自分がこの世界の知識を知らなすぎる事に危機感を抱く。今後の事を考え、余裕が出来ればこの世界の常識を学ぶ事に決めた。


「魔法の触媒か……あれ?でも付与魔法エンチャットの時は……」


レナは王城に居た時に自分が利用した付与魔法を思い返し、最初に魔法を試した時は魔石を使用せずに魔法を発現した事を思い出す。ホノカの話では魔石等の触媒が無くとも魔法の発現は出来るが、その場合は魔力消耗量が増加し、並大抵の魔術師は扱えないらしい。だが、その理論だとレナの場合は最初の段階から魔石の触媒をせずに魔法を発現した事になる。

最初に彼が魔法を使用した時で異様な疲労感に襲われた理由が判明し、彼は魔石の触媒無しで魔法を発現させた事から魔力の消耗が激しかった。だから魔術師の職業にも関わらずにレナは魔法の使用は控えなければならず、現在の彼のレベルは「1」の状態なのでもしもレベルを上昇させれば魔力も増加し、何度でも魔法を使用できるようになる可能性は残っていた。

だが、当面の問題は生活費であり、既にレナはデキンから渡された金銭もかなり使いこんでしまう。彼の話だと数日は過ごせる程の金額だったのだが、予想外の出費で王城を追い出されて1時間も経過しないうちに3分の1まで使い切ってしまう。今後の生活のためにも仕事を探す必要があり、何処かで働ける場所がないのかレナは店主に質問する。


「すいません。ここってバイトとか募集していませんか?」
「いや、今の所は僕一人で足りるね……仕事を探しているのかい?」
「恥ずかしながら追い出されまして(城から)」
「そうなのか……何か複雑な事情があるようだね。腕に自信があるなら冒険者ギルドに紹介できるけど、どう見ても戦えそうには見えないね(家出と思い込む)」
「冒険者?」


異世界物の小説では定番の職業だが、こちらの世界にも実在する職業であり、レナは店主から冒険者の事を詳しく問い質す。彼女の話によると冒険者というのは所謂「何でも屋」であり、様々な仕事を引き受けてくれる仕事だと説明してくれた。


「一般には魔物の討伐ばかりを行っている職業だと思われているけど、実際の所は色々な仕事を請け負っているよ。人探し、魔物の生態系の調査、盗賊の討伐、薬草の採取……とにかく色々な仕事を行っているね。それに階級ランクによって受けられる仕事の難易度も報酬も大きく違うからね」
「えっと、詳しいですね」
「こう見えても僕も冒険者をやっていた時期があるからね。それとこの国では冒険者になるには誰かの紹介がないと入れないよ。昔は一般人でも冒険者になれたんだけどね……国の方針で今では紹介がないと冒険者にはなれないんだよ」
「そうなんですか?」


店長の話に冒険者の職業に興味を抱いていたレナは落胆し、一般人では志望できないというのであれば仕方がない。他の仕事を探したい処ではあるが、時刻も徐々に夕方を迎えようとしており、そろそろ宿屋を決めなければいけなかった。
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