最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

文字の大きさ
15 / 207
バルトロス帝国編

回復魔法

しおりを挟む
――レナが目を覚ましたのは翌日の朝であり、気絶している間はずっとコトミンの胸の中に抱かれていたため、朝食の時間になっても食堂に降りてこない2人に疑問を抱いたエリナが部屋の中に入り込んできた時に抱き合った状態のまま眠っている2人を見て大騒ぎになったが、当の宿屋の主であるバル(受付にいた獣人族の女性の本名)から騒ぎを起こすなと3人とも説教を受けてしまう。

どうにかエリナの誤解を解けた頃には既に時刻は昼を迎えてしまい、レナはもう一度昨日の魔道具店に立ち寄る事にした。今回はコトミンは宿に残しており、あまりに外に出入りすると彼女を誘拐した盗賊に見つかってしまう可能性があるため、本当ならば警備兵に相談すべき事なのだがコトミンが魔物(自称)という理由もあり、普通に考えれば街中に魔物が居る事自体が問題なので警備兵には相談できなかった。

レナとしては彼女が元々の住処としていた場所まで送り届けたい所だが、そもそも彼女は盗賊に捕まっている間は木箱に詰められていたのでどのような経路で移動したのかは本人にも分からず、元の住処を探す方法を考えなければならない。だが、当面の間は宿代や食事代を確保するため路銀稼ぎが重要であり、幸いと言うべきか黒猫亭はこの街の中でも良心的な値段で宿泊も食事も可能な宿屋であり、2人分の宿代でも銀貨1枚と銅貨5枚程度で収まる。計算上では今のレナの路銀でも三日分は過ごせるが、その三日の間に仕事に就くか、あるいは自分自身で資金を稼ぐ方法を見つけなればならない。


「回復魔法を使える?」
「はい……と言っても付与魔法ですけど」
「そうか、君は付与魔術師だったのか」


魔道具店の店主であり、たった一人の従業員であるホノカの元にレナは訪れ、自分の考えた「仕事アイデア」を伝える。それは回復魔法を利用した金銭稼ぎであり、回復魔法を利用して怪我の治療を請負、傷の治療の代わりに金銭を受け取るという仕事が出来ないのか相談を行う。


「ふむ……つまりは治癒魔導士が金銭に困った時に行う「回復屋」の事だね。そもそも治癒魔術師の職業を身に着けている人間自体が希少だから、実際にそんな仕事を行っている人間は僕も見た事が無いが……本当に回復魔法を扱えるのかい?」
「はい。まだ少し効果は低いですけど……」


昨晩の時はレナはコトミンの身体に「聖属性エンチャット」を施した際、彼女自身は怪我の類は負ってはいなかったが、肉体を維持できる時間が延長された。下級回復薬一つでコトミンは現在の人間の姿を「1日」だけ保てる時間が延びるようだが、レナの「聖属性」を受けた時は半日程度の猶予が伸びたという。レベル2の状態で初めて発動した「聖属性」の付与魔法が下級回復薬の半分程度の効果だと判明し、もしも熟練度を向上させればより高い回復効果を引き出せる可能性が高いとレナは考えていた。


「それで僕に相談とはなんだい?」
「仕事を自分で開業する場合、やっぱり許可とか必要になるんですかね?」
「どうかな……開業といっても君の言っていた仕事内容は昔から治癒魔術師がよく利用している方法だからね……彼等は冒険者を相手に商売を行っていたようだから、冒険者ギルドから許可を得ることが出来れば問題ないんじゃないかな」
「冒険者ギルド……」


あくまでも一般人であるレナは冒険者にはなれないが、別に冒険者ではなくともホノカが語ってくれた「回復屋」という仕事は行える。どうにかギルド側から許可を取る事が出来れば商売は行えるようだが、それでも色々と不安はある。まずはどの程度稼げるのか分からない仕事であり、現時点のレナの魔力では一日に何人の怪我人を回復させる事が出来るのかも分からない。


「僕としてはあまりお勧めしないね。だけど、その顔を見ると相当にお金に困っているのかい?」
「ええ、まあっ……本当はここまで来る間に色々と仕事を探したんですけど、身分証がない事が原因で断られまして……」
「それは可哀想に」


実を言えば魔道具店に訪れる前に働ける場所がないのかレナは幾つかの店に回っていたのだが、結果としてはこの世界にも「身分証」という物が存在し、成人した人間は必ずこの身分証を所持している。この世界の人間の成人年齢は15才であり、レナは異世界人のため身分証など所持しておらず、そもそも身元を保証する人間が居なければ身分証の発行は出来ないらしい。

ちなみに冒険者ギルドに登録を行えば冒険者として活動するために「ギルドカード」と呼ばれる新しい身分証を発行されるのだが、現在は帝国の法律によって一般人は冒険者ギルドに加入できない。城を追い出す時に自分に身分証を発行しなかったデキンの無責任さにレナは大きな溜息を吐きだし、ホノカは考え事を行うように腕を組む。


「ふむ……異国人はこの国に訪れた時に身分証の仮発行が行われるはずだが、君は受け取っていないのかい?それともまさか密入国したんじゃ……」
「いやいやいやっ!!勝手に呼び出されたんですよこっちは!!」
「呼び出された?よく分からないが、まあ身分証が無いのは確かに不便だろう。そうなると大抵の仕事に就くことは出来ないだろうし……ちなみに君のレベルは幾つだい?」
「2です」
「……え?ごめん、もう一回言ってくれるかな?」
「レベル2です」
「本当なのかい?それはまた……箱入り息子だったんだね」


ホノカが驚愕した表情を浮かべ、彼女の話によるとレナの年齢でレベルが一桁台なのは非常に珍しく、普通は成人した人間ならば最低でもレベルが10を迎えているはずであり、ホノカの話によれば普通に生活を行うだけでもレベルは上昇するらしい。

レベルの上昇に必要な経験値とは別に日常生活でも得られるらしく、単純に身体を鍛える行為が効率的である。普段から身体を鍛えている人間と鍛えていない人間では同じ年齢でもレベルに差が生じるらしく、一般人の中でもレベルが高い人間も存在するという。レナのレベルは正直に言えば子供並であり、より正確な年齢であらわすと5歳児程度のレベルである。


「あの……レベルを早く上げる方法とかありますか?」
「一番効率のいい経験値稼ぎの方法はやはり魔物との戦闘だね。魔物に打ち勝つことが出来れば大きな経験値を貰えるよ。ちなみに魔術師の場合は魔法、剣士の場合は剣技、格闘家の場合は拳で魔物を打倒すればより大きな経験値を得られるよ」
「魔物……」


この世界ではゲームのように魔物を倒す事で「経験値」が得られるらしく、レナが今よりもレベルを効率よく上昇させるには魔物と戦う必要がある。レベルを上げればステータスも向上し、能力も当然だが上昇する。魔法の効果を上昇させるには熟練度だけを上げる事でも出来るが、今後の事を考えればレナ自身がレベルは上げて置いた方が良いだろう。
しおりを挟む
感想 263

あなたにおすすめの小説

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処理中です...