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バルトロス帝国編
ステータスと熟練度
「……駄目だ。眠れない」
「う~んっ……むにゃごろすぴきゅうっ」
「寝言……?」
レナはベッドに横になれば眠気に誘われるかと思ったが、妙に緊張して眠る事が出来なかった。美少女(魔物だが)と同じ部屋に過ごす事に緊張している訳ではなく、眠ろうとしてもこの世界に召喚されてここまで辿り着くまでの経緯を何度も思い返してしまう。唐突にこの世界に召喚され、しかも一般人だと判明すると王城を追い出され、何だかんだで現在は外見美少女の魔物と一晩共に過ごしている現状に頭の理解が未だに追いついていない。
「はあっ……ステータス」
眠れないのならば他の事に集中して気を紛らわそうと考えた時、無意識にレナは自分のステータス画面を確認する。新しいスキルでも芽生えていないのか期待しながら見直すと、画面に表示されている「付与魔法」の中の「火属性」に熟練度の項目が追加されていた。
『火属性――熟練度:2』
最初にステータスを確認した時は表示されていなかったはずだが、レナの予想通り「熟練度」とは性能の向上を現わす数値らしく、この項目の数値が高いほどに性能も強化される。レナは身体を起き上げて自分の掌を眺め、試しに召喚された時に一緒に持ってきた鞄を開く。中身は殆ど教科書の類しか入っていないが、元の世界の財布を見つけ出す。
「こっちじゃ使えないよな……これ」
元の世界の硬貨を取り出し、こちらの世界では当然使えない通貨であり、レナは硬貨を指先で摘みながら付与魔法を発動させた。
「火属性……おおっ」
レナが握りしめている硬貨に火が灯り、前回と比べて今回は特に大きな疲労感は襲い掛からない。王城で最初に発動した時は異様な疲労感が身体に襲い掛かったが、触れている対象が違うせいなのか特に身体に異変はなかった。最初に魔法を発動した時は羽ペンに火を灯らせた程度で倒れそうになったはずだが、今回は熟練度が上昇した効果なのか今回は疲労感は感じられなかった。
「あっ……自分の意思で消せるのか」
指先に摘んでいる硬貨に灯っていた火が消え去り、レナは魔法の発現の際は魔法の名前を告げる必要があるが、消失させるときは自分の意思で自由に消す事が出来る事に気付く。但し、もう一度硬貨に魔法を施す時はまた付与魔法を実行する必要があり、今の状態では魔法名を告げないと魔法は発動しない事にも気づく。
「何回も繰り返せば熟練度は上がるのかな……火属性」
レナは身体を横たわらせながら何度も握りしめている硬貨に対して付与魔法を施し、試している途中で気付いたが、付与させる物体が金属の場合は魔法の影響を受けないのか、何度も硬貨に火を灯しても金属が溶解するどころか熱を帯びる様子もない。
「あ、やった」
ステータスの画面を確認にしながら付与魔法を繰り返すと熟練度が「3」に上昇し、心なしか火力が強まったように感じられる。同時に他のステータスにも異変が生じ、何故かレベルの方が「2」に上昇していた。
「熟練度を上げると経験値が入るのかな……?」
レベルが上昇した理由の心当たりは熟練度の向上しか考えられず、そもそもこの世界にはゲームのように経験値という概念が存在するのかはレナには分からないが、少なくともゲームのように魔物と戦闘を繰り広げる事でしか経験値が得られないという訳ではない事が判明した。
「ちょっと疲れたな……だけどもう少し試すか」
何度も魔法を使用した影響なのか、レナの身体に流石に疲労感が蓄積し、それでも彼は限界まで何度も硬貨に付与魔法を施す。熟練度が上昇すれば体内に存在する「魔力」の消耗量も減少するのは間違いなく、しかも火力の方は確実に上昇していた。最初は硬貨の表面に火が灯る程度だったが、熟練度が3も上昇すると火の玉のように変化を果たす。
「他の魔法を試そうかな……いや、ここまで来たら……」
魔法を使用する度に徐々に眠気に誘われるが、何とか意識を保って何度も硬貨に「火属性」を行い、そして遂に熟練度が「4」にまで上昇した。
「よしっ……おっ?」
レナは熟練度が上昇したのを確認すると同時にスキルの項目に新たに「火耐性」と呼ばれるスキルが発現した事を知り、説明文によると「火耐性」とは文字通りに高熱に対する耐性を身に着ける事が出来るスキルらしい。これも「火属性」の付与魔法の熟練度を上昇させた影響なのか、魔法によっては熟練度を上昇させると新しいスキルが芽生える事もある事が発覚する。
「ふうっ……そう言えばデキンの話だと回復魔法も扱えるんだよな」
流石に疲れたのでレナが眠ろうとした時、彼はデキンに言われた言葉を思い返す。付与魔術師の職業の長所は「魔力容量が大きい」「治癒魔術師以外で回復魔法」が扱えるという点であり、ステータスの画面を確認して「聖属性」という文字を確認する。
現時点で覚えている魔法の中で回復魔法と思われるのは名前の響きから考えても「聖属性」だけであり、レナは試しに発動を行う。今回は手元の硬貨が「発光」するが、特にそれ以外に変化はない。この光を当てれば傷の治療を行えるのかもしれないが、今の状態では試す事が出来ない。
「明日あの人に聞いてみるか……いや、回復?」
今度こそ眠ろうとしたレナはある考えを思いつき、この世界の医療技術がどれほどの物かなのかは知らないが、魔道具店で販売していた回復薬の値段を考えても漫画やゲームのように手軽に回復できる手段があるとは思えない。
「もしかしたら……!!」
「……どうしたの?」
「あ、ごめん……起こしちゃった?」
「気にしないでいい……それでどうしたの?」
上のベッドからコトミンが顔を出し、眠たそうな表情を浮かべているがレナは先ほど彼女が回復薬で体力を回復させていた事を思い出し、この際に彼女に協力を頼む。
「コトミンは回復薬が食べ物なんだよね?」
「ちょっと違うけど……好物と言えば好物」
「なら回復魔法は?」
「回復魔法?レナは回復魔法が使えるの……?」
「使える……はずなんだけどね。コトミンに回復魔法を使えるようになれば回復薬を使わずに済むのかなと思って……」
「……分からない。でも、もしかしたら回復できるかも知れない」
「なら試してみてもいい?」
彼女の言葉にレナはベッドから起き上がり、大分魔力を消耗しているが、あと一回ぐらいは問題ないかと判断してベッドから降りて来たコトミンに掌を構える。道具ではなく、人間を相手に発動するのは初めてであり、失敗したとしても特に彼女の身体に異変が起きるとは考えにくく、レナは深く考えずに彼女の掌を握りしめる。
「あっ……」
「よし……いくよ。聖属性……!?」
レナは掌を通して彼女の身体に「付与魔法」を施した瞬間、これまでにない程の疲労感が襲い掛かり、彼の意識が途絶える。一方でコトミンは自分の体内に彼の魔力が送り込まれる感覚が一気に広がり、身体が熱くなる。
「うっ……」
「レノ……?」
気を失ったレナがコトミンの豊満な胸元に顔を埋め、彼女は慌てて額に掌を押し当てると魔力の消耗による枯渇現象を起こしている事に気付き、この状態に陥るとしばらくの間は起きる事が出来ない。コトミンは彼を担いで共に下のベッドに潜り込み、優しく彼の頭を撫で上げながら抱きしめる。
「ありがとう……」
コトミンは彼に対して感謝の気持ちしか抱けず、今日初めて出会ったばかりの自分にここまで優しく接してくれる人間など初めてだった。彼女は人間は嫌いだが、目の前の少年は特別な存在になっていた。魔物である自分の正体を知っても普通に接してくれたり、お腹が空いた自分の為にわざわざ高価な回復薬を購入してくれたり、そして気絶してまで自分に回復魔法を施そうとした彼にコトミンは抱きしめたまま朝まで共に過ごした――
「う~んっ……むにゃごろすぴきゅうっ」
「寝言……?」
レナはベッドに横になれば眠気に誘われるかと思ったが、妙に緊張して眠る事が出来なかった。美少女(魔物だが)と同じ部屋に過ごす事に緊張している訳ではなく、眠ろうとしてもこの世界に召喚されてここまで辿り着くまでの経緯を何度も思い返してしまう。唐突にこの世界に召喚され、しかも一般人だと判明すると王城を追い出され、何だかんだで現在は外見美少女の魔物と一晩共に過ごしている現状に頭の理解が未だに追いついていない。
「はあっ……ステータス」
眠れないのならば他の事に集中して気を紛らわそうと考えた時、無意識にレナは自分のステータス画面を確認する。新しいスキルでも芽生えていないのか期待しながら見直すと、画面に表示されている「付与魔法」の中の「火属性」に熟練度の項目が追加されていた。
『火属性――熟練度:2』
最初にステータスを確認した時は表示されていなかったはずだが、レナの予想通り「熟練度」とは性能の向上を現わす数値らしく、この項目の数値が高いほどに性能も強化される。レナは身体を起き上げて自分の掌を眺め、試しに召喚された時に一緒に持ってきた鞄を開く。中身は殆ど教科書の類しか入っていないが、元の世界の財布を見つけ出す。
「こっちじゃ使えないよな……これ」
元の世界の硬貨を取り出し、こちらの世界では当然使えない通貨であり、レナは硬貨を指先で摘みながら付与魔法を発動させた。
「火属性……おおっ」
レナが握りしめている硬貨に火が灯り、前回と比べて今回は特に大きな疲労感は襲い掛からない。王城で最初に発動した時は異様な疲労感が身体に襲い掛かったが、触れている対象が違うせいなのか特に身体に異変はなかった。最初に魔法を発動した時は羽ペンに火を灯らせた程度で倒れそうになったはずだが、今回は熟練度が上昇した効果なのか今回は疲労感は感じられなかった。
「あっ……自分の意思で消せるのか」
指先に摘んでいる硬貨に灯っていた火が消え去り、レナは魔法の発現の際は魔法の名前を告げる必要があるが、消失させるときは自分の意思で自由に消す事が出来る事に気付く。但し、もう一度硬貨に魔法を施す時はまた付与魔法を実行する必要があり、今の状態では魔法名を告げないと魔法は発動しない事にも気づく。
「何回も繰り返せば熟練度は上がるのかな……火属性」
レナは身体を横たわらせながら何度も握りしめている硬貨に対して付与魔法を施し、試している途中で気付いたが、付与させる物体が金属の場合は魔法の影響を受けないのか、何度も硬貨に火を灯しても金属が溶解するどころか熱を帯びる様子もない。
「あ、やった」
ステータスの画面を確認にしながら付与魔法を繰り返すと熟練度が「3」に上昇し、心なしか火力が強まったように感じられる。同時に他のステータスにも異変が生じ、何故かレベルの方が「2」に上昇していた。
「熟練度を上げると経験値が入るのかな……?」
レベルが上昇した理由の心当たりは熟練度の向上しか考えられず、そもそもこの世界にはゲームのように経験値という概念が存在するのかはレナには分からないが、少なくともゲームのように魔物と戦闘を繰り広げる事でしか経験値が得られないという訳ではない事が判明した。
「ちょっと疲れたな……だけどもう少し試すか」
何度も魔法を使用した影響なのか、レナの身体に流石に疲労感が蓄積し、それでも彼は限界まで何度も硬貨に付与魔法を施す。熟練度が上昇すれば体内に存在する「魔力」の消耗量も減少するのは間違いなく、しかも火力の方は確実に上昇していた。最初は硬貨の表面に火が灯る程度だったが、熟練度が3も上昇すると火の玉のように変化を果たす。
「他の魔法を試そうかな……いや、ここまで来たら……」
魔法を使用する度に徐々に眠気に誘われるが、何とか意識を保って何度も硬貨に「火属性」を行い、そして遂に熟練度が「4」にまで上昇した。
「よしっ……おっ?」
レナは熟練度が上昇したのを確認すると同時にスキルの項目に新たに「火耐性」と呼ばれるスキルが発現した事を知り、説明文によると「火耐性」とは文字通りに高熱に対する耐性を身に着ける事が出来るスキルらしい。これも「火属性」の付与魔法の熟練度を上昇させた影響なのか、魔法によっては熟練度を上昇させると新しいスキルが芽生える事もある事が発覚する。
「ふうっ……そう言えばデキンの話だと回復魔法も扱えるんだよな」
流石に疲れたのでレナが眠ろうとした時、彼はデキンに言われた言葉を思い返す。付与魔術師の職業の長所は「魔力容量が大きい」「治癒魔術師以外で回復魔法」が扱えるという点であり、ステータスの画面を確認して「聖属性」という文字を確認する。
現時点で覚えている魔法の中で回復魔法と思われるのは名前の響きから考えても「聖属性」だけであり、レナは試しに発動を行う。今回は手元の硬貨が「発光」するが、特にそれ以外に変化はない。この光を当てれば傷の治療を行えるのかもしれないが、今の状態では試す事が出来ない。
「明日あの人に聞いてみるか……いや、回復?」
今度こそ眠ろうとしたレナはある考えを思いつき、この世界の医療技術がどれほどの物かなのかは知らないが、魔道具店で販売していた回復薬の値段を考えても漫画やゲームのように手軽に回復できる手段があるとは思えない。
「もしかしたら……!!」
「……どうしたの?」
「あ、ごめん……起こしちゃった?」
「気にしないでいい……それでどうしたの?」
上のベッドからコトミンが顔を出し、眠たそうな表情を浮かべているがレナは先ほど彼女が回復薬で体力を回復させていた事を思い出し、この際に彼女に協力を頼む。
「コトミンは回復薬が食べ物なんだよね?」
「ちょっと違うけど……好物と言えば好物」
「なら回復魔法は?」
「回復魔法?レナは回復魔法が使えるの……?」
「使える……はずなんだけどね。コトミンに回復魔法を使えるようになれば回復薬を使わずに済むのかなと思って……」
「……分からない。でも、もしかしたら回復できるかも知れない」
「なら試してみてもいい?」
彼女の言葉にレナはベッドから起き上がり、大分魔力を消耗しているが、あと一回ぐらいは問題ないかと判断してベッドから降りて来たコトミンに掌を構える。道具ではなく、人間を相手に発動するのは初めてであり、失敗したとしても特に彼女の身体に異変が起きるとは考えにくく、レナは深く考えずに彼女の掌を握りしめる。
「あっ……」
「よし……いくよ。聖属性……!?」
レナは掌を通して彼女の身体に「付与魔法」を施した瞬間、これまでにない程の疲労感が襲い掛かり、彼の意識が途絶える。一方でコトミンは自分の体内に彼の魔力が送り込まれる感覚が一気に広がり、身体が熱くなる。
「うっ……」
「レノ……?」
気を失ったレナがコトミンの豊満な胸元に顔を埋め、彼女は慌てて額に掌を押し当てると魔力の消耗による枯渇現象を起こしている事に気付き、この状態に陥るとしばらくの間は起きる事が出来ない。コトミンは彼を担いで共に下のベッドに潜り込み、優しく彼の頭を撫で上げながら抱きしめる。
「ありがとう……」
コトミンは彼に対して感謝の気持ちしか抱けず、今日初めて出会ったばかりの自分にここまで優しく接してくれる人間など初めてだった。彼女は人間は嫌いだが、目の前の少年は特別な存在になっていた。魔物である自分の正体を知っても普通に接してくれたり、お腹が空いた自分の為にわざわざ高価な回復薬を購入してくれたり、そして気絶してまで自分に回復魔法を施そうとした彼にコトミンは抱きしめたまま朝まで共に過ごした――
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